怒り/吉田修一

怒り(上) (中公文庫)

怒り(上) (中公文庫)

怒り(下) (中公文庫)

怒り(下) (中公文庫)

映画見たから原作、とかそんな思わないし、そこまで大好きな映画だった感覚はなかったんだけど、「原作だと直人が優馬の母の墓に入っている」と聞いて思わず買ってしまった。オリジナルストーリーで放置された不幸に納得できなくて二次創作を探しちゃう感覚というか。
こういう言い方はあまりしたくないけど、昔から見てきた身からすると、直人ってすごい“綾野君のやりそうな役”なんだよね。「Life」の勇とか「孤独な惑星」の哲男みたいな。つっても綾野君ってもうあの頃とはポジションが違うから、今さらこういう役やることってそんなないんだけどw。
「怒り」の直人は、髪型とか着てるものとか全然おしゃれじゃないのが良いんだよね。それがあるからビジュアルとか全然好きじゃないんだけど、はなしの中の影の薄さ、所在無さげな頼りなさが「ああすげー綾野君っぽいv」って感じで、なんか懐かしくなる。
そういう認識を踏まえた上で、原作の直人はそんなに綾野君のやった直人っぽくなかった。優馬はまんま妻夫木君の優馬っぽかったけど原作の直人はもうちょっと太ましいというか地に足着いた感じがしたけど、それだと妻夫木君と攻守逆転しちゃう感じがあるんで、出来上がったもんに不満はないです。つか私の映画「怒り」への思い入れの9割以上は、「直人と優馬に幸せになって欲しかった」ということに尽きます。「森山未來松山ケンイチ渡辺謙もみんな良い」とか、思うけどそんなことは瑣末w。
設定の改変はあるし省略された人間関係はあるけど、そこら含めて「よくできた映画だよなー」と改めて思う。でも千葉編は原作の方が分かりやすかったかもね。沖縄編の泉(広瀬すずの役)は、原作の方が印象は良いw。
映画では母しかいない優馬に兄とか性癖を知ってる兄嫁がいることで、直人との関係がちょっと社会的になってて結局それが救いになるのは逆にファンタジーな気はするけど、お墓の中の直人に「良かったね」って気分になったのでそれでオッケーです。映画見て「直人が可哀想"(ノ_・、)"と思った方にはオススメw。