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  • <追記・修正 2011/4/12>歌詞を蒐集していくことにもしました。邦楽のみです。言葉が気になってきたので。

2008-12-17

[][][]ハリケーン・カトリーナ=災害・民間委託・国家の責任

「ハリケーン・カトリーナ(引用注:2005年8月)は自然災害などではありません、人災でした」

そういうのは連邦緊急事態管理庁(Federal Emergency Management Agency FEMA)の元職員であるジェフリー・アンダーソン(仮名)だ。

「自然災害専門家の間では、あらかじめ予測された危機に対してしかるべき予算を投じて防衛対策をとることは、より多くの人命を救い復興費用を節約する最も基本的な方法です。なのにそれが別のものに取って代わられたために…」

1999年にFEMAに入所した当時、職員たちはみな使命感に燃えていたのだ、とジェフリーは説明する。

「ハリケーンのような自然災害はテロのような人災と違い、科学的データから計算して十年後の予測を出せるんです。ですから予算も立てやすい。カトリーナも、あんな悲惨な情況にならずに済んだはずなのです」

(中略)

ブッシュ政権誕生時のホワイトハウスでは、災害対策の重要な要素を含む公共事業を、政府全体にわたって早急に民営化する努力が開始されていた。

FEMAは実質的に民営化されたも同然でした。他の多くの業界同様、アメリカ人が最も弱い「自由競争」という言葉とともにです。私達は市場に放り出され、競争が始まりました。

主要業務はいかに災害の被害を縮小し多くの人命を救うかということから、いかに災害対策業務をライバル業者よりも安く行うことが出来るかを証明するということに変わったのです」

組織の業務を外部委託しはじめたFEMAのためにトレーニング・プログラムを作成したジョージア州立大学の災害専門家ウィリアム・ウォーは、政府の災害対策機関を民営化したのは大きな間違いだったと言う。

「政府が業務を民間に委託すると、敏速な対応が出来なくなります。民間会社の第一目的は効率よく利益を上げることであり、国民の安全維持という目的と必ずしも一致しないからです」

(中略)

「洪水の前年の2004年夏、FEMAはハリケーン上陸を予測していながら、堤防を強化するための災害緩和資金をルイジアナ州に与えませんでした。洪水対策を急かすルイジアナ州の要請は政府に却下され、ハリケーン時において防御の役割を果たす沿岸湿地帯の大規模な再整備計画「コースと2050」の十年にわたる研究調査と協議の成果は棚上げにされました。堤防の保守や建設のための予算は繰り返し削られ、防波堤は未完成のまま放っておかれました。そして気象学者らの予想通りハリケーンは上陸し、町の80%は水の底に沈んだのです」

2007年の時点の報告では、例えばニューオーリンズ市の46万人の住民はうち半数以下しか帰還しておらず、住民の60%は今も電気が使えず、病院は半数が閉鎖したままで、再開した託児所は被災前の23%、緊急支援と瓦礫除去費用に数十億ドルが費やされたと発表されているにもかかわらず、ニューオーリンズの町には洪水時に出た瓦礫の三分の一が2007年現在もまだ放置されたままだ。

(中略)

被災地の賃貸住宅の家賃は被災前の三倍に上昇し、貧困層は次々に追い出され、それに比例して住民の自殺率は被災前の三倍に跳ね上がっている。

「国民の命に関わる部分を民間に委託するのは間違いです。国家が国民に責任を持つべきエリアを民営化させては絶対にいけなかったのです」

堤 未果 ルポ 貧困大国アメリカ p.36-46, 2008, 岩波新書

2008-12-15

[][][]肥満児対策=DDR+チョコレートミルク

2007年2月。ウェスト・バージニア州は、急増する子供たちの肥満にブレーキをかけないと州の医療費が足りなくなるという予測から、肥満児対策を最優先課題の一つに挙げている州だ。肥満児の医療費における州負担は、連邦と州が半分ずつ負担する低所得者用医療費補助、メディケイドの場合、一人あたり年間平均6700ドルと、非常に高額な負担になる。

そこで同州は思い切った政策の導入に踏み切った。州内にある公立学校全765校における「DDR」(ダンス・ダンス・レボリューション)というゲーム機導入計画だ。日本のコナミ社が販売する「DDR」は、三分間流れる音楽に合わせ、画面に出てくる矢印の指示通りに専用マットでステップを踏んでいき得点を稼ぐエクササイズ系のゲームだ。手始めに103校に導入し、約二年間で全公立学校に普及させる予定だという。

(中略)聞けば2001年に、アメリカ農務省は肥満児の栄養状態改善策として「ミルクを飲みなさい」(got milk?)というキャンペーンを打ち出したという。いくら栄養価が高くても、コーラやスプライトで育った子供がはたしてミルクなど飲むだろうか? 私の疑問にシャーリーンが苦笑いする。「もちろん飲みやしないわよ、人工的にチョコレートの味をつけない限りね」。そして農務省はその通りにした。このキャンペーンが実施された年に「チョコレートミルクを飲もうキャンペーン」に参加した食料品店は全米で2万8000軒だったという。

チョコレート味が大好きなアメリカの子供たちが農務省の計画通り毎日チョコレートミルクを飲んだ場合、彼らは普通のミルクより234キロカロリー多く摂取することになる。シャーリーンは肩をすくめてこう言った。「政府の考えてることってさっぱり分からないわ。太った子供たちがせっかく汗をかいても、体育館を出たすぐの廊下にはずらっとスナック菓子やコーラの自販機が並んで待ってるのよ。でなきゃその後の給食に出る甘いチョコレートミルクがね」

堤 未果 ルポ 貧困大国アメリカ p.32-33, 2008, 岩波新書

[][][]「貧困」と「肥満」は同義語になりつつある

「家賃を除くと一日に使えるお金は平均5〜7ドル。この中で生活をやりくりするから、いつも食べ物のことばかり考えています」

アメリカ内国歳入局の発表によると、2006年度の時点でおよそ6000万人のアメリカ国民が一日7ドル以下の収入で暮らしているという。

イラク北朝鮮で非情な独裁者が国民を飢えさせていると大統領は言いますが、あなたの国の国民を飢えさせてるのは一体誰なの? と聞きたいです」

(中略)

世界的な経済学者のポール・ゼイン・ピルツァーは、著書『健康ビジネスで成功を手にする方法』(Paul Zane Pilzer, The Wellness Revolution)の中で、120兆円規模の食品産業が貧困層をターゲットにいかに巨額の利益を得ているかを指摘している。加工食品のマーケティングは、肥満と栄養失調が深刻な問題である貧困国民の嗜好を研究し、彼らが好む有名人を CM に使うなどしてピンポイントで狙い撃ちするという。貧しい国民ほど安価で手に入るジャンク・フードや加工食品に依存してゆくからだ。経済的弱者がそれらの産業を潤わせるアメリカで、「貧困」と「肥満」は同義語になりつつある。

堤 未果 ルポ 貧困大国アメリカ p.29-31, 2008, 岩波新書

[][][]2005年にアメリカ国内で「飢餓状態」を経験した人口は3510万人(全人口の12%)

アメリカ農務省のデータによると、2005年にアメリカ国内で「飢餓状態」を経験した人口は3510万人(全人口の12%)、うち2270万人が成人(全人口の10.45%)、1240万人が子供である。

「飢餓人口」と定義されるこれらの人々の大きな特徴は、1. 六割が母子家庭である、2. 子供のいる家庭の飢餓人口数は子供のいない家庭の二倍である、3. ヒスパニック系かアフリカ系アメリカ人が多い、4. 収入が貧困ライン以下、の四つである。

また、彼らの39%は何らかの職業に就いている。

ニューヨーク州ハーレムの「プロジェクト」(低所得者用集合住宅)に、七歳と九歳の息子二人と一緒に暮らすアフリカ系アメリカ人のモニカ・デイビスにとって最も大きな問題は、いかに親子三人餓死せず生き延びるかということだ。

夫はいない。ビルの清掃をして稼ぐ給料は月に450ドルで、家賃以外の光熱費や雑費と食費を天秤にかけて悩む毎日だ。

「フードスタンプだけではとうてい毎月の食糧は確保できません。だからそれ以外に「スープ・キッチン」(民間の慈善団体が行っている食料配給ボランティア)や教会のチャリティの列に並ぶんです。

今これを払わないで一週間電気が止められるのと、その間ろうそくの光で暮らしながら、息子たちに一枚でも多くパンを食べさせるのとどっちがいいだろう? という具合です。」

堤 未果 ルポ 貧困大国アメリカ p.27-28, 2008, 岩波新書

2008-12-14

[][][]おかずはマカロニ&チーズ

ボーン、ボーンと十二時の鐘が昼食の時間を告げる。ニューヨーク州ブロンクスにある公立小学校では、カフェテリアに集まった生徒たちが我先にとトレイを持って給食カウンターの前に列を作った。

電子レンジのスイッチがオンになると、カフェテリア内においしそうなチーズの匂いが漂いはじめる。食欲をそそられた生徒たちは待ちきれずに列から体を乗り出し、ホワイトボードに書かれた「マカロニ&チーズ」の文字に歓声を上げた。

マカロニ&チーズとは、ゆでたマカロニに、ミルク、バター、チーズをこってりと混ぜたもので、スーパーマーケットに行くと一箱3ドルで売られている。カロリーが高く味付けも濃いため、子供のランチ用のインスタント食品として最も人気が高い。

おかずがこれで、主食は「ピーナッツ・バター&ジェリー・サンドイッチ」だ。これはパンにピーナッツ・バターとジャムをぬったもので、やはりアメリカのランチ・メニューには必ずといっていいほど登場する。

堤 未果 ルポ 貧困大国アメリカ p.15-16, 2008, 岩波新書

[][][]貧困地域を中心に、過度に栄養が不足した肥満児、肥満成人が増えていく

ルイジアナ州ではハリケーン・カトリーナの前年2004年の時点で既にフードスタンプ受給者率は63.8%と高い。フードスタンプの支給額は無収入の四人家族で月額518ドル。一回の食事につき一人1ドル40セントだ。受給者のほとんどは家に調理器具がなかったり、キッチンそのものがないケースも少なくない。

「フードスタンプを握りしめてスーパーマーケットに食料の買い出しに行くとき、一体彼らはどのコーナーに走ると思います?」

マイクは説明する。

「出来るだけ調理器具も調味料もいらないもの、それでいて少ない予算でお腹が一杯になるものをと考えると、選択肢は限られてしまうのです」

私の頭に、ジャンクフード三昧だった公立小学校のランチ・メニューが浮かんだ。

貧困層の受給者たちの多くは栄養に関する知識も持ち合わせておらず、とにかく生き延びるためにカロリーの高いものをフードスタンプを使って買えるだけ買う。貧困層のための無料給食プログラムに最も高い頻度で登場する「マカロニ&チーズ」(1ドル50セント)をはじめ、お湯をかけると一分で白米が出来る「ミニッツ・ライス」(99セント)や、味の濃いスナック菓子(一袋99セント)、二ヶ月経ってもかびの生えない食パン(一斤1ドル30セント)などが受給者たちの買う代表的食材だ。

これらのインスタント食品には人工甘味料や防腐剤がたっぷりと使われており、栄養価はほとんどない。

その結果、貧困地域を中心に、過度に栄養が不足した肥満児、肥満成人が増えていく。健康状態の悪化は、必要以上の医療費急騰や学力低下に繋がり、さらに貧困が進むという悪循環を生み出していく。

堤 未果 ルポ 貧困大国アメリカ p.25-27, 2008, 岩波新書

[][][]貧困ライン以下の生活をしている国民は3650万人

「2005年にニューオーリンズの洪水ニュースを見たときアメリカ国民がまず驚いたのは、被災地のアフリカ系アメリカ人と肥満人口の多さでした」

そういうのはニューヨーク州でマイノリティの人権専門弁護士をしているマイク・ウォーレンだ。

マイクは2005年の夏、ハリケーン・カトリーナのためにすべてを失った被災者たちの権利を擁護するために、何度もルイジアナ州に足を運んでいる。

「あれを見て、ジムに行かずにマクドナルド・フードばかり食べるからああなるんだって言った日本人駐在員がいましたが、勘弁してくれと言いたくなりました。アメリカという国を何も知らない。もっとも、裕福な週の金持ちたちの間で同じ意見が出ていることの方がずっと怖いのですが」

大きな被害が出たミシシッピルイジアナはそれぞれ全米で一番目と四番目に貧しい州だ。

「例えばルイジアナ州では、住民の二人に一人がフードスタンプ受給者なんです」

2006年度に全米でフードスタンプを受給したアメリカ人は2619万5449人で、2000年から5年間に930万人増加している。

だが、これらの数字は実際にフードスタンプを必要としている人口のほんの六割に過ぎず、受給資格を持ちながらそれを知らずにいる人口が全体の四割だという。また、ちゃんとした職に就きながらも家族を食べさせられない、いわゆるワーキングプアの数も年々増加する一方だ。国税調査局の発表によると、2006年、国内で貧困ライン以下の生活をしている国民は3650万人に上る。

堤 未果 ルポ 貧困大国アメリカ p.24-25, 2008, 岩波新書

[][][]予算、ジャンクフード、ファーストフード・チェーン

学校側は少ない予算の中でやりくりしようとするため、人件費を削減し、調理器具は老朽化しても買い換えず、メニューはどうしても安価でカロリーが高く、調理の簡単なインスタント食品、ジャンクフードになってしまう。

学校給食という巨大マーケットを狙うファーストフード・チェーンも少なくない。政府の援助予算削減に伴い、全額無料では提供しきれずにマクドナルドピザハットなどの大手ファーストフード企業と契約する学校も増えている。調査結果によると全学校区の約29%が大手ファーストフード・チェーンから申し出を受けており、その率は生徒数が5000人を超える学校区では約六割という効率になっている。

堤 未果 ルポ 貧困大国アメリカ p.22, 2008, 岩波新書

2008-12-05

[][][]貧困児童の教育レベルの低さと肥満度は比例する

公立小学校に通う生徒の50%が肥満児であるニューヨーク州は、2006年に肥満対策を打ち出した。すべての公立小学校の生徒に無料で支給するコーラを、ビタミンC補給のためだとしてオレンジジュースに変えるよう指示したのだ。

だが、この政策はほとんど効果を上げなかった。

貧困児童の教育レベルの低さと肥満度は比例するのだ、とエミリーは言う。

「家が貧しいと、毎日の食事が安くて調理の簡単なジャンクフードやファーストフード、揚げ物中心になるんです。多くの生徒は家が食料配給切符(貧困ライン以下の家庭に配給される食糧交換クーポン、フードスタンプ)に頼っていますから、この傾向はますます強くなりますね」

「学校側は子供たちの肥満解決のために何かしていますか?」

「予算がないんです」とエミリーはため息をついた。

堤 未果 ルポ 貧困大国アメリカ p.16-18, 2008, 岩波新書

[][][]所得格差、市場原理主義、貧困児童

アメリカ国税調査局の2006年度における貧困の定義は、四人家族で世帯年収が2万ドル(220万円)以下の世帯を指し、その家庭の子供を「貧困児童」とする。同局が発表したデータ(U.S. Census Bureau 2005)によると、2005年度のアメリカ国内貧困率は12.6%、うち18才以下の貧困児童率は17.6%(約六人に一人)で、2000年から20005年の間に11%上昇した。これは五年間で新たに130万人の貧困児童が増えた計算になる。

レーガン政権以降、国内の所得格差を拡大させている市場原理主義は、中間層を消滅させ、下層に転落した人々が社会の底辺から這い上がれないという仕組みを作り出し、60年代に連邦政府貧困層救済の目的で打ち出した数々の社会保障政策を徐々に縮小していった。

例えばブッシュ政権が打ち出した、2009年までに保育援助資格を有する低所得過程のうち30万世帯を保障範囲から削減する「保育援助基金の五年にわたる凍結」は、今後さらに国内の貧困児童を急増させ、「無料ー割引給食プログラム」は、そういった子供たちの健康を著しく悪化させ、医療費を高騰させることになる。

堤 未果 ルポ 貧困大国アメリカ p.14-15, 2008, 岩波新書

[][][]サブプライムローン/貧困ビジネス

サブプライムローン問題」は単なる金融の話ではなく、過激な市場原理が経済的「弱者」を食い物にした「貧困ビジネス」の一つだ。この言葉はもともと生活困窮者支援のNPO法人「もやい」の事務局長である湯浅誠氏が生み出したもので、貧困層をターゲットに市場を拡大するビジネスのことを指す。

(中略)

連邦政府が発表した2005年のデータによると、同年、国内でアフリカ系アメリカ人の55%、ヒスパニック系の46%がサブプライムローンを組んでいる。白人はその人口に対してわずか17%だ(Federal Reserve Data 2005)。

堤 未果 ルポ 貧困大国アメリカ p.6-7, 2008, 岩波新書