基礎を固める
実は、1週間ばかり入院をしていた。
軽い腸閉塞ということで、入院当初はかなり症状がつらかったのだが、軽快するにつれて本を読むとかできるくらいの余裕もできるようになった。
で、その病床で読んでいたのがこの本。
- 作者: 辻桃子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/02/01
- メディア: 単行本
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ひととおり読んでみて思ったのは、「やはり基本は客観写生なのか」ということ。
私がとても好きな句のひとつに、
哭く人を笑ふ遺影や夜の長く 辻桃子
というのがある。
淡々と、そして鋭く切り取られた情景の断面の鮮やかなこと。この切れ味の素晴らしさには、いつもほれぼれする。
この句の作者が、まさにこの本の作者である。その人が「客観写生は大事」だという。掲句はまさに客観写生の威力を示しているだけに、その説得力は抜群のものがあった。
私は現代俳句方面から俳句の世界に足を踏み入れたのだが、辻桃子さんは現代俳句を経て現在の伝統俳句に至ったという。やはり行き着く先はそこになるのだろうかと、いろいろ考えさせられた。
しかし、客観写生とはいっても見たまんまを描くだけでは凡庸な句になってしまう。
問題は、客観写生を踏まえた上でいかに詩なり諧謔なりに持って行くか、というところにありそうだ。そこまで行って、初めて「佳作どまり」を脱することができるのだろう。
というわけで、現在の私は客観写生の練習中である。
故郷より母の手紙と柏餅
電柱に寄り添う烏若葉雨
蜜豆やExcelの極意口伝え
……とりあえず、こんな感じで。
まだまだ出来は悪いが、多作多捨ということでがんばっていきたい。