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2017-09-30 Sat

[]十和子の脳内キャストはこの人だ!〜沼田まほかる『彼女がその名を知らない鳥たち』

八年前に別れた黒崎を忘れられない十和子は、淋しさから十五歳上の男・陣治と暮らし始める。下品で、貧相で、地位もお金もない陣治。彼を激しく嫌悪しながらも離れられない十和子。そんな二人の暮らしを刑事の訪問が脅かす。「黒崎が行方不明だ」と知らされた十和子は、陣治が黒崎を殺したのではないかの疑い始めるが…。


表紙や挿絵で出てこないのに、小説の登場人物のビジュアルイメージを強く持って本を読むことがたまにある。

特に、直前に読んでいた漫画や、見たばかりの映画やドラマ、アニメに影響されるパターン。

今回も、最重要人物である佐野陣治は、登場直後から、先日最終回を迎えたばかりのアニメレクリエイターズ』のキャラクター「大西にしお」をイメージしていた。(⇒http://recreators.tv/character/19/

とても軽くて調子に乗りやすく、相手を不快にさせるタイプの人物で、イメージは近いと思う。


そして主人公の十和子。


このタイミングでなければ、十和子のビジュアルイメージを、「この人」に当てはめることは無かっただろう。

十和子のイメージを重ねた人物が、実在の人物で、あまりにインパクトが強烈な人だったため、自分でも、これでいいのか?この人でいいのか?と思いながら最後まで読み進めてしまった。


ところで、この文章を書いている途中に、映画化の話を知った。10.28公開とのこと。

映画「彼女がその名を知らない鳥たち」公式サイト

当然気になるキャストだが、陣治は阿部サダヲ。これは納得の人選。

問題の十和子は蒼井優


うーん。


蒼井優では、儚(はかな)すぎる。もっと強烈で病んでる感じの人の方がいいし、「可愛い」という感じをギリギリまで削ぎ落さなければならないと思う。

また、蒼井優のせいで、あと二人の主要キャストが引っ張られているのも気にかかる。

確かに、8年前の恋人である黒崎については、竹ノ内豊くらいカッコ良くても良い。

しかし、まさに今の不倫相手である水島松坂桃李なのは違うだろう。水島は、もっとダメっぽい人に決まっているはずじゃないか。今回、主演を蒼井優が務めてしまったが故に、それに釣り合う相手を持ってきて全体的にレベルが上がってしまったのだと思う。

映画コピーでも書かれているように、もともとは、主要キャラクター4人が全員共感しにくい、好きになれない、いわば最低な人たちの物語だったのだ。それが、蒼井優を中心に据えることで、不快感のレベルが下がってしまっているように思う。

ちゃんと不快感を保てる人物を真ん中に据えるべきだった。


ということで、そろそろ自分の脳内キャストをそろそろ書くと、十和子は、ズバリこの人。


豊田真由子議員。


「このハゲー!」という音声で一躍有名になってしまった豊田真由子議員が3か月ぶりに姿を現した「涙の会見」を見た直後に、この本を読み始めたので、まさに、このタイミング以外では、成し得なかった「配役」だ。


最初に書いておくと、自分は、豊田真由子議員に対して強い怒りを感じてはいない。

ヒステリックで、怒っている自分にすら酔ってしまうナルシスト

その性格の難点が、吉田戦車の「いじめてくん」みたいな秘書によって倍増して、あのような恥ずかしい失態に繋がってしまったのではないか、その程度に感じている。

(暴力云々の話は当事者でないと分からないので、ここでは触れない)


読み進めてみると、実際には自分が世話になっているはずの陣治に対して、湧いてくる怒りをとどめることができずに、罵詈雑言を繰り返す十和子というキャラクターは、豊田議員にとてもよく似ているように思う。

年齢的には少し上になってしまうが、美人度という観点から言えば、豊田真由子議員くらいがちょうど合っているように思う。(繰り返すが蒼井優では美人過ぎる)


基本的には、この話は、読者が陣治を嫌うよう、嫌うように仕向けられている。

読者は、十和子視点だと知りながらも、陣治が登場するたびに、陣治の外見上の気に入らない部分や、動作の癖などを、繰り返し見せられるからだ。

しかし、一方で、十和子のダメな部分が次第に明らかになって来る、というのもこの物語の面白いところだろう。ただ、十和子のイメージとして豊田真由子議員を想定していた自分にとっては、十和子は最初からエキセントリックでダメな人間。意外なところは、ほとんどなかったと言えるかもしれない。

ちなみに、自分の脳内キャストでは、水島松坂桃李からはほど遠く、子どもの学校公開でお見かけした江原啓之風の小太りな*1先生。松坂桃李豊田真由子議員と恋仲になるわけがないじゃないですか。


物語について(ネタバレ

今回は、『ユリゴコロ』みたいに、早く続きをよまないと死ぬ!という感覚こそなかったが、物語の展開がどう進むのか全く読めず、その点にハラハラした。80ページを過ぎたあたりから小さな事件が積み重なるようにして物語が進むも、何が焦点なのかが分からず、落ち着かないのだ。

  • 修理に預けていた腕時計の代替品を家まで持参すると水島が言い出す。(p84)
  • 再び家まで来た水島不倫が始まってしまう。(p130あたり)。
  • 警察が部屋に訪ねてきて、黒崎の行方不明を知らせる。(p185あたり)
  • 8年前の黒崎と付き合っていたころのこと(国枝との関係)が読者に明らかになる。(p200あたり)
  • 封じ込めていた記憶が蘇り、行方不明の黒崎は5年前に陣治が殺したのではないかと疑い始める(p217)

文庫本で全383ページの本なので、ちょうど中盤あたりで、この小説の一番のポイントが見えてくる。黒崎は、誰かの手によって殺されたらしい。十和子への思いが強過ぎる陣治が、昔の恋人である黒崎を殺してしまったのではないか。

ここからはあっという間だ。

  • 黒崎と別れたときの酷い仕打ちが読者に明らかになる。(p226あたり)
  • 水島のメッキが剥がれ始める?腕時計編(p245)
  • 水島の妻に密告電話(p247)
  • 黒崎の妻・カヨに会う(p265あたり)
  • 水島のメッキが剥がれ始める?地球丸かじり編(p245)
  • 水島のメッキが剥がれ始める?顧客データ盗難勘違い編(p327〜)
  • 十和子が陣治のガラス瓶から(黒崎から贈られた)ピアスを見つける(p332)
  • 十和子、ナイフを買う(p333)
  • 陣治が、黒崎の死体を埋めたときのことをしゃべり始める。(p339)
  • その翌日。陣治を殺すことを決意→考えが巡って、水島を電話で呼び出す(p356あたり)
  • 突如、水島を殺したいという自分の本心に気づいてナイフに手をかける(p365)

このあと語られる3年ぶりに十和子を呼び出した黒崎の酷過ぎるエピソードを読むと、本当になんて不快な小説なんだと改めて思う一方で、小説全体のミスディレクションの上手さに唸る。


ただ、ラストの陣治の選択は難しい。

自分のことは置いておき、とにかく十和子に幸せになってほしい。それだけが陣治の願いだということはよく分かる。しかし、たった一人で、この秘密を背負っていく十和子のことを思うと、陣治の選択は最後の最後で自分勝手になってしまったように思う。この8年間、そばにいた陣治を罵倒し続けていたからこそ正気を保てていたと言える彼女が幸せになれるとはとても思えない。

そして、ラストの一行からも、「幸せになって、俺を産んで、俺をとことん可愛がってくれぇ」という陣治の望んだ幸せが訪れなかったと読める。それが、十和子が負わされるべき「償い」なのかもしれない。そして、陣治の「気持ち」は純粋で人一倍強くても、その「行動」は、最期まで、カッコよく決まらないのだ。

十和子の一生の終わりまで、陣治の落下は続く。ゲボゲボ咳する陣治、どぜうの陣治、キンタマの小さい陣治、たった一人の十和子の恋人。


鳥たち

さて、タイトルの「彼女がその名を知らない鳥たち」とは結局何だったのだろうか?


まず最初に、それ以外のキーワードとして「におい」を振り返る。

この小説は、とにかく食事シーンが多い。しかも、その食事にまつわる味、におい、音、動きがことごとく不快。

そしてその主役は陣治。

大量過ぎて引用するとキリがない。例えば、チャッ、チャッと音を立てて食べ物を咀嚼する様子や、とろろを食べるシーンは「不快な食事描写としては一般的だと思うが、今回、自分が「これは嫌だ」と気づかされたのは、牛乳の飲み方。

陣治は、牛乳パックの注ぎ口が上手く引っ張り出せず、破いてしまう。破けた注ぎ口に直接口をつけて飲む。飲み終わってから手の甲で口を拭って、そのまま缶ビールに手を付ける。最高だ(最悪だ)。


しかし、陣治関連の描写を除いて、におい、味の描写を取り出すと、序盤から重要なヒントが出ていたことが分かる。

その「におい」が登場するのは、美鈴との電話のシーンが最初だが、その直後、十和子が陣治の部屋にあった壜からピアスを見つけたシーンから引用する。

フレテハイケナイ……。

頭のなかで囁く声がある。

思わず壜から手を離し、その場にへたりこむ。落ち着きなく周囲を見回す。身体の内側が外側にめくれ返っていくような特異な感覚に襲われる。するとあの路地のにおいがする。埃っぽいアスファルトのにおい、下水のにおい、ひねこびた植物と土のにおい、猫の尿のにおい。ピアスを最後につけたあの最後の夜のにおいが、部屋にこびりついた煙草のにおいと陣治の体臭をつきぬけて十和子の鼻孔に届く。

p76

その後、十和子は食事中に噛んだ舌が、自分の舌と思えないほどグロテスクなものになっていることを鏡で確認する。舌が気になって仕方のない頃、水島から最初に電話があると、舌からのにおいが気になってくる。

路地のにおいがする。だがこれは舌のにおいだ。立ち上がってまた洗面所に行き、舌の表面を隅から隅まで調べる。二時間足らずの間にまた変化している。前にはなかったはずの舌の中央部にまで、赤らんだ発疹が幾つか散らばっている。

p86


壜の描写で出てくる「最後の夜」というのは、十和子が黒崎を殺した日で、「路地のにおい」というのは、殺人の記憶と切り離すことができないものだ。水島との関係が深まるにつれて、舌の状態は変わっていく。

水島と最初に口づけを交わし、彼が部屋を出て行ったあとのシーン。

反射的に足が洗面所に向かう。鏡に映った舌は全体に赤みが増している。そのせいかブツブツが、減ったわけではなくてもあまり目立たない。でもそんなこととは別に、もっとどこがどうと言えない種類の変化が生じているように思える。確かにどこか変わった。その証拠に今はあのおかしなにおいがしない。

p132

一方、その直後に、十和子はこんな感覚にも襲われている。

現実が、ほんとうに十和子の目に見えるとおりのものなのかどうかが急にわからなくなる。部屋も、テレビも、かたちの崩れたラブソファも、花瓶に挿した花火の束も、実際にはもっと言語を絶するほどグロテスクな姿、似ても似つかない真実の姿を剥き出しにしてそこに存在しているのではないのか?十和子の視覚がたまたまそれを捉えられないだけ?

p134


つまり、これまでグロテスクで、路地のにおいがした「舌」が、その強烈な存在感を潜めたのは、十和子の感覚が捉えられなくなっただけなのだ。十和子は、潜在意識下では持っている「殺人の記憶」を、再び記憶の底に押しとどめることに成功した。


しかし、それは見せかけだった。

十和子にとって、恋愛感情自体が、既に「殺人」と切り離せないものとなっている。

頭から離れない殺人の衝動は、後半では、カラスとセットになって登場する。

ぐるぐると同じことを考えるのをやめたい、やめよう、強くそう念じる。それなのにまた、振出しにもどって考えはじめている。陣治が殺したのか?なぜ殺したのか?どうやって殺したのか?

カラスが鳴く。ここにはカラスしかいない。カラスどもはいつも群れをつくって飛びまわっている。今も数羽の黒い影が、飛ぶというより上空の烈しい風に吹き散らされて、翼を広げたままどこかへ流れていく。夕闇が降りてくるまでにはまだ間がある。

p275


腕時計の代替品の件、シルクロードのガイド本「地球丸かじり」の件があった上で、顧客データの紛失が水島の勘違いだとわかったときに登場する「カラス」は、まさに殺人衝動の隠喩だ。

「そうだ、例のもの、昨日見つかったんだ」

(略)

カラスが急にやかましく鳴きだして、十和子の気持ちはそっちへ逸れていく。なぜいつもカラスしかいないのだろう?カラスではない鳥たちはみんな、どこへ行ってしまったのか?黒い影が幾つも頭上を横切っていく。それが警告だったみたいに、無風の静けさを破って断崖の下から強い突風が吹き上げてくる。木々の枝が揺れる。

「どうして知らせてくれなかったの?」

風音に消されないよう大声で言うが、風はすぐに途絶える。

p363


ここでも書かれている通り、十和子は「カラスではない鳥たち」の名前を知らない。

十和子の目に見える現実とは、人間関係の「愛」「憎」しかなく、それがどちらも殺人と結びついている。彼女は、それしか知らない。それ以外の生き方を知らない。

それでは陣治が知っているのかと言えば、それも違う。この小説のラストで陣治の取った行動は、彼も「彼女がその名を知らない鳥たち」の名前を知らなかったことを意味しているのだろうと思う。


小説の中では、十和子と対照的な生き方を見せる登場人物がいる。

姉の美鈴だ。

それは、十和子の美鈴評によく表れている。

東京に行こうとどこに行こうと、家庭を切り盛りし、趣味の習い事をし、ボランティアとして社会参画を果たす。まっとうな姉。姉のまっとうな生き方。結婚を放棄した女たちを、すべての放棄を憎む美鈴、決して離婚しない美鈴が断固として支援する。

途中、夫の不倫が発覚し、一時は別居していた美鈴だが、ラスト近くで、十和子が電話したときは、「私、中国語習いはじめたの」と、不仲問題は解決済み。十和子だったら、完全に殺人に至っているシチュエーションだ。

つまり、普通の人間関係では「愛」も「憎」も極めなくていいし、美鈴の見る現実世界は、十和子とは違って、恋愛以外のことに満ちている。

「彼女がその名を知らない鳥たち」は、恋愛関係以外の楽しみ、例えば、中国語を習うことである、といっていいのではないか。

ただ、沼田まほかるは、この小説の中では、だから、美鈴の生き方が正解だ、とはしていない。

美鈴のような生き方は鼻につく、と感じているようにも読めるし、美鈴は、この小説でテーマとしている「愛」とは無関係に生きている、とも読める。

そう考えると、映画がことさら「究極の愛」と持ち上げているのも違うように思う。

少なくとも、タイトルが指す「鳥たち」は、エキセントリックな十和子、そして陣治を否定するものだという解釈は間違っていないはずだ。とすれば、「究極の愛」ではない部分で、何か価値のあるものを見せなければならないと思う。映画が、どこにそれを求めているのか。つまり、タイトルに対して、どう落とし前をつけているのか、がとても気になる。


映画としては、『ユリゴコロ』も気になるけど、『彼女がその名を知らない鳥たち』は、より作品解釈が気になる作品だ。そして、両作品に出る松坂桃李が、どう演じ分けているのか、というのもとても気になりますね。


参考

*1:読み直したら、水島は「ほっそりした」体型のようなので、小太りは誤り

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2017-09-24 Sun

[]久しぶりの一気読み小説〜沼田まほかるユリゴコロ

ユリゴコロ (双葉文庫)

ユリゴコロ (双葉文庫)

久しぶりに、ページをめくる手が止まらない読書となった。

夏以降に読んだ小説は、『鳩の撃退法』や古野まほろ天帝のはしたなき果実』、山田正紀『ここから先は何もない』など、何となく「ヨッコイショ」な読書で、寸暇を惜しんでページをめくるような本とはならなかった。そして、絶対的信頼を置く乙一(『さみしさの周波数』)ですら、のめり込むような、いわば「ゾーンに入る」というような読書体験は得られなかった。

しかし、今回は違った。


ある一家で見つかった「ユリゴコロ」と題された4冊のノート。それは殺人に取り憑かれた人間の生々しい告白文だった。この一家の過去にいったい何があったのか―。絶望的な暗黒の世界から一転、深い愛へと辿り着くラストまで、ページを繰る手が止まらない衝撃の恋愛ミステリー!各誌ミステリーランキングの上位に輝き、第14回大藪春彦賞を受賞した超話題作!


主人公が、父の押入れから見つけたノートを読み始めてからは、止まらなくなる。まさに「沼田」沼に引き込まれた感じだ。

まずは、殺人者の手記が書かれた4分冊のノートを、父のいないときを見計らって読むという行為が、今まさに読者が小説を読んでいる状況と重なる。これほどの内容の手記を、部外者が覗き見するような形で読んでいることに、自分も何となく後ろめたさを感じてしまっているのだ。

見つからないうちに一刻も早く読まなければ…。


読んでいる途中で、父が帰って来てしまい、押入れに戻す。続きを読むのに、また一週間待たなければならない…というシーンなんかは最高だ。

作中の主人公が「読む」、それだけでサスペンスになっている。

実際に1週間を待つわけではなくても、読者は続きが読みたくて、作中の1週間が待ちきれない。


そして、何と言っても、手記の病んだ感じ。

「私のように平気で人を殺す人間は、脳の仕組みがどこか普通とちがうのでしょうか。」という冒頭の文も強烈だが、4歳から遡って思い出を語る中で、友だちの家で、直接的に「死」をイメージさせる古井戸を見つけたシーンは特に印象的だ。

まるで、私が穴を見つけたのではなく、穴が私を見つけ出したようでした。

そばに行くと、湿ったにおい、闇のにおいが上がってきて、私は息といっしょにそれを吸い込みました。

穴に顔をつけたとたん、闇が目に吸い付いてきました。どこまでが自分の目でどこからが闇なのかももうわかりません。ただどこまでも、ただ暗いのです。p29


こういった「異常な感じと」、「ユリゴコロ」という(話者の)独特の言葉選びのセンスは、(勿論、他のまほかる作品でもあっただろうが)村田沙耶香と似ているなと感じた。ほとんど理解できない感覚だけれど、常識的な感覚の縁を進んで、ギリギリ共感できるような…。


しかし、読者の気持ちを引き付けて離さない、この手記の話以外に、主人公・亮介の実生活の問題がある。特に、婚約者・千絵が突然姿を消してしまった問題は亮介にとってインパクトが大きく、すぐに取り組まなければならない問題のはずなのに、特に進展のないままに中盤まで進む。

まさに、この部分が、この小説の一番面白いところだと思う。

読んでいる方としては、「この手記は誰が書いたものなのか(誰が殺人者なのか)」というところが一番気になるものの、その話がこの小説のメインではないだろう、ということも同時に感じている。

おそらくメインになるはずの千絵の失踪については、よくわからないまま中盤が過ぎ、手記の話も、まだ盛り上がっている。一体、この小説はどこに向かうのか?予想がつかないまま、8割くらいまで進み、そこから一気に畳みかけるようなラストという怒涛の展開。

大藪晴彦受賞も納得しきりの、素晴らしいエンタメ小説だった。(大藪賞自体は、もっと冒険小説ぽい話が取るように思うが)


映画について

映画『ユリゴコロ』オフィシャルサイト

ある意味で、バランスが取れていないのが魅力、というこの物語を、吉高由里子主演(松坂桃李×吉高由里子×松山ケンイチの3人主演という扱い?)の映画は、どれだけトレースできるのか、というのは気になる部分だ。バランスが取れてしまうだけで、この物語の、行先が見えない、どん詰まりな感じの魅力は失せてしまうと思う。

また、序盤では手記を書いたのが男性か女性かすら分からない、という部分も、当然トレースできるわけがなく、ある意味で「映像化不可能」な作品を映画化してしまったなあ、と思ってしまう。

ただ、この物語の鍵を握る重要な人物について、自分は、その人をめぐるラストの展開に「え!!」、そんな風には見えなかったけど…と小説を読んでいて思ってしまった。そこら辺の演技は、是非映画で確かめたい、とも思っている。

ただし、やはり出来るだけ事前情報を入れないで読むのがこの本の楽しみ方だと思うので、未読の人は、映画の予告編を見ることはお勧めしません。また、映画を観ていない中でこういうのもなんですが、当然、小説から読むべき作品だと思います。


参考

並べてみても、沼田まほかる作品は傑作ぞろいで驚きです。


村田沙耶香も「怖い」ですね。まさにクレイジーとの名にふさわしい作品ばかり。

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2017-09-23 Sat

[]知らない人こそ読んでほしい!〜『なみきビブリオバトル・ストーリー』

11月3日、並木図書館ビブリオバトルに4人の小学生が集まった。

シュートを決めるようにカッコよくチャンプ本をとりたい修。

ペットショップの子犬の現状を伝えたいと願うアキ。

恋バナの主人公へのあこがれを胸にゆれとまどう玲奈。

ケンカ中の修にどうしてもわかってほしいことがある陸。

そして、4人それぞれの思いをかけたビブリオバトルの幕があがる……


これは素晴らしい!

いろんな人にオススメしたい本です。

そして、この本がどのように書かれたのか、舞台裏を知りたくなる、そういう本でした。

というのも、この本は4人の登場人物のエピソードを4人の作家が別々に書く、競作という形式が取られているからです。4人で書いたにもかかわらず絶妙な選書。絶妙なエピソード


どの程度までビブリオバトル関係者が打ち合わせに顔を出し、どの辺までお互いに選書について詰めたのか、よく分かりませんが、まず、タイトルは伏せたままで絶妙な選書のバランスについて。


この選書のバランスだけで、上手いし、リアルだと思いました。

子ども同士のビブリオバトルも何回か見たことがありますが、(少し慣れた)小学生がやれば、多分こんなバランスになると思います。大人同士の場合もほぼ同じですが、大人の場合、小説を避けたり、特にメジャー作品を避けたりする傾向があるので、メジャー小説2冊が登場するゲームというのは稀かもしれません。

ビブリオバトルを知らない人が、ルールだけ聞いてこの本を作ったらこういうバランスで書かないと思います。(物語4冊にしてしまうのでは…)その意味で、とてもリアルな選書バランスで、そこにまず感心しました。

ちなみに、小学生同士でやる場合、たとえ1回目は物語系に寄ったとしても、他の人の発表を見て、2回目以降は選書のバランスがガラリと変わると思います。つまり、物語系ではない方が、スキルがなくても楽しく発表できる、ということを理解して、小説は避ける子が増えるのではないかと…。自分が6年生の授業参観で見たときは、生徒たちは慣れたもので、西原理恵子古墳うんちく本、猫本と、大人でも読みたいもの続出で驚きました。


次に、4人それぞれが本に込めた思いと選書の過程。

これが本当に見事でした。

以降は選書についてはネタバレしてますので未読の方は注意。


1人目に発表した修は、自分の読書人生を振り返って、本当に自分が面白いと思うものを選びます。修は心に決めた一冊はあるものの、クラスメイトに何を発表したらいいかを相談し、紹介された『チョコレート・アンダーグラウンド』と『都会のトム&ソーヤ』を読み3冊で迷います、この過程がとてもいい。結局、最初に思いついた『ヒックとドラゴン』を紹介することになりますが、その選択も大正解。

これに似ているのが3人目の玲奈で、彼女の場合は、最初に、知人の大学生のビブリオバトルを見て、ビブリオバトルをやってみたい、という方向から入りますが、選書は最初からブレずに、小説だけでなく、マンガ、映画DVDも全部そろえている『バッテリー』。

2人目に発表したのが、家でペットを飼いたいアキ。彼女の場合は、最初から「この本を広めたい」という思いが先行しているので迷いがありません。そして紹介するのが、ペット業界の裏に迫る『子犬工場』。詳細は省きますが発表はとても素晴らしいものでした。

そして4人目は読書家の陸。自分は4人の中では、陸を一番応援したくなりました。彼は、まず、心理学者池谷裕二の『単純な脳、複雑な「私」』を紹介したいと考えます。以前、自分の“色弱”がきっかけで(勘違いから)仲違いしていた修に、本の中の、この部分を伝えたかったからです。

同じ赤色を見ても、自分の見ている赤色を隣の人も同じ赤色に感じているだろうか?

結局、もう少し本の難易度を下げて、発表するのは、同じ池谷裕二の『ココロの盲点』の方にするのですが、「この本を通して、自分について、知ってほしい、理解してほしい」という強く願う気持ちが、自分には刺さりました。そして、プレゼンを失敗してしまうあたりも最高です。

ビブリオバトルは勝ち負けよりも、発表時の気持ちの揺れ動きも含めて、聴いている人に向けてどれだけ思いを届けられるか、という部分こそが、面白い部分だと思っています。陸の発表は、その意味で、チャンプ本に引けを取らない発表でした。


この本の良いところは、いくつもあります。

  1. この本自体が、面白そうな本のブックガイドになっている
  2. 4人の個性が異なり、男女比も半々で、本のジャンルも異なり、読者は自分に似たタイプを探せる。また、「推し」を決めて読むことができる
  3. それぞれの発表のあと質問のやりとりがあり、4人の発表ののち、チャンプ本が発表される、というビブリオバトルの流れがそのまま再現されているので、一読すればルールと流れが理解できる、
  4. これからビブリオバトルをしようという人には、本の選び方の参考になる
  5. ビブリオバトルの何が面白いのか、という核の部分が読者に伝わる

中でも、やはり、5番目に挙げたことに尽きます。

この本を読めば、子どもも大人もビブリオバトルをやってみたくなるし、本を読みたくなります。

本の中で、「読書が素晴らしいものだ」という書き方は一切せず、4人がそれぞれ自分のペースで読書を楽しんでいる、ということも大きいのかもしれません。まさに副題にある通り、「本と4人の深呼吸」というキャッチフレーズがぴったりです。


まとめると、自分の考える、ビブリオバトルの良いところが、かなりしっかり語られている本で驚きました。児童用書籍だと侮っていた自分を恥じたいです。特に、ビブリオバトルをこれまで見る機会が無かった人にオススメしたいです。


そろそろちゃんと山本弘ビブリオバトル部の本を読まなくちゃなあ…


参考

⇒修が結局発表しなかった『チョコレート・アンダーグラウンド』の感想はこちら。『都会のトム&ソーヤ』も1巻だけは読んでますね。

⇒『バッテリー』関連の感想はこちらにまとめられています。最終巻についてはまだ書いていない…

池谷裕二作品の感想は、これしか書いていなかったか…。この人の本は読みやすいですね。

⇒ペット関連の本は、この本と杉本彩の本を読みました。『子犬工場』も是非読んでみたいですね。

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2017-09-17 Sun

[]知的好奇心は満たされるが変な本〜川添愛『白と黒のとびら』


魔法使いに弟子入りした少年ガレット.彼は魔法使いになるための勉強をしていくなかで,奇妙な「遺跡」や「言語」に出会います.最後の謎を解いたとき,主人公におとずれたのは…….あなたも主人公と一緒にパズルを解きながら,オートマトン形式言語という魔法を手に入れてみませんか?


これはまた、相当に変わった本だと思う。

もともと、最近発売された川添愛『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』(朝日出版社)の書評の中で触れられていて 「変な本」を期待して読んだが、想像以上だった。

読んだことのある本だと、この本に読書感覚は少し似ている。


どちらも、作中のストーリーと絡ませて、主人公に問題が出されるが、それは同時に「読者への挑戦」形式を取っている。しかし、その問題を解けない、もしくは十分に理解できない読者でも、ストーリーを十分に味わうことができる、という点も共通しており、どちらもとてもよく出来た話だ。

ただ、『「迷いの森」のパズル魔王〜』と比較すると、この本で出される問題は、日常的・具体的ではない。以下に、実際に作中の文章を挙げるが、ここだけ切り出しても全く意味がわからない。

f:id:rararapocari:20170826222403j:image


物語のラストまで、これらの○●で作者が読者に教えようとしているものは何かという核の部分には一切触れられず、それはそれで正解だったように思う。自分は、意味が分からないなりに純粋にパズルの一種として堪能した。


ストーリーとしては、「魔法使いの弟子」である少年ガレットの成長譚ということになるが、ラストで見事に課題を解き、先生に認められるシーンはなかなかジンと来る。最後に先生がガレットに語り掛ける言葉が含蓄に富んでいる。

「馬鹿者」

「え?」

「何もかも自分でやらなければ、自分でやったことにならない、とでも思っているのか?そういうのはな、子供の発想だ。大人はそうは考えない。どんな人間にも、力の及ばない面はある。やり遂げなくてはならない仕事が大きなものであればあるほど、一人の力ではどうしようもなくなるものだ。そのようなときは、自分に何が必要で、何が足りないかを冷静に考え、頼るべき人に適切な仕方で頼るのだ。そして自分も他人から頼られたときに期待に添えられるよう、つねに力を磨いておく。自分の力の限界と、自分と他人に与えられた役割とを考慮し、日々精進する。それが大人だ」

p299

ガレットは素直な性格で、先生や親に感謝し、ときに反発しながら成長を続けるので、とても気持ちよく物語を読み進めることができた。このあとに書くように、この本は少し難しい内容なので、やや腰は引けるが、続編でのガレットの活躍も是非読んでみたい。そう思わせる物語だった。



オートマトン形式言語チューリングマシン

ところで、この物語でずっと出てくる○●が意味しているものは何か、ということになると、それこそ、副題に入っている「オートマトン」だとか「形式言語」だとかいうものになる。

作中で出される問題は、当然のことながら難しくなっていき、全16章のうち、13章まではほぼ理解しながら読むことが出来たが、14章で出される「最後の課題」については、しっかり理解できなかった。(ぼんやりと理解しているが)

16章を読み終えて始まる「解説」では、物語の種明かしとして、やっと「オートマトン」だとか「形式言語」の説明が出てくる。この中で、自分も作中の謎すべてについて深く理解できるのかと期待していたが、正直、この「解説」はかなり分かりにくいものとなっている。

この本を読むことで「オートマトンといえば、あれでしょ、ジャミロクワイでしょ」くらいの理解からステップアップできるのかと思っていたが、結局、自分の理解がジャミロクワイどまりだったことは、とても残念なことだ。

ただ、チューリングマシンの話などにも少し興味があり、それらの本を読んだときになって改めて、ここに戻って来るかもしれない。そのときに、この「解説」は、ステップアップした頭で、理解しながら読み進めることができるかもしれない。と、成長を、将来の自分に丸投げしつつ、悔し涙を流しながら筆を置く。


参考

⇒正直、この本が「数学」というジャンルに分類される意味を自分は理解していませんが、東京大学出版会のHPでは、「数学」にカテゴライズされています。

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2017-09-16 Sat

[]物語の舞台と込みで小説を楽しむ〜宮部みゆき本所深川ふしぎ草紙』

本所深川ふしぎ草紙 (新潮文庫)

本所深川ふしぎ草紙 (新潮文庫)


宮部みゆき著作を読むのは、20年ぶりくらいかもしれない。

『龍は眠る』『火車』『ステップファザー・ステップ』『パーフェクト・ブルー』などの初期作は結構読んでいたが、その後、全くタイミングが合わず読まないままとなっていた。

そして、今回は久しぶりというだけでなく、時代小説


SFと並び、自分にとってはなかなかハードルの高いジャンルである時代小説だが、今回重い腰を上げたのには少し理由がある。

詳細は省くが、9月末頃のタイミングで、(縁もゆかりもない)江東区付近の歴史について説明をしなくてはならないことになってしまったのだ。

ということで、急遽、タブレットでは、アニメ鬼平』を見て、イヤホンでは落語を聞き、そして、読書は、本所深川を舞台にしたこの本を読んで、地域の生活を身に沁み込ませている。


さて、本の感想。

近江屋藤兵衛が殺された。下手人は藤兵衛と折り合いの悪かった娘のお美津だという噂が流れたが……。幼い頃お美津に受けた恩義を忘れず、ほのかな思いを抱き続けた職人がことの真相を探る「片葉の芦」。お嬢さんの恋愛成就の願掛けに丑三つ参りを命ぜられた奉公人の娘おりんの出会った怪異の顛末「送り提灯」など深川七不思議を題材に下町人情の世界を描く7編。

まさに、この惹き文句でいう「下町人情の世界」を存分に味わえる本。

上で紹介されている「片葉の芦」が殺人事件を題材にしており、この話も含めた全7話は、いずれも「回向院の茂七」という探偵役が登場するので、江戸時代を舞台にした「ミステリ」なのかと思っていたが、そうではない。やはり「人情もの」としか言いようの無いバランス。面白過ぎない。

つまり、「問題解決」よりも、親子関係や恋愛関係など「人情」が、一番最後に残るというバランスになっている。解かれるべき謎は、「誰が犯人か」ではなく、「AがBのことをどう思っていたか」という部分で、結果として、茂七の「探偵」としての存在感も控え目になる。

アニメ鬼平』も同様で、もう少し通常のエンタメ寄り(ということは「問題解決」より)ではあるが、やはり「人情もの」としての側面が強い。


でもって、今回、この文章を書くために、読後1週間経ってから少し読み返したが、全く憶えていないことに驚いた。(笑)

「人情もの」というジャンルが同じだけあって、落語鬼平、そしてこの本と固め打ちした関係で話がどれがどれだか分からなくなってしまったのだった。


特に、第六話「足洗い屋敷」は、美しい義母が実は…という話で、あれ、これは鬼平で見た話では…?と勘違いしてしまうほど、ビジュアルイメージが頭に残っていた。(よくよく考えてみると、平蔵と左馬之助の初恋の人・おふさが久しぶりに会ってみると…という「本所・桜屋敷」(アニメ鬼平』第2話)とイメージが重なったのだった)

それ以外では、第五話「馬鹿囃子」。

最近、市中を騒がせている「顔切り」。満月の夜の度に犯行を重ね、最初は麻布、次は四谷、駿河台、どんどん東に移動して、とうとう大川を越えて両国へ。次は…という満月の夜に、主人公の「おとし」は最近動きの怪しい婚約者・宗吉を思って堅川を渡り、そして、小名木川橋で事件が起きる。

この流れが、今回、目的としている、実際の場所を想像しながら本を読む、という趣旨に合っていて良かった。

関連して、こちらのHPでは、宮部みゆき時代小説の舞台が分析されていて、とても楽しい。こういう楽しみ方ができるようになる、というのが、今の自分の、時代小説を読むモチベーションだ。

宮部みゆき作品 お江戸お徒歩日記


なお、第五話と第四話では共通して「足入れ」という風習を題材にしており、これを批判的に見る茂七の考えも含め、この時代の文化を感じることができた。

ある娘を正式の嫁として迎える前に、短いあいだでもまず一緒に暮らして、家風に合うか、働きぶりや気性はどうかなどを見る、いわば試しの期間を設けることを「足入れ」というのである。

茂七自身は、これは感心しないやり方だと思っている。うまくいった場合はいいが、なにか不都合だと理由をつけられて縁談が壊れてしまった場合に、娘の受ける心と身体の傷が大きすぎると思うからだ。p118


宮部みゆき時代小説は、次は、先ほどのHPにも場所が載っており、評価の高い『ぼんくら』あたりでしょうか。茂七の登場する『初ものがたり』あたりも読みやすそうです。

ぼんくら(上) (講談社文庫)

ぼんくら(上) (講談社文庫)

ぼんくら(下) (講談社文庫)

ぼんくら(下) (講談社文庫)

<完本>初ものがたり (PHP文芸文庫)

<完本>初ものがたり (PHP文芸文庫)

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