517 ボスとの悲恋 ナタリー・アンダーソン

ボスとの悲恋 (ハーレクイン・アフロディーテ)

ボスとの悲恋 (ハーレクイン・アフロディーテ)

父はリサが生まれる前に亡くなっていた。母はリサが16歳の時、オフィスラブに敗れ、リサに教訓を与えた後で、事故に合い亡くなる。孤独になったリサは、就職先で上司に誘惑され関係を持つが、彼に婚約者がいることを知って交際を拒絶する。不誠実なその男は、リサを退屈な仕事に追いやり、セクハラをしてリサを失業に追い込んだ。母の教訓を守らなかった罰を受けたのだ。リサは自国を出て、イギリスで派遣社員として働き始める。就労ビザが切れる二か月前、会社のパーティに来ていたリサは一人になりたいと思っていた。友人のジーナは、リサに男性を紹介すると告げていた。背後から近づく足音に、リサは苛立ちを感じた。彼はジーナに言われてやって来たに違いない。現れた男性は、確かに魅力的だった。リサは封印してきた欲望が甦るのを感じて、彼から逃げ出した。
ローレイはリサを見た途端、惹かれ、彼女を追いかけずにはいられなかった。普段社内で相手を見つけたりしないことは、彼のルールだったが、彼女は二カ月後には居なくなる派遣社員だ。帰国するまで、楽しい時間を共有して悪いことはない。だが、リサは手ごわかった。お互いに惹かれ合っていることは認めながらも、リサは彼を拒絶した。リサは自分の弱い心と戦っていた。彼にとっては気軽な情事であっても、最後に傷つくのは自分だ。しかし、リサが風邪をこじらせた時、ローレイは断固として彼女を自分の家に運び看病する。リサは自身の欲望に屈した。彼を愛している。でも、信じることはできなかった。いつか彼は私を捨てる。それなら、もっと傷つく前に別れたい。しかし、ローレイは承知しなかった。苦悩と喜びの後、リサは妊娠に気付いた。酷い悪阻は、ローレイにも事実を気付かせた。ローレイは結婚すべきだと言った。彼を不幸な未来に進ませる訳にはいかない。リサがストレスが原因で倒れたと連絡を受けた時、ローレイは目を背けていた事実に気付いた。リサは自分の望む全てだ、彼女を愛している。
ローレイはリサが自分を信頼していない事が辛かった。ともかく、結婚さえしてしまえば、彼女に愛されるようになるかもしれない。
リサは数カ月前に予約した航空券で帰国しようと決意する。彼を望まない結婚に縛りつけることはできない。しかし、傍らを通り過ぎた子供が父親に抱きつく姿を見て、この子供から父親を取り上げることはできないと悟る。踵を返したリサは怒りの形相で佇むローレイに気付いた。リサは自分で引き裂いた航空券を彼に渡し、行くことはできなかったと告げる。無言で乗り込んだタクシーの中で、リサは彼に愛する相手が見つかったらいつでも離婚することと、子供から引き離したりしないことを話した。ローレイは一つしかない心を既に奪われていると言った。二人はやっとお互いを愛していることを相手に伝えることができた。


傷つきたくないという思いが、全てを遠ざけてきた理由だった。本当は愛が欲しかった。彼は馬車馬のようにがむしゃらに彼女を求めるが、それが愛であることに気付かずにいた。結構ありがちな話です。