検察修習

はじまっとります。

事件もひとつもらいました。しばらくは座学中心ですが、取調べもぼちぼちやります。

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さて。

司法修習生という身分はマイナーなので、全国の同期たちが行っている合唱コンクール(以下、単に「合コン」という)において名乗りをあげても、かんばしい反応がかえってきてないものと思われる。

「来年から弁護士に……」「司法試験を去年パスして……」のように、比較的メジャーな単語で彩色していく必要があるのです。

関係ないけど、「わ、頭いいんだね」という返答をされると困りますよネ。頭がいいってのは、「である」ことより「する」ことによって測られるべきものと思うのですが。

そして、「いやいや、頭の回転よりも腰の回転に自信があるんだヨ……」と合コン冒頭手続からギンギラギンの同期には更に困りますネ。さりげなくいこうぜ。

話を戻して。

何が言いたいのかというと、「そんなマイナーな我々が取調べしていいのかしらん」ということである。

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検察官、検察事務官司法警察職員が取調べをできることは、刑訴法198条1項にありますネ。

司法修習生関連の法規(裁判所法、司法修習生に関する規則)にも「取調べ」という言葉は出てこないし、分野別実務修習における各分野の指導準則(司法研修所長通知)における検察の指導範囲・方針にも出てこない。

これは昔からある問題だが、現在の最高裁判事である宮川光治氏が司法修習委員時代に出した「司法修習生に対する権限付与について」という資料がわかりやすくアクセスしやすい。

原文はコチラ

かいつまんで紹介する。

検察修習における取調修習は,(司法修習生に対する)権限付与の一事例とみることもできる。戦前には,司法官試補は裁判所構成法により検事代理として検事の仕事を行うことができたが,戦後はそのような法規はない。裁判所法施行後も慣例として行われていた取調修習の合法性が問題となった際,相島一之司法研修所長は昭和38年度の司法修習指導担当者協議会における挨拶の中で,いわゆる相島六原則を明らかにし,この原則に従って実施する限り取調修習は違法ではないとした。

六原則とは,要約すると,

1)指導担当検察官の事件の概要・問題点等についてのあらかじめの説明・指導,

2)被疑者・参考人の呼出は指導官が行い,修習のみを目的とした不必要な呼出をしない,

3)指導官が修習生の身分等を説明し,自由な意志に基づく承諾を得る,

4)指導官が供述拒否権の告知をする,

5)指導官の同室と十分な指導監督,

6)修習生作成の書面をそのまま検察官調書として流用することなく,指導官があらためて取り調べを行い,調書を作成する,というにある。

なお,取調修習問題については,山室章「司法修習生の検察実務修習について」ジュリスト268号(1963年)40頁参照。今日ではそのルールの下に実施されており,検察実務修習の中心となっている。

とのことである。司法研修所長がモニョモニョいったところで根拠になるわけではないので、やっぱり明確な根拠なしに慣例でやってきてるんですナ。

上記六原則を守れば(3番目の原則は危険な香りがするナ)、実質的には指導官である検察官が取調べをしており、被疑者の同意も得られているので刑訴法198条1項の趣旨には反しない、という解釈でしょうナ。

司法修習生の関与した取調べにおける検面調書が伝聞例外としてのミソをつけられないためにも、上記原則は遵守されなければなりますまい。

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調べたらスッキリして堂々と取調べをできると思ったら、なんだかビミョーな気分になってきた。

任意捜査だけでなく身柄事件(被疑者が逮捕・勾留されているもの)でも修習生が取調べを現にしているし、自分もやりたいのだけれど、やるときゃトラの威を借るキツネとならず、丁寧にやりたいナ。

マイナーな身分なんだからさ。


(またね!)