Hatena::ブログ(Diary)

狂童日報 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2006-05-29 三つの格差社会 このエントリーを含むブックマーク

格差社会には三つのタイプがある。かなり単純化しているので、あくまで「図式」として読んでもらいたい。

(1)ヨーロッパ

 格差社会というよりは「階級社会」である。高学歴高収入というポジションを享受するのは、一部の選ばれたエリートとあらかじめ決まっている。こうした階層化は10代後半までにすでに決定され、大学進学率もあまり高くない。その一方で、低収入低学歴の人々は、それほど一生懸命働くわけでもない。つまり社会的な地位も収入も高いが、仕事がハードで担う社会的責任も高い少数のエリート国民と、あまり地位も収入も高くないが忙しく働いわけでもない多数の一般国民に二分される。失業率は高い一方で「就業」のモチベーションも低く、失業自体は深刻な社会問題ではない。階層が世代間で継承される率も比較的高く、経済競争はエリートの「上層」が担うべきものと考えられていて、一般国民の上昇志向はあまり高くない。

(2)アメリカ 

 国民全員が「機会の平等」の下に、個人の責任と実力において経済競争に参加することが建前になっている。激しい経済格差は生じるものの、「平等で公平な個人の競争」という建前が社会的に承認されているので、それ自体は大きな社会問題にならない。「上層」は極めて高い社会的な尊敬を受けることができる一方で、寄付やボランティアなど無償の社会的な貢献を行うべきだという圧力も強い。「上層」も「下層」も上昇志向が強く、プロスポーツなど「下層」が「上層」へと移動可能なことを演出する仕組みが発達している。失業率は高くないが、「下層」になるほど職場環境は劣悪である。 

(3)中国

 国民全体の上昇志向はきわめて強く、経済格差の存在についても極めて否定的で社会問題化しやすい。格差が受け入れられているのは、あくまで絶えざる経済成長によって「誰もが将来は豊かになる」という「神話」を維持しているからである。膨大な農村からの出稼ぎ労働者は、低賃金で劣悪な環境で働いているが、それでも大都市の高層ビルの建設現場などで働くことで、農村にいたときよりは「豊かになっていると」実感することが可能になっている。もっともこうした古典的な格差の一方で、平等志向の故に階層に関わりなく学歴志向が極めて高く、急激な高等教育の進学率の上昇で高学歴者の失業問題が起こっているという、先進国的な格差の問題が生じはじめている。

 まとめると、ヨーロッパ型は格差を維持するかわりに「下層」に余裕を与える、アメリカ型は「個人の平等な競争」によって格差の再生産を正当化する、中国型は格差を平等への「過渡期」と位置づけている、などなどによって「格差社会」に対応していると言うことができるだろう。ヨーロッパ型とアメリカ型は対称的なようでいて、共通した条件を持っている。それは移民である。ヨーロッパ労働者に余裕のあるのは、余裕のない低賃金労働を移民が担っているからであり、アメリカが競争社会を演出できるのは初期条件が貧困である移民を恒常的に受け入れているからである。中国で欧米の移民に当たるのは、いうまでもなく無尽蔵の農村からの出稼ぎ労働者である。

 日本で上の三つのいかなる道をとるにしても決定的な壁にぶち当たるのは、この「低賃金かつ劣悪な環境で働く膨大な労働者」(長いのでここでは「下層労働者」と呼ぶ)が存在しないことである。欧米の移民中国の出稼ぎ労働者に当たるこの下層労働者が、日本では「派遣」や「フリーター」と呼ばれていることはしばしば指摘されている。しかし欧米や中国の下層労働者との決定的な違いは、(1)欧米中国では出身自体が貧困である場合が多いのに対して、日本では「豊か」だった場合も多いこと、(2)欧米中国では故郷に帰れば「富裕層」であることが多いが、日本ではそういう「富裕層」になる「故郷」はまず存在しないこと、(3)欧米中国では生活スタイル自体が「下層」であることが普通だが、日本では車、パソコン、携帯などの機器を持っている(持たざるを得ない)場合も多いことである。

 今の自民党政権は「平等な競争」というアメリカ型と「過渡期」という中国型を組み合わせ、「個人の平等な競争で日本国民全体が豊かになる」という(かなり間違った)論理で「格差社会」に対応しようとしている。しかし、これは絶対にうまくいかない。移民や出稼ぎ労働者のような、分厚い下層労働者層が日本には存在しなくなったからである。だからこれからの自民党政権は、「だったら下層労働者層をつくればいい」という方向へと向かう可能性が強い。配偶者控除の撤廃や扶養控除の年齢制限などは、この文脈で理解できるような気がする。移民受け入れを増加するという方向性は何故かあまり強くないのだが、理由はよく分からない。

 ちょっと自分でもまとまりが悪くなった。また考えます

honestaholichonestaholic 2006/05/30 15:04 >「過渡期」という中国型を組み合わせ、
日本はもうすでにいっぱいいっぱいまで経済成長しているので、この記述はおかしい。私には、ただ単純に「アメリカ型」を目指しているように思えるし、また実際にそうなっているように思える。

adanadan 2006/05/30 15:09 個人的にはもっと移民を受け入れて欲しいと思っていますが、実際は、老人が「下層労働者層」になっていくのではないかと、なんとなく感じます。日本マクドナルドもそう考えたのかも。

uiuisohanuiuisohan 2006/05/30 22:09 日本では、労働の対価となる物質的な価値観を希求する力が、徐々に喪失しつつあるように思われます。故にどのパターンにもうまく当てはまらなくなってきているのではないでしょうか。横並びを重視してきた国民性の中から、種々の競争を放棄して、独自の価値観に沈殿する異型の民が、誕生しつつあるというのが、ことの本質のひとつではないでしょうか?

coolycooly 2006/05/30 22:10 移民をあまり受け入れないのは、日本の施政者にとってそのほうが制御しやすいと考えるからでしょう。

umetenumeten 2006/05/31 13:08 >honestaholic
>「過渡期」という中国型、については、
中央と地方の経済格差の固定↓
(東京・関東圏・東海・大阪・九州北部):(北海道・東北・中部・北陸・関西圏周辺・中国・四国・九州南部・沖縄)と位置づけると、ハッキリするのでは?

taka02taka02 2006/06/05 11:17 中国は参考にならないでしょう。戸籍の問題ご存知ですか?
格差から平等への過渡期からでなく、平等の建前から、
格差の本音へと言ったところじゃないでしょうか。
国としては分裂するのが自然なくらいの差ですね。

老人が下層階級化というのは根拠がないでしょう。
今の老人は日本の歴史上最高に豊かな他人達です。
若い頃下層にいた一部の人がただ歳を取るだけです。
”独自の価値観に沈殿する異型の民”というのは
注目すべき視点でしょうね。生活様式行動様式が違うことは
階級が違うことを意味しますから。

usagiusagi 2006/06/09 22:34 1軸の中での格差は置いといて、日本は多軸でいったらどうですか。
人間の佃煮のごった似で 似たもの同士集まって
他人の上に立とうとせず、
隣の友人は何やってんのか分からないぐらいで ちょうどいいんじゃないの。

ブロガー(志望)ブロガー(志望) 2006/08/23 01:04 お邪魔します。日本には他には無い特徴があります。それは「エリート=バカ殿」「上になればなるほど『献身』『自己犠牲』といったものが薄くなる」というものです。例えば戦前の日本では「士官商売下士官道楽兵隊ばかりが国のため」と言ったそうそうですから(他の国では反対のはず)。

K.K.K.K. 2006/10/15 12:10 はじめまして。記事読ませてもらいました。全面的にあなたの意見に賛成です。現在の日本は機会の平等を奪い階層を固定化使用と上層階級の人たちが考えています。あくまでお金持ちは子供もお金持ちに。貧乏な家庭は子供も貧乏にと。自民党も後押ししています。機会の平等もありません。高学歴であってもエリート群には入れません。一部の富裕層が拡大し格差社会の是正という大義名分において中間層の所得が引き下げられミドルクラスの人たちの就業意欲が下がってきているのが現状です。日本を支えてきたのはご指摘のように米国におけるごく一部のスーパーエリートではなく中間階級の社会的貢献によるところがおおきかったと思います。中間階級のがんばりにおいても不満がたまることなく就業意欲の低下がおこらなかったことは年功序列・終身雇用制が確立していたためであり双方が崩壊した今となっては実績は報酬と連結しなければ社会がなりたたず格差社会が広がりつつあるのだと理解しています。問題はここからで今現在中間・下層階級の不満が爆発しないのはデフレ社会(ものが安い)・まやかしの経済成長率(国債発行による成長率は5%強)・恐ろしい中国特需(現在の安い製品はほとんどが中国産・日本で生産していてはこの価格で利益がでない)・政府の財政出動(日銀の国債引受がまさにそう真水が増えているのにインフレが起こらない:小泉政治はラッキーだった)によっているだけでありこの条件が満たされているためニートは生活できるのでありこの構造が壊れれば間違いなくニートは死滅すると思っています。あなたが言うように低賃金で劣悪な環境で働かざるをえなくなるでしょう。しかし働けるようになるとはとは思いませんが(私も33歳です だんだん20才代より体は動かなくなります 嫌だなと思っている毎日です)。この先中国経済が日本に追いつかれれば日本は危ない。そうなってからでは遅い。日本は中国の機嫌をとっている場合ではない。アメリカ・台湾・インド・オーストラリアとの連帯を強化し対韓国・中国・ロシア政策をとるべきである(経済的に・自論ですが)。そしてtechnologyは常に日本が中国より前にいなければいけない。2005年が日本のターニングポイントとならないことを祈っている今日この頃です。

失礼します失礼します 2006/12/13 15:37 少々シンプルに区切った感がありますが、その分、分りやすく読みやすかったです。
ただ、格差をタイプ別にして、どれにも当てはまらないから日本はヤバイという結論に少々違和感を感じました
ある種、他国の格差を支える、より貧しい移民(農民)にとっては、元々の生活レベルから言えば、向上しているだから、問題性が薄いとも取れるように読めました
しかしながら、結局下層では、移民との価格競争が強いられ、平等が無くても大丈夫なんて悠長なことは言っていられないのが現状だと思います
教育によって、本人は立派になっていると思っているだけで、仕事レベルで言えば、専門職としてのキャリアが重要であり、言い換えれば、数年その仕事を真面目に行えば、後は資本が物をいうの今の社会だと思います

既得権を持つ者によって平等が排除される事がそもそも問題で、それは、民度が向上しなければ成り立たない世界共通の課題です
残念ながら、既得権者は、既得権を増せば増すほど、自身の保身に走るばかりで働かなくなります
とても格差に見合う仕事は期待できません
大日本帝国時代の大臣は自分の仕事の内容を知らないことが一つのステイタスであったといいます
その結果がどうであったか

欧米が、移民を積極的に取り入れるのは、自国民が賢い為、民度を下げ、お金をばら撒くだけで選挙に勝つ為ではないでしょうか
逆に言えば、日本はそもそも労働者が我慢強く、真面目で、さりとて、自分で物を考えない、つまりは民度が低いので、上手に利用されているだけではないでしょうか
個人的に、日本の問題は、増長した官僚がせっせと作った世界一の借金だと思います
何時まで経っても、自分で頭を使わない国民性はどうしようもありません

けんじけんじ 2007/03/07 11:12 >ちょっと自分でもまとまりが悪くなった。また考えます
と書いてありますがいい文章だと思います。また皆さんの意見にも多くうなずけるものがあります。ただこれからの時代を考えた時、この格差をどのように解消したら良いのかという問題があるかと思います。
この社会が格差を拡大して進んでしまうのか、もしこれ以上拡大した時は人間社会はどうなってしまうのか。この格差の原因となっているものは何なのか。この格差を解消することができるのか。原因となっているものが必ずあるはずです。
格差とは一部の者がカネを貯めすぎてしまうことだとだといえます。そのことにより市中にある限られたお金が片方にはいきあたらないため。これは人にも言えますし地域という場所的なものにも言えることです。カネが東京に集中するため、他の地域にはカネが回らないことだと言えます。
極論になりますが減価する貨幣が市中にカネを呼び戻す方法かと考えます。

ポチポチ 2007/08/15 13:38 日本はそもそも労働者が我慢強く、真面目で、さりとて、自分で物を考えない、つまりは民度が低いので、上手に利用されているだけではないでしょうか

同感です。日本人の多くの労働層はなぜあんなに生真面目に働くのか?マクドナルドひとつとったって、日本とアメリカの接客態度には雲泥の差があります。給料に大きな差があるわけではないです。オフィスワークにいたっても、日本では個人生活を犠牲にしなければならないプレッシャーが絶えずついてまわる気がしてなりません。だから国が経済的に豊かになったなんて言われたってそこで暮らす大多数の国民は不満とストレスを抱え込んでしまうのだと思います。「ヴィトンのバッグでも与えておけば、小さな家に住んでギュウギュウの満員電車で通勤して、睡眠時間を削って、休日返上で働かせてもよかろう」ってな具合なのが今の日本の労働現場の現状なのではないでしょうか。        
私は、心のゆとりが保てるスペースと時間の余裕を持って生きることのほうが物質的な優雅さを手に入れることよりも価値があると思います。今の日本では、得に都心で暮らしていく限りごく一部の富裕層しかこのゆとりを得ることが出来ないのが現状であることが一番の問題なような気がします。
「働きバチは働きバチのままでいろ」そんな政策を取り続ける国で子供を産むのは気が引けます。