受益者負担

たまに耳にする言葉ですので、ご承知のことと思いますが、受益者負担とは、特定の公共事業を行うのにあたり、その経費の一部を、その事業により利益を受ける者に負担してもらう事です

前回のガソリン税揮発油税)も、これに該当するもので、道路を利用する自動車の運転手さんに、道路を造る経費の一部を負担してもらうということで、税金を徴収する理由と、使途も明らかになっていますので、わかりやすい制度と言えます。有料道路の通行料なども、「使用料」と言うことで名目は違っても、わかりやすく似たようなものですね

ところで、道路公団が民営化された時や、高速道路等の整備計画が議論された時には、「新直轄方式」という耳慣れない言葉を良く聞きました。新直轄方式とは、通行料の収入だけでは道路の維持管理ができない路線を、国と地方公共団体都道府県)で建設費や管理費を負担して作ろうというものです

これはなかなか面白い方式で、地方自治体も負担を強いられるため、本当に必要だと思われる路線は積極的に建設が進むだろうし、反面、採算性が低いと考えられる路線は見直される可能性もあります。ある意味、受益者負担に近い考え方もある方式です。もちろん、国と地方公共団体で建設費を負担しますので、この区間の通行料は無料になります

山梨県でも、中部横断自動車道の一部が、この新直轄区間に指定され建設されることが少し前に決まりました。山梨県の負担額は確か200数十億円だそうです。ちょっと過剰投資ではとも思うのですが、ひょっとしたら、地方負担分については、地方交付税で公共団体に還元されるという噂もありますから、そうなりますと、それはそれで有り難いようには思います

しかし、冷静に考えますと、山梨が負担し無料で通行できるようになる区間を一番多く通行するのは、間違いなく静岡県の方で、受益者負担という観点から考えてみますと、たとえ2〜3割でも静岡県に負担してもらっても良いのではないかと考えてしまいます

どう控えめに考えても、静岡の人の方が利用する率は高いはずなのに、なぜ山梨が全額負担しなければならないのか?

中部横断自動車道は、通常の輸送ルートの一つにもなりますし、東海地震で静岡が被災してしまった場合は、恐らく、最大の補給ルートになるはずですから、静岡県の方がメリットが高い路線です。まあ、地方交付税で還元されるのであれば文句はありませんし、山梨も静岡に近くなることで多少のメリットはありますので、それはそれで仕方がないのかもしれません

道州制でもできて、静岡と同じ州にでもなれば良いのでしょうが、現在の都道府県制では、多少の不満はあっても広い度量で寛容しなければならない事の一つでしょう

そのような事を思っていましたら、本日、石原東京都知事さんが、次のような発言がなされていました

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071204-00000927-san-soci

「・・・・地方税である法人事業税について、平成20年税制改正で、都から3000億円程度地方に移すという合意ができたと報道されておりますが、そんな話は全く聞いておりませんし、まして内諾など全くしておりません。これは受益と負担の関係をさらにあいまいにし、地方を真の自立から一層遠ざけるものでしかありません」

「東京は300万人を超える昼間流入人口を抱え、都はそのために生じる膨大な行政需要に対処しながら、わが国の頭脳部・心臓部を維持して発展を図っております。・・・・・」

少し前から、法人事業税の一極集中が指摘をされていまして、東京・名古屋・大阪だけに大半の法人税収入が集まり、地方は税収減に悩ませられていて、税収の不均衡や格差が生じていて、それを是正しようとする国に対しての怒りの発言のようです

石原さんの発言にも一理ある事はわかるのですが、【東京は300万人を超える昼間流入人口を抱え、都はそのために生じる膨大な行政需要に対処しながら・・・】言葉尻を捕らえるようで申し訳ないのですが、逆を考えますと、東京に会社がある他県からの労働者によって都の法人税収入が上がっているとも考えられるので、おあいこみたいなものだとは思うのですが、どうなんでしょうね

この報道に接した時に、山梨が負担する新直轄の道路と同じような問題かも・・・とふと思いました。税の分配問題もしかりですが、都道府県という制度自体が、やや疲弊してきた枠組みではないかと考えています

偶然ではありますが、前日には、東国原知事さんと一緒に「道路特定財源の一般会計への繰り入れ」に大反対していました。東京でも23区内や近隣の市では、道路整備・下水道整備などのようなお金のかかる社会基盤の整備は、ほとんど終わっているのですが、地方はまだまだ遅れていますね