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足立恒雄のページ

2008-02-21 走れ、ロボ!

走れ、ロボ!

1.ロボが来るまで

家で飼っているのはオスのシェパードです。 名前はロボ、『シートン動物記』の名編『狼王ロボ』にちなみました。

昔、Mowatの『Never Cry, Wolf』という本を読んで以来、 狼は知性・稟性の高い生き物であるという事実に加えて、特殊な状況でなければ人に危害を加えることはないにもかかわらず、 人間の身勝手な理屈で絶滅近くまで 追いやられているという歴史に対する同情心もあって、狼ファンでした。それで、 庭付きの家に移って落ち着いたところで、姿形が 狼に似ているシェパードを飼うことにしたのです。 四半世紀も昔、 平岩米吉という、多数のシェパード、それに本物の狼やハイエナなどを 飼った犬・狼狂の人の書いた本や伝記を読んだことも影響しています。 (現在『犬の行動と心理』という著書は再販されていますし、娘さんの書かれた 『狼と生きて』という伝記も残されています。)

私は実は元来犬が苦手でした。犬が苦手の人は必ず子供の頃の体験をおっしゃるのですが、 本当にそうなのかどうか、もっと先天的な原因 も感じなくはないのですけれども、私の場合も子供のころ犬に噛まれたことはあります。 しかし、色んな動物記を読んだおかげで、知識先行となり、狼ファンになっていたので、 狼に近い種類の犬を飼おうと思ったのです。家 が辺鄙な川べりに建っていて、不用心なため番犬がいると良いのではという口実 も妻を説得する理由の一つになりました。

遺伝的には、日本犬の方が狼に近く、「人に媚びない孤高の性格」を持つ、 というので、白羽の矢を立てたのが四国犬でした。 狼が出たと新聞に写真が載ったこともありますが、好きな人が見れば、 一目で四国犬であることがわかります。しかしそんな誤解を生むほど野性味のある犬ではあります。 色々調べて東京の亀戸に住んでいる四国犬の権威の老人を訪ねました。そのとき庭で見た 四国犬の凄さは忘れられません。飼い主以外は一切寄せ付けないで、どころか、 飼い主にも愛想を振りまかないそうで、 当然のことながら一見さんの我々に向かって モノ凄いうなり声を上げるのです。頑丈な鉄パイプを張り巡らした 犬舎の中にいたにもかかわらず、震え上がったものです。これはスゴイ! ぜひこの犬の子供、 それもオスの子がほしい、という気持になり、お願いして待っていたのですが、 そのおじいさんはとてもうるさい人で、最高級のメス犬しか娶わせる気がなく、しかも 希少品種ですから、近親交配のため、悪い因子が出ないようになど と考えるとなかなか相手が見つかりませんでした。しばらくして、 やっと見つかった嫁さんもどういうわけかなかなかシーズンがやってきませんでした。

痺れを切らせて、平岩米吉さんの本で、シェパードの悧巧さ、野生的 な風貌を知っていたものですから、シェパードを飼うことになったのです。 四国犬の迫力を一緒に体験していた妻は、一も二もなくシェパードへの変更に賛成しました。 実際には、シェパードは初めて飼うような、安直な飼い方のできる犬ではなく、 犬仲間からは初めて飼った犬だと言うと驚かれるそうです。ドッグランに連れて 行った最初の頃は、何でも初心者はそうですが、妻の風体は、とてもシェパードを 飼っているような格好ではなかった、と今頃になって聞かされているそうです。 もちろん現在は、どこからどうみても犬屋の格好です。

今となって考えると、四国犬を飼うのは到底無理だったと思いますので、 シーズンが来なくて痺れを切らしたのはラッキーだったということになります。 (ロボが来てまもなく嫁さんのシーズンが来たという連絡をいただいたので、 間一髪というところだった。) 結局、妻がインターネットを使って、割合近いところにある訓練所で売りに出ている 仔犬の中から、一頭を選び出しました。「器量が良い」というのが選んだ唯一のポイント だったようです。

その器量のことです。ロボが1、2歳の ころ、妻は「由美かおるに似ている」としきりに言っていました:

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2006年4月、稲荷山公園にて

いかがでしょうか? しかし、かなりの数の人に写真を見せて意見を求めたところでは、一人の方が「そう言えば 鼻筋あたりが、ムニャムニャ・・・」と同意(?)してくださっただけでした。 そもそも私はロボが仔犬のころ「ロボにはお袋の面影がある」と思っていました(実際、 眉根のあたりが、私が悪いことをしたときに見せるお袋の悲しそうな表情 にそっくりだったからです。) お袋と由美かおるとでは、同じ女性という性に属しているという以外には大した類似点が 見られませんから、似ているとか、似ていない、というのは個人の 思い込みが反映されるものだということがよくわかりますね。

2.子供のころ

ロボは2004年6月20日生まれです。最初は日本犬を飼う予定で、 「翠龍号」という名前を考えていました。折角予定していたのだからというので 「翠龍号ロボ」ということにしました(血統書にはケッタイなドイツ語モドキの 名前が書かれていましたが、そんなものは機械の製造番号程度の扱いで、 何かの事故のとき位しか必要ありません)。翠龍には大して意味はありません。 ゴルフ仲間に「龍翠」という立派な名前の人がいて、それをヒントにしただけのことです。 ロボはLOBOです。スペイン語で「雄狼」という意味だそうです。 間違えてROBOと書いて下さる方が多いですが、これではロボコップみたいです。

日本犬の飼い方の本では生後50日位で引き取るのが良いと書いてあったのもありますが、 4カ月にもなったのを見るとやたらに大きく見えて、 家内はこんなになってからでは怖そうでいやだというのも急いだ理由のひとつです。 しかし、大型犬の場合はもっと後でも良かったかもしれません。 というか、躾の大変さから言えば、1歳近くになって訓練が身についてから引き取る方が 楽だったと思います。たとえば、長い間肘や肩が痛む理由がわかりませんでしたが、 散歩のときに引っ張られるのが原因だったことが、成犬になって躾が 身につき私の身体も痛まなくなってわかったというようなことです。 それに、 4か月のシェパードなど、今見れば、まるで幼い仔イヌにすぎません。慣れるということが心理に どんなに大きな作用を及ぼすかの見本のようなものです。

ちなみに夕太という名前のシェパードの暴君振り、その女主人の決死的格闘の日々 (決して大げさではありません)を記したHPがありますが、 この夕太君は同じ訓練所で生まれた犬だったことが後にわかりました。 ロボととてもよく似た風貌をしています。あのページを読んだら、 シェパードなどうっかり飼うものではないということがよくわかります。 われわれも飼い始めてからそのページを読み、エライことになるかなと心配になり、 躾の訓練を急ぐ理由になりました。訓練士にでもなるほどの覚悟でなければ、 (女性が飼うには)シェパードは無理な犬種かもしれません。 夕太君は飼い主が結婚されて嫁ぎ先に付いていったという噂を聞きましたが、 その後どうなったか、旦那さんをボスと認めて従順にしているのか、 それとも少しも変わらなかったのか、興味のあるところですが、育児日記は1歳過ぎで終わっています。

さて、初めてロボを見たのは、生後40日程度の7月30日でした。同胎の仔犬は合わせて5頭で、 ロボはブラックンタンですが(普通、ブラックタンと言っていますが、原語のblack-and-tanには ブラックンタンの方が近いと思うので私はそう言っています。 それにブラックタンでは「黒茶色」じゃないですか)、他はいずれもメスのウルフでした。 ウルフは狼色、ブラックンタンは黒と小麦色のブチです。 入れてあったボール箱から4頭のおねえちゃんたちが ロボの頭を乗り越えて出てきて、ロボは最後にヨロヨロよろばうように出てきました。 なお、ロボより大きかったのでおねえちゃんと呼びました:写真(2004年7月)。

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2004年7月
あまりに貧弱なので、他の日に生まれたものも見せてもらったのですが、妻と最初に目が合ったときに決まっていたのでしょう、 結局はこのひ弱そうな雄犬を飼うことになりました。最初から、 「飼うならオス」と私が決めていたということもあります。 (日本犬の本に、飼うならオス、 子供を取るのが目的ならメスと書かれていたのが影響したのだろうと思います。)

引き取ったのは8月14日でした:写真(2004年8月)。

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2004年8月
引き取ってからが大変でした。 毎日毎日下痢ばかりしていて、思うように食事の量が増やせないのです。 食べるのはガツガツ食べるのですが、 軟便は食事の量が多すぎる証拠だと育児本に書かれているので、それを守る限り、 いつまでもごく少量のドッグフードをやり続けるしかありませんでした。 人に見せて自慢できるほどの硬さのウンチをするようになったのは 1歳近くになってからですが、今でもちょっと神経質になったりすると下痢を起こします。 シェパードはおなかが弱いと言いますが、ロボは典型的です。私も胃腸の弱いほうですので、 ずっとロボとビオフェルミンをモヤイで使っています。 私が好きなもう一つの動物、マウンテンゴリラも神経質で、 驚かすと下痢をしながら逃げるそうですから、シェパード、 ゴリラ、私はおなかが弱いという共通点を備えていることになります。 オオカミはどうなのでしょうか、私は寡聞にして知りません。

体重も一向に増えず、獣医からは「大きくしない主義かもしれませんが、そういうのは無意味です。 もっと食べさせなくてはなりません」と言われるのですが、現に下痢ばかりしていて、 どうしょうもありませんでした。単に先天的におなかが弱いというばかりではなく、 屋外で飼うようにしたいということがあって早くから庭に出すようにしたもので、 色んな物を口にし、そのため寄生虫や種々の雑菌に巣食われたのも原因だったようです。 写真(2004年9月)は生後3か月ですが、わずか5キロでした。

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2004年9月

生後3ヶ月が来ても体重が7キロに満たないというので、薬も数種類飲ませ、 食事の量も増やすことにしました。またドッグフードだけから手作り食を加えるようにしました。 その効果が出たのでしょうか、毎日200グラムずつ、多いころは 一日300グラムずつ増え続けて、生後7ヶ月半の2005年2月初めには30キロに達しました。 毎日毎日化け物のように大きくなるので気持ち悪いくらいに思ったものです。 写真(2004年11月)は6ヶ月近くになった2004年11月ころで、年賀状に使ったものです。

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2004年11月

写真(2005年4月)はもうすぐ1歳というときのものです。 写真(2005年8月)は私が庭でワインを飲んでいるのにお相伴しているところです。

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2005年4月
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2005年8月

2006年の年賀状にもロボの写真を使いました:

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2005年11月

体重は一時は37キロを超えていましたが、アジリティをやるには体重 が軽いほうが体に良く、動きも良いというのでダイエットさせられていて現在は35キロ位です。 言わば、ウェルター級のボクサーのように引き締まった体つきをしています。 体高は67センチ、胸囲が90センチ、訓練系としては極大の方です。 ショー系だと40キロから50キロくらいになるのだそうです。 しかし性格的には、ロボは典型的な訓練系のシェパードです。 写真(2007年6月)はちょうど3歳になった頃のものです。

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2007年6月

3.現在

夕太君のようになってはいけないというので可能な限り早く躾教室に通わせることにしました。 生後4ヶ月から訓練を受け始めました。現在も週1回オビディエンス(服従)と アジリティ(バーを飛んだりトンネルをくぐったり、人間で言うと障害レースに当たります) の訓練に通っています。アジはロボの得意方面ということで別の先生にも付いて 習っています。二つの塾に通っている 子供のようです。私の考えでは、飼い主の制止を聞き、脚側(傍について歩くこと)と 呼び戻しがきちんとできれば十分と思うのですが、シェパードは作業犬ですから、 何も仕事をさせないと、すごく有能な人が何の仕事もなく家でブラブラしていたら 精神的に退行するのと同じだということで、アジリティやオビディエンスの競技訓練を始めたのです。 妻は、成績という言葉に敏感な方です。子供のころ運動会でいつもビリだった悔しさを犬で 晴らしたいのではないかとも思われます。 (これも親が子供を塾に通わせる気持ちに似ているのではないでしょうか。)

2008年1月現在までの成績を掲げます(いずれもOPDESという団体における競技です):

アジリティ競技の主な成績
2006/11/23アジリティ1度 2席
2007/10/14アジリティ1度 3席
2007/11/25アジリティ2度 1席
2008/01/27アジリティ2度 3席
2008/02/17アジリティ3度 3席

アジリティは3度が最高ランクです。 アジリティの競技と表彰式の模様が写真(2007年11月ーその1)と写真(2007年11月ーその2)です。 この得意満面の顔!(もちろんロボではなく妻のことです。)

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2007年11月−その1
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2007年11月−その2

オビディエンス競技の主な成績
2005/10/30チームテスト レベル1合格
2006/04/30チームテスト レベル2合格
2007/03/25チームテスト レベル2合格(永久資格取得)
2007/10/20オビディエンス2度(アマの部)5席
2007/12/15オビディエンス3度(プロ・アマ合同)2席

オビディエンス競技で30ポイント取るとオビディエンスチャンピオンの称号が 得られるのですが、現在12ポイントを貯めています。上の2回のような成績を 上げ続ければ1年余りの後にはチャンピオンの称号を獲得できるでしょうから、 そうしたらオビディエンス競技からは引退することにしています。

訓練を受けにいく他にはドッグラン(犬の運動場)にも週に三日ほど通っています。 ドッグランは犬が自由に走り回れる会員制(有料)の広場です。ロボを連れて旅行してわかったのですが、 関西地方にはまだそんな施設は少ないようです。ドッグランは社交性を身につけるには良いのですが、 なかなか犬任せにはしておけず、また犬も人に飼われるようになって、性格も変わって来ている面も あるのでしょう、本当に犬同士のマナーをどの犬も身につけているかというと 疑問のように思えます。一般論ですが、ペットが増えた現在、 人と犬とがどう共生するかは重要な課題だと思われます。 ドイツなどのペット先進国のように、 日本でもペットが人間の社会生活に自然な形で溶け込める時代が来るには、 犬を(たとえばレストラン一つとっても)受け入れる仕組みを導入することも必要ですが、 小さい犬種だからといってろくに躾もせず、好き放題にさせている飼い主が多く、 まだまだ犬と一緒に過ごす権利を主張するのはむずかしい状況だと思います。

ドッグランでは、 ロボは小さい頃は格闘ごっこもやりましたが、大きくなるにつれてボールを投げてもらって 取ってくることの繰り返しで1時間ほど過ごして帰ってきます。 往復に車で1時間余りかかりますし、アジリティの勉強には往復に2時間かかります。すべて妻が 面倒をみているのですから、ショーファー(お抱え運転手)といった観があります。

1歳過ぎてから結局家の中で飼うようになったのは、 シェパードが寂しがり屋で甘えん坊で、人と一緒にいたがる傾向の 強い犬種だということがわかってきたからです。そう言えば、 1歳2ヶ月の頃に、当時は庭の小屋で寝ていたのですが、 息子や娘の家族が集まったとき家に入れてやらなかったことがあります。 次の日の朝、 妙に黒い、尖った顔をしていて、半日、人間で言えば、 拗ねて口を利きませんでした。 何か変だとは思ったのですが、そのうち 他所者が中に入れてもらっているのに自分は外に置かれて、 顔をつぶされたというように感じていたらしいことに気付きました。そんなことを考える とは思ってもいなかったので、今日はどうしたのだろうと、 しばらく不思議がっていたのです。習っている訓練士に話したら、良くある事だと、笑っていました。

私が外出先から帰ってくるときはロボを車に乗せて駅まで迎えに来てもらう習慣になっています。 これが仕事だと言い聞かせてあるので、本人はすっかりその気です。 気が急いていて、うっかり「御苦労!」という言葉を掛けるのを忘れでもしようものなら ふくれっ面をして横を向いたままになります。何を怒っているのかなあと思い返してみると ねぎらいの言葉をかけなかったということに気づくことになります。 ロボは私が帰るまではどんなに遅くとも起きて待っております。 ロボを乗せずに 迎えに来たりしようものなら、どんなにプライドを傷つけるかがわかっていますので、 妻はそういう(人を試すような)ことを、かりそめにも、したりはしません。

家の中で飼うほうが格段に言葉を覚えて聞きわけも良くなると言いますが、 実際その通りだと思います。本当にすべての言葉を理解しているのではなく、 雰囲気や人のしぐさなどから判断しているのでしょうが、 その状況把握の能力には驚嘆するものがあります。たとえば、外出の準備を始めると、 自分も連れて行ってもらえるのかどうかをかなり早い時期から 察しているようです。だから私を送りに行くだけのときは立ち上がりもしません。

オビディエンス競技は初歩のうちは(ツケ、スワレ、フセ、マテ、コイなどを)身振り・手振りを交えて 従わせますが、高度になると仕草は一切しません(すると減点になります)。したがって 少なくともいくつかの単語を聞き分けられることは明らかです。たとえば、義妹が近くに住んでいて、 ロボがとてもなついているのですが、「オバチャン」という言葉を聞くと、パッ と目を輝かせて、通路のほうを見ます。気の毒だから、本当に来ることが分かっている時以外は、 不用意には「オバチャン」という言葉は発せられません。

なお、ロボは不思議な位聞き分けの良い犬です。家の中にいた極々子供のころにも カーテンをかじったことが一度、引き出しのつまみをかじったことが一度あるだけで、 テーブルの上のものやごみ屑篭を漁ったりしたことは記憶にありません。 どうしてわかるのか不思議なくらいです。 どんな躾の行き届いた犬でも、食べ物の誘惑には弱いと言いますが、 何度か小さい頃取って食べたことがあっただけで、成犬になってからは テーブルの上に何があろうと勝手に取って食べたりはしません。多くの人が、 ホントかしら、と思うような話ですが、実際その通りです。 ただし、庭は悲惨なことになりました。庭で走り回ったために 芝生は散々に痛めつけられて、折角庭が持てたのがうれしくて丹精込めて 作り上げたのですが、見る影もなくなりました。

しかし、2歳になったら庭を走り回るということはなくなりましたので、 昨年(2007年)の春、芝生を新たに張りました。

4.逸話

  • 妻の母と妹が近くに住んでいまして、女性だからか、 (オスである)ロボをとても大切にします。現在のロボは義母、義妹、 それに妻の三人の女性にかしずかれて優雅に、そして贅沢に、暮らす、 野生のかけらもない「けしからぬ」犬です。義妹が毎週土日にやってきて、 庭でロボのブラッシングをするのですが、それが半日掛りでして、 その間ロボは傲然と横たわっていて、どこかからか持ち出してくる 大きな石をカチカチ噛んでおります。その様子は、映画でしか見たことがないのですけれども、 メカケに腰をもませて、キセルをくゆらせている大店のダンナを連想させます。

  • 義母は私の家のことを「ロボのハウス」と呼ぶんですよ。 「ロボのハウスは立派だね」とか、なんとか(そりゃまあ、犬小屋にしては立派ですよ!)。 それに今度買い換えた私の車をディーラーが持って来たときのことですが、 「 ロボ、いい車買ってもらったね」などと言うのです。 ロボを連れて遠出するときのことも考えてワゴンを買ったのですから、 そりゃまあ「ロボの車」かもしれませんが、そういうのは一か月に一度も ない位のことです。 二人は自分たちの家で我々のことを話すときにも、 「ロボのところでは・・・」と言っているようです。

  • 義妹が庭でさんざん遊んでやって部屋に入ると、 私が叱りそうないたずら(たとえば、芝生をひっかくなど)をして呼び戻します。 義妹は「オバチャン、僕がトーチャンに叱られても良いの?と言っている」 と言って、また庭へ出て行きます。私にはまったく聞こえませんが、二人で勝手な 内緒話をしているようです。

    私が何かでロボをひどく叱ると、 義妹は「オバチャンがそのうち宝くじを当ててお前を引き取ってやるからね。 お前はホントはオバチャンの子なんだよ」などと小声でぶつくさ言っています 。まあ、私の推量ですが、そんなことを胸のうちで呟いているに違いありません。

    ただ、家の犬(ロボ)は、訓練系(シェパードには訓練系とショー系があります) で、恐るべき知能の持ち主です。 (人に話すと、人間のようですね、と感心されますが、 私はいつも心の中で「あなたよりは悧巧ですよ」とつぶやいています。) オビディエンスとアジリティの訓練を受け続けていますので、 しつけは行き届いているのですが、悧巧な分だけややシャイなところがあります。 私は、少し馬鹿でも良いから、四国犬のようにとまでは言いませんが、 毅然、せめて傲然としていてほしいので、 訓練系のシェパードには一般的に言ってやや不満なところがあります。

    とは言うものの、一方では、元来は性能の高いシェパードでありながら、 40キロ以上もあって、走るのもあまり得意ではなく、作業性能も あまり高くないというのでは、いくら見場が良くても、 そういう(形や色といった外見ばかりを重視する)方向を目指すのは、 私には邪道のようにも思えます。

  • もう1頭飼う場合はショー系的な、見てくれが良くて、少々 トロイシェパードを飼おうかなどと、時折(もちろん冗談なのですが) 口にするものだから、義妹が真に受けて「宝くじを当てて云々」と言うのです。 実際には、ロボが死んでからでもシェパードをもう一度飼うのは、 私の体力(要するに年齢)から考えてもう無理でしょうから、 クロラブ位がちょうど良いだろうと話し合っています。 犬のおかげで、それまでは考えてもいなかったような、苦労も多いですが、 とても心豊な生活を送ることができていますので、 ついついロボが死んだら・・・という話が出てしまうのです。

    ちなみにロボは、「翠龍号ロボ」というのが私が付けた「正式の名前」です。 (血統上は、ドイツ語あるいはドイツ語モドキの名前が登録されています けれども、あまり真面目に見たことはありません。) 次に買う(空想上の)シェパードの名前も決まっていまして「翔龍号レックス」 というのです。レックス(Rex)は、ラテン語で、王様という意味です。 ちなみに、ロボ(Lobo)はスペイン語で雄狼のことだそうです。

    実際には、もう1頭シェパードを飼うのは、 手がかかりすぎて、とても無理だと思いますけれども、 あまりに義妹や妻がロボをかわいがっているので、イヤミ、 ないしはヤッカミで言っているに過ぎません。(メカケに腰を揉ませたり、 ショーファーを雇うというような生活は、私にできる可能性はありませんからね。)

  • シェパードは生来仕事犬ですから、何の仕事もさせないと知的に退廃してしまいますので、 何か励みになることをやらせなければならないのです。 仕事(遊びですが)をさせ、できたとき褒めるとすごく喜びますが、失敗するととても落ち込みます。 競技に出て大した成績にならなかったときなど、 失敗したという事実は自分でわかるらしく、しょげています。 帰りの車の中で、(付き添ってきている)義妹が後ろの席で 「ロボ、お前はできるのだけどね、お母さんがへたくそだからだめだった だけなのだよ」などと、ぶつぶつ(ナデナデしながら)慰めています。

    妻がハンドラーを勤めているのですが、歳も歳だし、鈍いこともあって、 プロのハンドラーたちにはなかなかかなうものではありません。 それにロボはテンションの高い犬でして、出場前にとても興奮します。 コースに入ってからはそうでもないのですが、速く走ることばかりに気が行って、 ときおりバーを落とします。テンションが低い犬は競技などやりたがらないし、 高すぎると、失敗も多くなりますから、むずかしいものです。 私も、高速に乗るような遠出のときは、運転手として駆り出され、 大変迷惑します。そういう日は、ハイヤーの運転手が雇い主のゴルフが 終わるのを待つように、車の中で待ちながら半日読書です。

    せっかく能力を生かすのなら、人の役に立つことが良いですから、 災害救助犬になることも考えてはみました。しかし聞くところによると、 何日も外泊しなければならず、 犬だけではなくハンドラーも相当大変な訓練を受けなければ ならないそうで、金銭的にはともかく、 そんなことになったら私の面倒をみてもらう時間が減ることは明らかですから、 ちょっと賛同しかねております。

  • 食事ですが、ドッグフードは月に12kg、生肉(馬、羊、鶏など) が月に6kg、そのほかに見かけの量を増やすためにオジヤを作ってやって、 食べさせています。その他、義母妹や家内は、自分に手なづけるために、 銘々がコッソリおやつ(豚の耳など)をポケットやハンドバッグに忍ばせていて、 お互いの目を盗んでやっているようです。 ロボは、おやつが欲しくて、義妹のハンドバッグに向かって オスワリするので(それは、それは、堂々とした軍隊式の「気を付け!」です)、 義妹は「そんなことされるとプライドが傷付けられるんだよね」と憤慨しています。

    インターネットで肉を購入するのですが、 宅配された肉は冷凍庫に収まりきらず、義母妹の家に 一部預かってもらわねばなりません。若い女性に話したら 「足立さんの家のワンちゃんに生まれ変わりたーい!」と叫んでいました。

  • 初めて飼った犬だと言いましたが、実際には30年近く前に、 厚木に住んでいるころ、柴犬を飼っていたことを思い出しました。

    野原でボールを投げてやるとボールを咥えてさっさと家に 逃げ帰ってしまうようなありさまで、おまけに大変臆病な、本当に取り柄のない 駄犬でしたので、 早死にしたせいもあって、飼っていたということも あまり思い出したことがありませんでした。私の犬の知識はそのころ、 平岩米吉さんの本などで仕入れたものです。

    犬のことは大して覚えておりませんが、犬のために私が大立ち回りしたことは覚えています。 ある日、近所から逃げ出した大きな秋田犬が庭に侵入してきまして、 うちの柴犬(まだ仔犬でした)に噛み付いたのです。 他所に侵入して 犬を噛むなど余程程度の低い犬ですが、 それらしい馬鹿で凶暴そうな顔をしていました。 (私は秋田犬も好きですが、血統書付きならよいというものではありません。)

    私は遠来の友人と縁先で碁を打っていたのですが、 犬の悲鳴で気が付いて、何とその秋田犬に素手で立ち向かって行ったのです。 後から考えれば、無謀この上もなく、元来犬好きとは言えない私がどうして そんなことができたのか、不思議というしかありませんが、惻隠の情、 つまり、おぼれる子供を見たら自分がカナヅチなのに飛び込む、 そういうものだそうで、それに近い現象だと思います。 傍にあった箒で叩いたら、あまりの剣幕に驚いたのか、 秋田犬は逃げ出してしまい、他にはだれも怪我がなくすみました。

    うちの柴犬はその後大変臆病に育ってしまい、 それに若死にしてしまったものですから、私も忘れるともなく 忘れたほど印象の薄い犬になったのですが、 噛まれた経験がそのような犬にしてしまったのかもしれません。 そのとき 秋田に噛まれていたら、きっと犬を飼うことなど二度となかったと思います。

  • 犬はいびきをかきますし、夢も見ます。足をしきりに動かすのは 走っている夢を見ているのです。自由に草原を駆け回っている夢を 見ているのだと思うと気の毒になります。もっとも、 うちのロボは家内が時間をかけてドッグラン(犬の運動場)に連れて行き、 1、2時間ばかりもボ−ル投げをして走らせていますから、気の毒なはずもないですが、 一般論です。これに行くときは、確かに「ロボの車」に乗っていくのでして、 家内はショーファーです。人によっては (犬によっては、というべきですが)専用のベンツで来るのもいるそうです。

    うちの犬はおとなしいので犬好きからはとても可愛がられますが、 見てくれが見てくれですから、遠くから逃げ出す人も少なくありません。

    ロボは女性が好きで、男性は苦手です(ソックリだと言われています)。 とくにおなかの出たような大きな男性を怖がります。 女性でも若くないと、傍に寄ってこられてもシランプリします。 若い女性だと、とりわけ女子高生たちが大好きで、 自分から傍へ寄って行って、(犬を良いことに、) しつこくクンクン嗅いで回ります。 「ボス、ちょっとアッシが調べてきましょうか」 というような感じでしょうか。調べてもらっても何の役にも立ちませんがね。

  • 犬はもちろんオナラもします。 それについては面白い話があります。あるとき妻が運転していてロボのおなかの 調子が悪かったのか臭いオナラをしました。私はクサイ、クサイと言いながら 窓を開けました。家に着いてバックドアを開けリードを外してやったのですが、 いつもなら飛び出てくるロボが隅っこに縮こまっていて出てこないのです。 それでやっとオナラをしてクサイ思いをさせたのを恐縮しているのだということに気が付きました。 犬が、特に日本犬はそうだそうですが、お漏らしをすると、 恥じ入って大変だということを聞いたことがありますが、 オナラして決まり悪くて小さくなっているということもあるのだということを知りました。

    犬には、反省心がないとか、その場その場の反応しかないと 言う人がいますが、それは人間に犬が何を考えているかを見抜く 力がないだけのことだと思います。 過去のことを思い出して反芻しているように見えないことは確かですが、 再会までに何にも考えていなかったとすれば、そう簡単に相手を思い出したりは できないのではないでしょうか。

    犬が恐縮する話をもう少し続けます。先日、ロボを連れて散歩に行ったオバチャン(=義妹)がロボに引っ張られて転ぶという事件がありました。後日、松葉杖をついたオバチャンを見た時の恐縮ぶりは語り草になりそうです。一度失敗すると二度としないということは、ずっと以前バアチャン(=義母)に飛びついて転ばしたことがあり、ひどく叱られて以来、決してバアチャンに飛びつくようなことはしないということからもわかります。(現在ではもう成犬ですから、許しもないのに人に飛びついたりはしなくなっています。)また引っ張りっこをするのでも、相手の力に応じて引っ張ります。