その仕事は無駄ではない

ソフトウェア開発における実務作業は様々なので、その中には必ずしも直接的に役立たない(ように見える)ものも有る。ソースコードを書いたり、障害を修正するような作業はアウトプットが明確だし、その成果が明快だけど、後付の資料を作ったり、開発支援のような作業を行っていると面白くない作業に嫌気が差すのか、こんな台詞を聞くことがある。

  • どうせ仕様書を作っても誰も読まない。
  • どうせ情報共有システムを作っても誰も使わない。
  • どうせ改善活動を行っても誰も喜ばない。

いずれも「どうせ」という少々投げやりな態度が特徴で、そう言いたくなる気持ちも確かに分かるのだけど、だからと言って適当な作業を続けてしまうのは勿体無いことだと思う。

もちろん「より多くの人に読んでもらえる資料にするためにはどうすべきか?」と前向きの改善策を考えるのも必要だし、理想的にはこうした考え方を持ち続けるべきなのだけど、実際問題として仕様書のような味も素っ気も無い資料にそこまで要求されることは無いし、相手有りきのことなので正当な評価を求めるのは難しいことが少なくない。

だから、こんな場合はもっと割り切って考えてしまう方が、精神衛生上好ましいことが多い。限られた時間で手早く資料を作り上げるとか、効率的な情報共有を図るというのは、実は自分自身のスキル向上に欠かせない作業であり、地道な作業を行うことで自分の能力にプラスとなるのだ。

的確な内容の資料を短い時間で作り上げるのは立派な能力の一つだし、経験を積むほどに磨きがかかり他への応用も効くようになる。不平不満を並べて嫌々作業するようでは、時間と手間が勿体無い。自分自身を向上させるトレーニングの一環と考えれば、もう少し積極的な取り組み方が出来るはずだ。そうやって積み上げられた知恵と工夫は、次のステップへ進むための貴重な財産となることだろう。



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