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2009-09-27

最近の地球温暖化記事から

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政治の世界では再び温暖化政策が重要なトピックになり、ライフスタイルというか、日常の問題としてマスコミに取り上げられる話題としても相変わらず、と言うよりますます「エコ」が耳につくようになってきている。とくにテレビコマーシャルでそれが言える。しかし、実感的に感じられる現象としての温暖化そのものについては、日常の話題として取り上げられることが少なくなってきているのではないだろうか。日本でも今年の夏は夏は暑い方ではなかったように思われるし、世界各地での異常な熱波のニュースも伝えられる頻度が少なくなってきている。ただ「異常気象」だけは相変わらず話題になることが多いが。

科学欄で取り上げられる温暖化関連のニュースにしても、やや傾向が変わってきている様子がみえる。日本のニュースサイトでも、アサヒコムの科学欄で太陽研究者が今後の寒冷化を心配していることが紹介されたりもしている。

このブログを始めたころ、それはちょうどIPCC報告が出される少し前頃で、BBCニュース科学欄では雪崩のように温暖化関連のニュースが溢れていた。その後も温暖化関連のニュースはどのニュースサイトからも絶えることがないが、最近では内容に変化が現れてきていることは確かである。ちょっと変わった視点、問題から温暖化問題に言及したり、あるいは論旨に無理が見られるようなというか、隙がみられるような内容の記事も多いように見受けられる。

Forest fires - a continuing Greek tragedy?

この記事は南部ヨーロッパの森林火災の問題を扱った記事で、森林火災対策、もっと具体的に鎮火方法の問題をあつかった記事で、火をもって火を制する方法の適用の問題などが紹介され、興味深い。しかし、その前提として当然、持続的な温暖化の問題が取り上げられ、冒頭付近で「with average temperatures in southern Europe increasing, and computer models of future climate suggest that what we have seen so far is just the tip of a (melting) iceberg, were these fires just a foretaste of conflagrations that will come regularly as vegetation turns tinderbox dry?」と言った調子で、温暖化の先行きに対する不安が強調されている。

その後で具体的に南部ヨーロッパの森林火災の現状がデータで説明されているわけだが、「火災の件数では1990年代から増え続け、直近の3年間にごくわずかな減少が見られる」一方、焼失面積については「毎年大きく変化しているので何らかのトレンドを見つけるのは難しい」という、当局科学者の説明とともに、次の、焼失面積のグラフが掲載されている。

f:id:quarta:20090927143415g:image:right

このグラフを見て直ぐに感じたことは、全体的な印象としてこの日本で私が感じとっていた夏の暑さの変遷のイメージに非常に近いという事だった。南ヨーロッパの森林火災焼失面積のグラフで、直接気温に関係するものではないにも関わらず、このグラフは北半球温帯地方全体の夏の温度を表現しているのではないか、というような印象を受けた。統計学的なトレンドの意味、どのようにしてそれを見いだすのかと言う事はよく知らないが、素人の常識的な判断では、どう見ても1980年代後半から1990年代前半にくらべ、1990年代後半から2008年に至るまでは平均的に毎年の焼失面積が減少しているように見える。たとえば1985年から1994年までの10年間を合計すると約5.6になるのに対し、1995年から2004年までの10年間では約3.8である。これでトレンドが見られないというのはどう見てもおかしい。

しかし、気象庁ホームページで見られる世界的な年平均気温の推移を見ると、今も一貫して上昇が続いているような表現ではある。

世界の年平均気温の平年差の経年変化(1891〜2008年)

このデータでは、上記のような個人的に感じられた日本の夏の厚さの印象、記憶とは必ずしも一致していないが、ただ、このサイトの世界、北半球南半球の三つのグラフを詳しく見ると、世界平均でこれまでの最高値は1998年であり、少なくとも2000年以降は上昇が停滞気味で、2003年あたりから低下傾向にあると見て良い様な気がする。来年か再来年あたりになれば、この傾向はもっとはっきりしてくるのではないだろうか。

BBCニュースの記事に話を戻すと、記事で書かれている表現と多少矛盾するようにもみえるこのようなグラフをそのまま掲載しているところが、BBCらしいように思われて興味深い。


同じように、興味深いグラフが貼付されているBBC科学ニュースで、次の記事がある。

Arctic ’warmest in 2,000 years’

これはScience誌に発表された、study leader Darrell Kaufman from Northern Arizona University in Flagstaff, US. による研究で、北極地方の数カ所で採取したアイスコアや湖底堆積物などから最近2000年間をカバーする期間の温度を調査した結果報告であり、BBCの記事にはそのグラフも掲載されている。記事によると、このグラフは地球軌道の変化に起因する長期的なゆっくりした寒冷化と、100年前からそれに逆らう形で始まった温室効果ガスによる急激な温度上昇をそのまま示しているとされている。

f:id:quarta:20090928000500g:image:right

グラフを見ると確かに1900年あたりまでの緩やかな、平均的な寒冷化と、それ以降の急上昇が確かに見られる。ただこの記事の次のような説明はグラフの読み方としては余りにも乱暴で、恣意的な解釈である。

「On average, the region cooled at a rate of 0.2C per millennium until about 1900. Since then, it has warmed by about 1.2C.」これは複雑に上下する2000年間のグラフの最初の1900年間の差と最後の100年間とをそのまま単純に比較するというもので、論理の飛躍した強引な比較の仕方に思われる。この100年間の推移を比較するのであれば、まず過去1900年の間に見られる100年間の推移と比較することが必要では無いだろうか。さらに、最初の1900年間には1000年間につき0.2度の率で変化していると言う解釈も、非常に大ざっぱで期間のとりかたに可成り恣意的なものが見て取れるが、一応、形式的にはまだ何とか理解はできる。しかし「Since then]という事でそれ以後の上昇が1.2度としているのは一体どこを読んでいるのだろうか。これは1800年あたりの極小値と最近の最大値との差をとったとしか思われないが、それまでの1900年間と形式的に同じ方法で比較するなら、1900年の読みである-0.4度と2000年の+0.3程度との差をとって0.7度程度とすべきだろう。こちらの方は明らかな違反である。

こうしてみると、この記事の、ここでの論旨には数値で言えば明らかに2倍程度の誇張がある。しかし確かに最初の1800年間ないし1900年間のベースラインとしての温度低下とそれ以後の急激な温度上昇には際だったものがあることには間違いが無い。とくに1900年からの100年間というよりも1800年からの200年間をみると、このような200年間以上にわたっての長期的で急激な温度上昇または下降も、過去に見られないことが気になるのである。1800年から200年にわたって、ちょうど1度程度の急激な上昇が見られることは確かである。

ここで思い起こされるのは、雪と氷に覆われた海である北極地方という地域の特殊性である。

以前、このブログでも何度か取り上げたが、北極地方の温暖化の少なくとも半分程度は煤などの大気汚染物質によるものだという結論の調査研究が、少なくとも2件以上、NYタイムズの記事で報告されている。

北極地域の大気汚染

北極北ヨーロッパに非常に近いところにあり、北極大気汚染はすでに19世紀から始まっていた、あるいはむしろその頃の方が大きかったというのが事実であれば、人為的な化石燃料使用の影響を考慮に入れるのであれば少なくとも19世紀全体をも含めて考察すべきだろう。とすれば、このグラフで見られる1800年以後、現在に至るまでの200年余りの温度上昇の半分程度を大気汚染物質の影響によるものだとすれば、その残りを太陽活動の影響によるものと考えて、少なくともこのグラフで見られる北極地域の温度変化については辻褄が合うと言える。


現在、政治の世界で問題になっている温暖化対策、今後の気候変化が間もなく寒冷化に向かっていくとすれば、それらのすべてが実際に実行に移されるようになるとは思われないが、対策を行うのであれば大気汚染の防止を主要な目標として実行して貰いたいものである。北極はともかく、アルプスヒマラヤの氷河後退の問題にも間違いなく大気汚染が深く関わっているに違いないからである。


それにしても、グラフの解釈には様々な問題をはらんでいるものだとつくづく思う。少なくとも統計学というのも単に一つの技術に過ぎず、そういった専門を広範囲に超えた多様な意味上の問題が縦横に絡んでいることが分かる。

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