安土幻想

安土幻想―信長謀殺

安土幻想―信長謀殺


 安土幻想


 この本の信長はなかなかの人格者です。キリスト教に大いに親しみをもってオルガンチノやワリニャーノたちと交際する姿は実に紳士的。また天皇制など伝統への尊敬の念もあります。理想を実現していく力があり、人間への深い洞察があり、理想的なリーダーです。私は、この信長は脳内配役:渡辺謙、相手役の勾当内侍は脳内配役:小雪さんで読み進みました。二人の仲は・・・というとここでは秘密にしておきますが、なかなか可愛らしい信長公に出会うことができます。

 この小説の一番の見所は、物語ではなく、歴史的事象の解釈部分であると思います。
最新の歴史学の新発見・新解釈を取り入れ、しかもどこまでも信長に好意的に解釈しながら、天正三年から本能寺の変までを追いかけていきます。家康の息子信康切腹事件など、信長の「非情の証明」とされる事件についても、この本では「家康の為、信長が悪役をかってでた」ということになっており、そういわれればその説にも無理はありません。

 信長*光秀*X=本能寺の変

 この方程式のエックスに何を入れるか?これによっていくらでもストーリーが作れます。
このストーリーでは、エックスに何が挿入されたのか?ぜひ読んでみてください。

 

 

死して残せよ虎の皮---浅井長政正伝

死して残せよ虎の皮―浅井長政正伝

死して残せよ虎の皮―浅井長政正伝



織田信長を追い詰めた男、浅井備前守長政を描く歴史小説
とにかく、19ページからの展開には皆驚くでしょう!
・・・思わず本を閉じてしまうかも(without腐女子)。

浅井長政はいくさ上手で家臣の信頼厚い完璧な武将として描かれています。お市の方や子供たちを心から愛していて、理想の夫、父です。織田信長は対照的に、怜悧な戦略家として描かれています。家臣や家族に気を許せない孤独な人間です。信長という人の「異質感」がよく表現されていて秀逸です。

 そんなツンツン信長くんが○○をした!(これってツンデレ?)

さまざまな愛憎の果てに、浅井長政は薄濃(はくだみ)となって信長のものになるのですが、そこにいたるまでの展開が、無性に面白い!人の良すぎる長政。意外と可愛い信長。ドラマチックな台詞。時に妙にリアルな時代描写。信長&秀吉のかけあいも絶妙。

不思議な面白さを宿した時代小説といえるのではないでしょうか。

集中講義 織田信長

集中講義織田信長 (新潮文庫 (お-70-1))

集中講義織田信長 (新潮文庫 (お-70-1))

 戦国大名研究の第一人者小和田哲男氏の、織田信長 総まとめ本。
文庫本で、安い。信長のことをバランスよくまとめてあるので、信長初心者には、最適な本です。
(この本は、一度平成15年に「信長 徹底分析十七条」としてKTC中央出版から出版されています)


 ・織田信長は代々津島湊や伊勢湾船運を支配し、船に関税を課し、莫大な収入をあげていた。
 ・戦国時代の常識にさからい、道路をまっすぐにし、バイパスまで作っていた。
 ・対武田信玄への外交戦略にも情報収集、情報操作を重視した。
 ・那古野城-清洲城-小牧山城-岐阜城-安土城、と城を次々と変え、武士を土地から切りはなしていった。
 ・織田軍は兵は弱いが、信長自身のアイデアと抜群のスピードと機動力で勝利をおさめた。
 ・能力本位の人材登用で、部下で一番に「一国一城の主」になったのは明智光秀、次に羽柴秀吉だった。

 などなど、信長理解の「基本」を知ることができます。

また織田信長研究も日々研究が進み、以前のイメージとは違うことが分かってきたようです。

たとえば、「比叡山焼き討ち」。
従来は全山の堂塔が焼かれたとされていましたが、発掘調査により、山上までは火をかけていなかった。浅井・朝倉軍が拠点とした山王社本殿のあるあたりを集中的に焼いたようです。小和田氏はこれは、「仏教弾圧」ではなく、浅い・朝倉軍の軍事拠点とての比叡山除去と僧侶の俗権廃止を狙ったものだと解説しています。

下天は夢か(1〜4)

下天は夢か(一) (講談社文庫)

下天は夢か(一) (講談社文庫)


とっても有名な信長が主人公の歴史巨編。
信長が名古屋弁を喋ります。


なのに、ワタシは100ページでリタイアしちゃいました。

だって、信長のセリフが冗長でイライラするんです。
こういう要点を得ない話し方をする人ではなかったと思うのですが。

信長はフロイスの記述にあるように、
司馬遼太郎の小説に出てくるように、
要点だけをパッパと言って、短い言葉で相手にいいたい事を理解させるタイプだと
思うんですね。

思い込みでしょうか?

宿曜師 濃姫と信長

宿曜師濃姫と信長

宿曜師濃姫と信長


 信長フィクションのひとつ。
ここでの濃姫は宿曜占星術や陰陽術の達人。実戦でも強く、剣で武士を切ったり忍者のような実のこなしをしたり、まるで、女性ゲームキャラのような大活躍ぶりである。
じつは斉藤道三も宿曜占星術の達人で、そのわざで美濃をのっとったという設定だ。
道三の占星術で「濃姫と信長の子供が天下をとる」とでた為、二人を政略結婚させる。
 この本での信長はただのやんちゃボウズで、美しく強い濃姫に惚れてしまう。
信長は濃姫を軍師とし、尾張統一の戦いを進めていく。
 ・・・濃姫が優しく強く美しく、作者の「ドリーム」を一心に背負っています。
信長は最初何でも濃姫に相談して事を進めていく。
ちょっとこの信長、可愛すぎませんか?純朴すぎませんか?
とてものちの「第六天魔王」にはみえませんけど・・・。

でも、こうやって一人ぼっちでない「信長」には心温まるものがありました。

信長は本当に天才だったのか?

信長は本当に天才だったのか

信長は本当に天才だったのか


一時信長がもちあげられすぎた反動か、こんなアンチ信長本が出た!

この本によると

1織田軍は弱かった!
2信長の戦術は他の大名並み。
3信長は親族にも家臣にもしたわれていなかった。
4情報戦も下手だった。


ということで、
信長は運がよかっただけ。
信長は天才じゃないんだよ。と作者は書いている。


だけど、信長は戦国時代を30年も生き抜き、勝ち抜いているんですよ。
運だけで、30年続くかな?

1〜4までの弱点を、長所に変える「サプライズ」があったから、30年持ったんでしょ?

とペコリーヌは思う。

信長 坂口安吾

信長

信長

 坂口安吾

無類派作家 坂口安吾の傑作です。
この作品で「カッコイイ信長」に出会えます。


時代小説なのに、カタカナや口語の混じる独特の文体。そのリズムの良さ。1952年の作品なのに古さをまったく感じません。

物語の中の信長や家臣たちは余分なことを考えたり、悩んだりしない。同族同士の戦いの中でさえ、日々を楽しく懸命に生きている。明日をもしれぬ日々でも、明るく生きぬいていく。

若き日の信長公は、本当にこんな若者だったかもしれません。

宝島社の本での、信長のイラストも雰囲気がでています。

わたしのもっとも好きな信長小説のひとつです。