あなたの主張を幸せにする、妥当な論証を行うために必要な9つの論証形式

戸田山和久, 2002, 『論文の教室』, NHK出版. を参考にして書いています。)

(1)モードゥス・ポネンス
AならばBである。Aである。故に、Bである。
※妥当でない論証:AならばBである。Bである。故に、Aである。
(2)モードゥス・トレンス((1)の対偶)
AならばBである。Bではない。故に、Aではない。
※妥当でない論証:AならばBである。Aではない。故に、Bではない。
(3)構成的ディレンマ
AかBのどちらかである。AだとするとCである。BだとしてもCである。故に、いずれにせよCである。
※反論するには、
a) 場合分けがすべての場合を尽くしていない
b) それぞれの条件文を疑う

(4)背理法
a) Aではないと仮定してみよう。そうすると・・・矛盾が生じてしまった。故に、Aである。
b) Aであると仮定してみよう。そうすると・・・矛盾が生じてしまった。故に、Aではない。
※矛盾が出たとは、
a) 最初に仮定したことに反する命題が出てきた
b) 仮定からBであるという命題とBではないという命題が両方でてきてしまった

(5)帰納法(弱い論証形式)
※注意事項は、
a) サンプルはできるだけ多くなければならない
b) サンプルはできるだけバラエティに富んでなければならない
c) 偶然的な一般化を疑わなくてはならない
d) 例外に目を向ける。ただし、例外はサンプル集団の典型的なメンバーの中にたくさん存在することを指摘されなければセーフ

(6-1)アブダクション(弱い論証形式)
Aということがすでに分かっている。Hと仮定すれば、なぜAなのかがうまく説明できる。他に、なぜAなのかをHと同程度に説明できる仮説はない。故に、おそらくHは正しい。

(6-2)仮説演繹法(弱い論証形式)
アブダクションの次に、仮説の確かめがなされることが多いHという仮説が正しいならば、Bということが成り立つはずだ。じっさいBである。故に、おそらくHは正しい。
※これは(1)モードゥス・ポネンスで挙げた妥当でない論証形式だが、これが妥当とみなされるのは以下のどちらかの条件が成り立っているからである。
a) Hの他にAをうまく説明してくれる対立仮説がない。
b) Hと同程度にAを説明してくれる対立仮説H'が、(6-3)対立仮説の反証によって退けられている。

(6-3)対立仮説の反証(モードゥス・トレンスの形式)
対立仮説H'が正しいならば、Cということが成り立つはずだ。しかしながら、実際はCではない。故に、H'は間違っている。
※ここでCとは、Hにもとづく新しい予言。
(6-4)アナロジー(かなり弱い論証形式)
aは重要な点でbと似ている。bについてはcということが成り立っている。故に、おそらくaについてもcということが成り立つ。
※aとbが似ていることを主張するためにかなり長い論証が必要。
※似ているとしても、重要な点が似ているのでない場合は成り立たない。