将棋ファンとして

ニコニコ動画にアップされていた羽生ー中川戦の感想を書いた梅田氏のブログに対して反応した窪田六段に対し、若干の批判が集まっている。
正直こういう話題を取り上げること自体があんまり良くないのかもしれないが、ファンとしては言いたくなるところである。
様々な娯楽が蔓延している昨今、将棋を楽しむものは年々少なくなっているとの感覚がある。将棋倶楽部24の影響もあって、地方の道場もその数を減らしつつある。私が昔通っていた道場もつぶれてしまった。
将棋ファンというものは空中から出てくるわけではない。これは道理である。周りに将棋を知っている人や、将棋を理解してくれている人がいてこそ、将棋ファン、ひいては棋士も育つと考える。
将棋を皆に知ってもらうという意味で、ああいった動画がニコニコ動画で多くの人に見てもらうのは非常に有益と考える。そもそもあんなにコメントがつき、再生数が伸びているのは私にとってもすごく驚きだった。コメントを見る限りでは、大半の人は一手一手の形勢を見て楽しむという見方ではなく、棋士の反応やしぐさを楽しむというような見方であったが。そういった意味で、将棋を知る可能性を狭める意見よりも将棋の普及に努めてほしいと思わなくもない。
正直な所、黙認が最善としか思えなかったが、窪田氏はよほど怒りを覚えたのであろうか。
やり取り自体は非常に面白く、私にはネタのようにすら見えてしまったが。果し合いのような古風なやり取りであった。
ブログに第三者ではなく当事者が書き込むということは、将棋界を代表しているということでもあり、思わぬところから飛び火してニュースにすらなりかねない内容である。もともとにおいて、梅田氏が論評することそれ自体にいてはなんらそれは拘束される性質のものではなく、それに対し謹んでいただきたいとコメントすることは、表現の自由の侵害にもなりかねないと思う。別に匿名なら、そういった意見もあるのだなでそれで終わりだろう。だが窪田氏は連盟関係者としての立場を明示してそういった要請をしているため、あらぬ誤解をされかねない。それがネットの怖いところでもある。
伝統ある文化的なものが安泰であった時代はすでになくなりつつある。相撲も然り。ファンあってこそ、ファンがいてこその文化であると私は思う。
あと、ニコニコ動画を見たせいで日曜の将棋番組視聴率が下がるなんてことはまず起こりえないことは、少し考えれば自明である。むしろあがりそうである。
それはそれとして、窪田氏が梅田さんのブログをはじめ、トラックバックにも飛んでいって律儀にコメントしているのは驚いた。ニュースサイトにも取りあげられているので、5000人規模の人がこれらのやり取りを見ているのか。「知らないうちに話題が知れ渡っている」Webの伝播力はさすがだな。いくらすばらしい意見を持っていても対面だと一人、公演を開くような著名人になっても2〜300人ずつがせいぜいだろうから。