本日のお買い上げ〜日本のソフトウェア産業がいつまでもダメな理由

日本のソフトウェア産業がいつまでもダメな理由

日本のソフトウェア産業がいつまでもダメな理由

日本のソフトウェア産業の問題を指摘する本。一言にソフトウェアと言っても対象が広いが、この本ではいわゆるシステム開発系を中心に論じており、ゲームとか組み込み系にはあまり触れられていない。国際的競争力の無さ、人月のみに頼った根拠なき受発注形態など、ソフトウェア開発の現場に携わる人にとっては、もはや「業界の常識」の内容だったりするが、その程度の問題すら解決できないところに問題の根の深さを感じる。仕事の下請け、孫請けというピラミッド体制自体は特にソフト業界固有のものではないと思うが、スキルの無い素人開発者がやたらと多い点が問題のひとつではないだろうか。例えば自動車メーカーに納入する小さな企業でも世界に通用する超一流の技術を持つことは珍しくないが、ソフト業界でそんな会社にはお目にかかったことが無い。そんな誰にでも出来る仕事なら、いずれオフショア開発へ仕事を奪われるのも時間の問題だろう。

また、エンジニアの英語嫌いという箇所を読んで、以前に自社ソフトウェアを英語圏向けに展開する企画を検討した時、外部の会社から「英語システム対応」なる名目で、もの凄い金額の見積もりが出てきた時のことを思い出した。その会社は日本でも有数の(この本の中にも名前が出てくる)IT企業なのだが、海外向けにソフトを出した経験が皆無だそうで、そもそも英語OSに触れたことも無いし、英語の技術資料が社内には無い、英語を読めないので外部の翻訳者を使って画面周りを開発する必要がある等と真剣な顔で説明していた。これが日本を代表するIT企業なのかと呆れた覚えがあるが、あれから数年、実状はあまり変わっていないのだろう。

書籍の著者は一人だが、実際には関係者の意見やコメントをまとめた体裁になっているので、論点がややぼけている印象を受けるのが残念。ソフト業界に対する辛口な論評として、下記の書籍もあるのでご参考までに。

ソフトウェア最前線―日本の情報サービス産業界に革新をもたらす7つの真実

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