仏教と仏教美術の日々

2009-08-16

桜ノ宮・龍王宮が存続の危機に陥ってるらしい

退去迫られる在日祈りの場 「桜ノ宮龍王宮」 「貴重な文化遺産」惜しむ声も

http://www.mindan.org/shinbun/news_bk_view.php?page=1&subpage=3485&corner=2


朝鮮寺といえば、生駒の朝鮮寺群が有名ですが、もうひとつ重要な拠点が桜ノ宮の川べりにある龍王宮。

在日二世の高田義雄(宋吉洙)氏が現在はオーナーを務めて、父親の残した龍王宮を現在管理しています。

基本的に寺院というより、プレハブ作りの貸し会場です。クッを行うための会場といった趣旨の場です。


なんでここにあるのか?

これは深い理由がある。

なぜかというと朝鮮寺の祭祀の起源が関係している。


まず、朝鮮寺というものは、朝鮮仏教とは本来ぜんぜん違う。朝鮮半島では禅宗系の曹渓宗がメジャーですが、そういう意味の朝鮮仏教の寺という意味の言葉では無い。ここは誤解無く。

これは朝鮮の土着のシャーマニズム祭祀がベースのものをいう。

正確に言うと、朝鮮シャーマニズム、巫覡祭祀をベースに、生駒の山岳宗教、つまりは修験道をや密教を取り入れ、生駒山麓に戦前に生まれた宗教文化全般をいう。

戦前の大阪に住んだ朝鮮出身者が作り出した習合宗教です。

朝鮮半島仏教でもないし、修験道密教でもない、また朝鮮シャーマニズムそのままでもない、「在日宗教」としか呼べないものでした。


ここで重要な事実があり、戦前の生野界隈に移民してくらしていた朝鮮出身者ですが、そのほとんどが済州島出身者であるという事実はあまり知られていない。

天理大学朝鮮学会の機関紙を戦前の分を以前朝鮮寺研究で読みまくってたとき見ましたが、戦前の政府東京大阪朝鮮移民の出身地域調査をやった統計結果がありまして、なんと8割が済州島出身者なのです。

さらに基礎知識として押さえておかねばならないこととして、済州島というところは14世紀ごろまで朝鮮ではない。耽羅国という国で独自の星主と呼ばれる王様がいて、言語も習俗も違う別民族でありました。

ハングルを開発するなど強力な中央集権を行った時代に星主は廃され併合されます。

李氏朝鮮時代には儒教と称して無茶苦茶なカースト制度ともいうべき差別政治が行われましたが、異民族の済州島民は底辺に置かれ辛酸を舐めます。日本に多く移住してきた背景にはそういう朝鮮の根強い済州島差別文化という暗い歴史があるのは否めないだろう。

さて、このように文化的に大きく違いのある済州島。その出身者が8割を占める戦前の朝鮮寺という場は朝鮮というより済州島なのです。

つまり、済州島シャーマニズム修験道(&密教)=朝鮮寺なのです。



ここで龍王宮の話に戻ります。文字通り龍王を祭るわけですが、済州島にも朝鮮半島本土にも巫覡祭祀はありますが、研究者の報告によれば、違いは確かにあります。

虎を引き連れた山神を朝鮮半島では特に重視しますが済州島では重視しないとか、済州島では特徴的な文化として「蛇神」を祀る信仰があるといったような特徴があります。

つまり、蛇の王たる龍王を祀る龍王宮は極めて済州島的であり、戦前の本来の朝鮮寺文化を残すわけです。


戦前や戦後まもなくの朝鮮寺群の在日一世世代の略歴は宗教社会学の会の研究などによれば、明らかにやはり済州島出身者ばかり。

済州島は海人の国です。祭祀は本来山では完結しないのです。そのため、海に面した龍王宮が必要だったわけです。

生駒の山奥でクッを行って、最期に龍王宮で流す祭祀を行ったりする。

そのような龍王宮は龍王を祀る済州島の祭祀が特にきちんと残る場なんです。朝鮮信仰において、龍王宮は必要不可欠な場であり、これが無くなるというのは単なる1つ朝鮮寺がまた減ったという意味以上のインパクトがある事柄なわけです。



宗教社会学の会の研究によれば、朝鮮寺は後継者不足で、巫女朝鮮半島から呼び寄せて祭祀を行ったり、後継者居ないからそのままそれら非済州島系の巫覡祭祀に置き換わる例が凄く増えています。

今の各寺のオーナーのリストを見ると、昔はほとんどが済州島系だったのに、いまではせいぜい3割ってとこじゃないでしょうか。

また祭祀内容も、日本の在日が生んだ済州島シャーマニズム修験道(+密教)という朝鮮寺祭祀でなく、朝鮮本土シャーマニズム韓国仏教(曹渓宗)に置き換わる例が増えている。

曹渓宗は禅ですから、「巫覡+禅」ってことになりますが、本来の在日宗教としての朝鮮寺は「巫覡+密」であるはずで、これは実は大きな変容であります。

朝鮮半島では曹渓宗は禅宗とはいえかなり現世利益的側面があちらの仏教は強く、わりと巫覡文化とも習合してるわけでして、その朝鮮半島の祭祀をそのまんま移入したようなものになっている。

これでは在日一世世代が考えて育んだ在日宗教としての朝鮮信仰は消えてしまう。あまり彼らも深く考えてないのかもしれないし指摘されてないが由々しき自体だと思う。


で、そんな中、あくまで済州島系の信仰文化の流れを組む、本来の在日宗教としての朝鮮寺文化を守る中心が、まさにこの高田氏であり、龍王宮なのです。

これは文化的に守らないといけないと思う。

確かにごたごたのなか素朴に川べりで祭祀やってたのが拡大して、結果不法占拠になったという流れなのだと思うが、行政と話あって、きちんとした落しどころで納めて欲しい。

具体的にはいくらかの金銭で買うとか、土地占有料を納めることで利用許可を出すとか、そういうお年どころにすべきだ。(たぶんでも土地利用料は納めてるんじゃなかったっけ)


なんか大阪行政は水都大阪をイベントでやろうと、チラシ作ったりしょっちゅうやってるけど、誰も乗ってない赤字垂れ流しで船で遊覧とか役人のオナニーみたいなそんなくだらないことで、景観のためとかで撤去求めてるは愚かしい。

これは学術的にも貴重なもので、残さないとダメだ。

たぶん行政にありがちな、金の問題とかでなく、見た目の綺麗さとかそんなことで立ち退けつってんだと思うけど、相応の利用料取ることで存続を認めるべきだと思う。

龍王宮が無くなれば、戦前から続く済州島系の正しい在日宗教朝鮮寺の祭祀文化は潰える可能性が高い。

日本の朝鮮寺の祭祀が全部朝鮮半島本土の祭祀に置き換わってしまう。これは大きな文化的損失だ。

お役人は水都大阪とかいってペラペラなイベントやるより、文化というものを考えるならもっと貴重なものがあることを知らねばならないだろう。

ボサルボサル 2009/08/21 21:30 2世です 済州島のハルマニは 宗教を 次世代に 詳しく伝承しなっかた またシンバンたちも自分だけでよいと 思い次世代 作法を子供たちに 教えない 今だけの生活に甘んじている 何世代もつずいたものを いとも簡単に 終わらせようとしている 以前は 韓国寺の維持をするために よく 寄付を しましたが 今はそのようなことも亡くなっている 桜ノ宮も 場所代を1件3000円〜支払いしています 管理人は とても 儲かったはずです ところが 管理人が 信心がありませんでした 金儲けだけの手段でした
だから このような ことに なったのです 済州島のお拝みには海と 山が必要です 龍王宮がなくなると それに 変わるものを 探さないと 困ります

ragarajaragaraja 2009/08/22 07:52 朝鮮寺文化は習合文化の側面がありますし、それぞれ寺で祭祀に誤差があって、なかなか宗派として画一化できなかったのもあると思うのですが、
きちんと整理して次代に伝えないといけなかったのでしょうね…
今は最期のチャンスで、今を逃すともはや戦前から続く在日宗教としての朝鮮寺文化は潰えてしまいそうで残念です。
済州島の本場の祭祀でも、締めでは海へ移動して祭祀を行うようですから、龍王宮のような海へ臨む場は信仰を守る上で必須なのでしょうね。

個人的には、日本の仏教みたいに○○宗○○派というように祭祀系統をまとめて、きちんと伝授が行われる体制になればいいのではないかなと。
朝鮮半島本土の祭祀と、済州島祭祀ではやはり様式は違うと思うのです。
朝鮮寺○○派みたいになれば、きちんと伝統も残るのではないかとか愚考する次第です。

zzzmedzzzmed 2009/08/24 13:07 済州島でも土着のシャーマニズムと外来の仏教が集合された宗教があったのか。
桜ノ宮の竜王宮は戦前の在日の人たちが作った独自の宗教だとどこかで見た気がするけど、済州島には蛇を神体としてなお仏教の寺が残ってるのかな?

ragarajaragaraja 2009/08/24 13:36 というか、朝鮮半島の仏教自体が、李氏朝鮮自体は弾圧されてほとんど滅びかけで、そもそもシャーマニズムと相当習合した土俗的なものだったみたいです。
ただ、仏教はそもそも廃れてましたから、仏教というより儒教式葬儀や祭礼との習合のほうが顕著じゃないかと思います。
蛇神信仰は土俗の祭礼分野なので、寺院で祭られるというのとは違うと思います。祭りや土着的な祠とかで祭られるタイプの文化じゃないでしょうか。
戦後の朝鮮仏教では仏教教学の復興に伴って、シャーマニズムは追いやられる傾向にあったようですし。
実地見てないので文字知識だけですいませんが…

まあ要するに表の信仰と、民間信仰という裏の信仰ってやっぱあるもので、
儒教国の李氏朝鮮ではこれらは裏の信仰なのだと思います。
日本統治時代も日本は神道で、シャーマニズムや土俗祭祀は日本列島においても蛮習として厳しく取り締まりましたし、やっぱり裏の伝統なのであろうと思います。

蛇神信仰自体は、戦前の朝鮮シャーマニズム研究の本でも済州島の特徴としてつとに報告されますし
戦後の済州島祭祀の取材をしたような書籍でもやっぱ祭祀の最期は龍王祭祀というのが定番みたいですから、蛇神信仰の流れは規模の差はあれど続いているのだと思います。

ragarajaragaraja 2009/08/24 13:44 あと龍王宮自体は戦後のごたごたの時期に小屋が作られたもののようで戦後みたいです。
ただそれ以前からそこでずっと祭祀はやってたのだろうと思います。
生駒などの在日宗教としての朝鮮寺というものに関しては、大正時代には少なくとも遡るもののようです。

zzzmedzzzmed 2009/08/27 10:06 丁寧な説明をいただいてありがとうございます。
私が興味を持ったのは、朝鮮半島の仏教(禅宗)と済州島の仏教は違うのかなと言う事と、蛇(龍)は水神として祭られているので農業と関係あるのかな言うことだったのです。
日本の神道はアニミズムの面を取り上げられる場合が多いようですが、巫女がいるのをみてもシャーマニズムの形跡を残していますし、最も古いとされる三輪神社のご神体は蛇です。
耽羅国が李氏朝鮮に征服されるまでの耽羅国の仏教はどんな形だったのかとか新たに興味がわいて来ました。
水原近くの民族村に行った事がありますが、シャーマニズムの形跡として結界のしるしなど興味深く見ました。
この龍王宮のことは記憶に残しておいて参考したいと思います。

ragarajaragaraja 2009/08/28 09:16 仏教は李氏朝鮮時代にはほぼ壊滅状態でしたから。山奥で土俗信仰的に細々残ってただけのようです。なので違いとかそういう規模にないと思います。
蛇神信仰は、農業より海人文化でしょう。済州島は海人文化の国で、海女とか漁師とかの国ですから。
「海中他界感」という用語が民俗学ではあります。海の彼方、中に異界がある、あの世があるという定型的な文化です。
海の民族に多いのですが、沖縄にもありますし(ニライカナイ)、宗像・沖ノ島なんかもモロそういう神話です。
済州島の民族性というのは、本来はこれら文化圏にあったのであろうと思います。朝鮮半島の大陸民族とは違うところがあったのではないでしょうか。

耽羅国については詳しくはよく分かってないと思います。ただ白村江の戦いの唐側の捕虜リストには「耽羅国士」とあるそうで
倭・百済側であったようですし、その後の新羅などとは違った文化であった可能性は高いでしょうと思います。
そもそも朝鮮古代三国が詳しいところよく分からないんですけどね…

ragarajaragaraja 2009/08/28 09:27 耽羅国に仏教はそもそも伝来していたのか?からして全く謎ですからねえ。
国王を星主といったそうですが、政教一致のシャーマニズム国家だったのかな?という匂いがしません?
国王の来歴神話が神の子孫というもののようですから、恐らく国王を頂点としたアニミズム的な祭祀をやってたんじゃあないですかねえ。
いや分かりませんけど。仏教も伝わってたのかもしれないですが。
なんせ李氏朝鮮時代は強力に中央集権が進み文化大革命的な画一化が図られましたから、仏教がほとんど残ってないように
耽羅由来の信仰文化もまたほとんど残ってないのではないかなと思います。
儒教祭祀にまぎれて蛇神信仰のような古に由来するような土俗文化がひっそり残ってるといっただけで、
既にほとんどは失われてるのだと考えています。
ですがよく見るとトルハルバンにしてもそうですけど、明らかに半島とは違った独自習俗がところどころ見られるって感じが現状でしょう。

ragarajaragaraja 2010/03/23 06:27 そういえば、蛇=農業というのもそうとは限りません。
例えば出雲大社や出雲周辺では蛇神信仰が盛んにありますが、
あれは海流に乗って流れ着くウミヘビを御神体にします。
海人文化でも蛇は神格化される例があるように思い、済州島は蛇神祭祀を海辺でやるところから見ても、むしろそっちのように思えます。

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