宮崎吾郎監督「コクリコ坂から」の感想(一部ネタバレあり)

Google+ にもちょこっと書いたけど久しぶりにブログにも反映してみるよ。

  • 面白かった
  • 完全に「ザ・ジブリ」な作品になってて大変驚いた
  • 色々破綻してた「ゲド戦記」とは大違い
  • 登場人物の表情いい(特に主人公二人)
  • 建物はじめ背景の造形もけっこういい

ゲド戦記って 2006 年だったのね。5 年の間にこれだけ進化したとしたら吾郎監督、まじですごすぎる。特に画面構成と表情の描き方は繊細でかなり良かった。

舞台設定が東京オリンピック直前と思われる 1960 年前半ということで、吾郎監督(1967 年生まれ)自身も記憶にはない頃。そんな時代風景を描く意味って、「昔はよかった」みたいな内容になるのかな…と思ったけど、それほどそんな意図は感じられなかった。主人公はじめ学生たちの瑞々しくまっすぐな姿勢は「上を向いて歩こう。」というメッセージをのものを表していて、前向きな気持ちになれる、とても清々しい作品でした。


以下ネタバレなのでご注意…しばらくスペースあけます。



















それにしても脚本・宮崎駿で監督・宮崎吾郎でこの内容かぁ、お父さん、この脚本を息子にやらせるとは、何と酷な…!

コクリコ坂から」は恋愛よりも家族、特に父性の物語だ。

そもそも宮崎駿自身が監督する作品には「父」の視点がものすごく希薄。一貫して母・女を描き続けている。ポニョはいわずもがな、千と千尋、トトロもそう。家族が出てくるにしても、すべて女性性との関係性の方が色濃く描かれている。

一方の吾郎監督に与えられたテーマは、ゲド戦記コクリコ坂から、いずれも男性性。ゲド戦記は父親殺しの話だし、コクリコ坂からは母は乱暴にいうと添え物な存在でしかない。主人公・海は生粋のファザコン、そしてもう一人の主人公・俊は出生の秘密を持つ。俊には母もいるが、母の姿は画面には映らず、父との関係性だけが描かれている。そしてもっとも強烈だったのは、海が夢を見るシーン。ナウシカの子供時代の回想場面を思い起こさせるが、最後で海は死んだはずの父の胸に飛び込む。ああー、これってばポニョのラスト付近、宗介がトキ(疑似母)にの胸に向かってジャンプするシーンじゃん!アッー!

吾郎監督は 2 作品とも原作はやってないわけで、本人自身が選び取っているわけではないにしろ、なんでしょう、これからも父・駿監督との関係性を作品に反映していくっていうことなのか。おそらく駿監督の作品に横たわる「母性」のように、吾郎監督は「父性」をずっと描き続けるのかな、だとしたらそれは、本当に、すごく辛いけど、吾郎監督にしかできない仕事だ。なんてことを思いめぐらせて震えていました。