『風立ちぬ』


2週間ぶりに訪れた東京、またしてもバルト9で観て来ました。
せっかく東京に来たんだから、いろんな映画館で映画観たいよね!と思いつつ、他に観たい映画の上映時間と自分の予定が合わなかったり、荷物持っての移動がめんどくさかったり、なんだかんだ新宿が友人との待ち合わせに便利な場所だったりして、とりあえずバルト9行っとけ!って感じで、今回は地図も見ずに慣れた足取りで向かいましたよ!

着いたものの、待ち合わせまでの時間に観れそうな映画がこれと『ワイルド・スピード EURO MISSION』の2つしかなく、ワイスピの方も興味はあったんですが、過去作を1本も観ていないため躊躇し、せっかくだから『風立ちぬ』を東京で観てやろうじゃない!ということでチケットを購入…しようと思ったらすでに完全満席でした。平日、それも木曜の昼間に満席!?東京を甘くみてました。
と、いうことで1時間くらい2階の座れるとこで延々流れる『銀魂』と『モンスターズ・ユニバーシティ』の予告を聞かされながら待ち、次の回で観ることに。こちらもほぼ満席でした。
満席でこの映画を観れるのはかなり楽しみで、周りのお客さんと「良い映画体験しようね!」などと勝手に思いながら観たわけですが…

全然乗れず、正直言ってすごく不快で気持ち悪くてかなり嫌いな映画でした。
スクリーン全体にも冷めた空気が漂っていた気がしますが、それよりもせっかく満員だったのに、良きにつけ悪しきにつけその効果を得られたような気が全くしなかったことが残念でした。
ここまで映画を観ていて本当の意味で嫌な気分になるのは久しぶりで、自分でもなんでだろう?と思ったのですが、連日の睡眠不足で体調的に芳しくなかったことが結構大きいのかなと。まず予告(ディナーがどうしたこうした)を観てる段階で相当イライラ来てたし、本編中に寝てしまって、関東大震災のシーンをほとんど覚えてなかったりします。
ので話半分で読んでください。

ツイッターの方でフォローさせていただいてる映画ファンの方々の間でも、賛否両論であることは事前に分かっていました。賛否両論、と言っても僕の見る限り「賛」がほとんどです。

観終わって、どこが良かったのか1ミリも分からなかったので、その方々のブログ等で感想を読んだりしたのですがそれでも全く分からず。いや、どこがいいんだこれの!!と睡眠不足のイライラも合わさり、鑑賞後色々なところで感想をぶつけたりした結果、時間が経ったことも手伝ってその熱量も消え去ってしまったので、他の方のブログを引用させていただきながら、感想をまとめたいと思います。

まず、一番僕が賛同した感想がこちらです。
ジブリアニメ『風立ちぬ』は宮崎駿版「浪花恋しぐれ」だった…ッ!?』(メモリの藻屑、記憶領域のゴミ
http://d.hatena.ne.jp/globalhead/20130722#p1

>…まあなにかにとことん打ち込む男ってぇのは確かに素晴らしいかもしれませんが、それに結核で病弱の女子巻き込んで「ボクチンはお仕事辞めるつもりはないけど君は病気をおしてボクチンの側にいてね」っちゅうのはいったいどういう神経なんだろ、と斯様に思ったわけなんですよ。

>それが男の仕事だとか仕事が男の本分だとかって言われてもねえ、両立難しいんだったらパキッと割り切ってどっちか取れよ!女捨てて仕事取るか仕事捨てて女取るかしろよ!んな煮え切らねえザマで何が男だよ!などとオレなんかは思うわけですよ。

飛行機に全てを打ち込む男を描くのは別に良いんですよ。自分のことを愛してくれている女を捨ててでも飛行機に全てを捧げる!それを映画で描くのはいいですよ!最近観たのだと…『キラー・インサイド・ミー』?ちょっと違うかな。でもやっぱり、何かに熱を入れる人が出てくると、その分その人はどこか欠けていたり、何か失ったりしてしかるべきだと思うんですよ。でも、『風立ちぬ』の主人公は飛行機も愛も両立させちゃう。しかも愛に至っては、結核に侵された女が献身的に付き添って、死ぬ直前に醜い姿は見せまいと主人公の前から消えることで永遠のものになる…。こんなジジイの妄想に付き合ってられるか!!と怒り沸騰ですよ。「醜い姿は見せたくなかったのね…」ってやり口が特に気に食わない。女の命をも奪う覚悟でやってるんだから、隣でボロボロになっていく姿を映すべきですよ。そして、それでもこの愛は美しい、と感じさせてくれるようなものを見せるべきではないのかと。この辺り、(やり口が)汚いなーと思いましたよ。
さらに、そこに苦悩や葛藤のようなものは全く無く、味気ないんですよ。両立させることだってできるかもしれないけど、それが簡単にできちゃってて、やっぱり都合が良いようにしか見えない。

ポイントは、この主人公と同じく飛行機を愛していてものづくりの人である、宮崎駿が作った映画であるという点。過去作はいいとして、今回はノンフィクションベースであるだけに、なおさらご都合主義的な面が際立ってちゃってて、これが理想の女ってわけかい、まだこんな妄想してんのかジジイ!!と思わずにはいられませんでした。
極めつけは最後に夢の中で女が出てきて、満面の笑みで「あなたは生きてね」のシーン。こんな話を書いた男の気持ち悪さに鳥肌が立ちました。ある意味貫徹しきっててすごいですよ。
命という意味ではなくて、菜穂子という女性は完全に死んだキャラクターじゃないかと。人間のエゴのようなものを丸切り感じない。だからこそただただ都合の良いキャラクターとしか思えませんでした。

こちらは、「賛」の方のブログで、なるほど、と納得するところの多かったものです。
『飛行機と恋をつかさどる悪魔の手下(宮崎駿風立ちぬ』感想)』(ぼんやり上手
http://d.hatena.ne.jp/ayakomiyamoto/20130724#p1

>飛行機のエンジン音にはお経の唸り声のような人間の声が使われていて、ぞっとした。二郎という主人公は、人間には許されざる怪物造りに手を染めていると思った。

僕は観ている間、なんかエンジンの音がおかしいな、くらいにしか思ってなかったのですが、これを読んでそういうことだったのか、なるほど!と納得しました。こういう映画の見方をして、こういう感想を言ってみたい…!としびれる文章でありました。

そして、こちらの記事では菜穂子は都合の良いヒロインではないのではないか、という感想が書かれています。
『眼鏡と二枚目の融合/菜穂子は都合のいいヒロインなのか』
http://d.hatena.ne.jp/ayakomiyamoto/20130725#p1

>菜穂子は男にとって都合のいいヒロインという見方があるけれど、それは男性の側からたまたまそういう風に見えるだけなんじゃないかと思う。菜穂子というヒロインは恋愛に一番の価値を置いて突き進み、自分のやりたいようにやりきった女性のように感じる。

こちらも読んでなるほどーとなりました。女性の間では評判が良かったりするらしいのですが、この点でしょうかね?

ただ、僕としてはやっぱり「都合のいいヒロイン」だと思うんです。それは、この映画の主人公にとって、そして宮崎駿にとって。やっぱり宮崎駿が作った映画、っていう観方をどうしてもしてしまって、なんだろう、宮崎駿が自分を甘やかしているとしか思えないんですよ。怪物作りに手を染める、そこで戦ったり苦しんでるように見えないんですよ。

以上、歯切れが悪いですが僕の感想です。
今回、今までのような子ども向け路線ではなく、大人向けのハードな路線で行くと聞いて期待していたのですが、蓋を開けてみたらどっちにもなれていない、いや、むしろ両方が合わさったことで悪い所が浮き彫りになってしまって、「大人向け」の体裁をとっていながら要所要所は「子供だまし」をして肝心な描写から逃げている、非常に中途半端な作品だと思いました。

結構、微妙に感じられたりする映画でも、他の方の感想を読んだりすることで見直したりすることが多い方だと自分は思うのですが、『風立ちぬ』に関しては書いてあることの意味がわからないレベルで良さが伝わって来ませんでした。他の方の感想、特に「賛」の立場で書かれているものを読むにしたがって、だんだん死んでるのは自分の感性なのでは、とか、『風立ちぬ』の良さがわからない寂しさのようなものを感じたりしたのですが、今のところ、なぜこの映画が褒められているのか単純にまっっったくわかりません。この映画を好きだったり、良いと感じた方とお酒など飲みながら直接お話しできるような機会があれば、また新たな観方や感想を得られると思うのですが。

初鑑賞が芳しくない体調でイライラしていて、さらに途中完全に寝てしまったという不遜な見方をしてしまったという点も自分で引っかかっている点ではあります。幼女が階段を、両手両足をつかって、うんしょ、うんしょと昇るとことか、風に飛ばされた紙ひこうきを見上げながら追っていくと茂みにドーン!!とかジブリおなじみのそういうのもういいから!!とかも無性にイライラしてたし。

もう1度観てみたいとは思いつつ、今のところ大がつくほど嫌いな映画なので見返すのが苦痛に感じられて当分先のことになりそうです。