Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

マイランキング@オリジナル・ラヴ(その3)

1〜10位までについて(過去の日記)

11位『ビッグクランチ』(2000)9th
聴き直してみただけでなく、慎重に、アルバム発表時の田島貴男自身の評価を再度確認した。*1
このアルバムは、「A面、B面の明記」「地球独楽〜地球独楽リプライズのサンドイッチ構成」によって、かなりコンセプトアルバム的な制作意図が見え、しかもかなりの部分で成功している。
それだけでなく、一曲一曲もよくできている。これぞ田島貴男という凝り性な楽曲「地球独楽」は、個人的には、かなり好み。また「ショウマン」みたいな名バラードもあり、攻撃的な「女を捜せ」「ダブルバーガー」も面白い。あと、実は「液状チョコレート」が大好き。誰も頷かないだろうが、椎名林檎「浴室」「ストイシズム」*2に雰囲気が似ている。
というわけで、実は好きな曲が多い。
それでは何故、このアルバムの評価が低いのか?理由は3つある。
1)苦手曲が多い
2)コンセプトアルバムとして完成度が高いが、そのコンセプト自体が嫌い
3)期待が大きすぎた
まず、苦手曲を具体的に挙げる。*3

  • 「愛の薬」:暗い。僕の記憶では当初、シングルは「愛の薬」で決まっていたような田島のコメントがあったように思うが、感覚がわからない。田島は寺尾聡の名を挙げるが、寺尾聡をオリジナル・ラヴに求めていない。
  • 「R&R」:で、シングル「愛の薬」がお流れになって出たシングルが「R&R」だったと思う。眉にラメが光るお馬鹿ビデオ(笑)。ライヴでは盛り上がれるが、プレスリーも好きじゃないし、楽曲自体が好みじゃない。*4
  • 「MP」:歌詞がダメ。曲もイマイチ。
  • 「殺し」:全部ダメ。オリジナル・ラヴの楽曲全ての中でも一番嫌いな曲かもしれない。アルバム全体の雰囲気ともそぐわないと思う。
  • アポトーシス」:名曲だと思う。「地球独楽リプライズ」までのつながりを含めて。ただ、サビの部分の歌詞の意味が分からない。「アポトーシス」という言葉をサビで歌う必要があるのか疑問。

低評価の2つ目の理由、アルバムのコンセプトについてだが、「セックスサファリ問題OK」などに代表される退廃的な世界観がダメ。あと、言葉が適切かどうかわからないが、不真面目な印象を受ける。そういう曲がアルバム全体の印象を決めてしまうほどの多数を占めているところがバランスの悪さを感じる。
風の歌を聴け』のいいところは、楽曲全体から、生きることの喜び、感謝の気持ちが伝わってきて、聴く側が元気な気持ちになれることだ。*5しかし、この『ビッグクランチ』の持つベクトルは全く逆。勿論、アルバムジャケットで「ちゃぶ台をひっくり返している」天の邪鬼な田島の、今までの自分っぽくないことをやってやろうじゃないか、という気持ちもあったのだろう。

田島)そのイメージは、ヒット曲「プライマル」のイメージだと思うんですよ。バラード歌手 田島っていうね。でもそれはオリジナル・ラヴの音楽性のごくごく小さな一側面を極端にクローズ・アップしたイメージに過ぎない。そういったイメージが、僕の音楽活動を硬直させてゆくことって実際にありえたんですよ。今回のアルバムはオリジナル・ラヴが結成当時からグツグツ煮つめてきた音楽性を爆発させただけなんです。バラード歌手のイメージは誤解です(笑)。

つまり、『ビッグクランチ』は反「オリジナル・ラヴ」を貫きすぎて聴きづらい。特に、僕にとって致命的なのは、「歌いたい」と思う歌がほとんど無い。(「ショウマン」くらいか)
また、ビートルズの『Sgt.Peppers』のように「地球独楽」「地球独楽リプライズ」で挟んだ構成の外側に「決め」の一曲を持ってくるのはわかるが、個人的には、それが「R&R」では「決め」にはならない。
というわけで、以上のような理由から、このアルバムは気になる点が多い。それだけでなく、傑作『L』のあと、だいぶ時間を置いてから発表したアルバムで、その間のツアーも最高に盛り上がり、期待が過去最大だったので、辛い評価になってしまった。

イチオシ曲:「地球独楽」「ショウマン」
苦手曲:「殺し」「愛の薬」

12位:『ムーンストーン』(2002)10th
このアルバムが苦手な理由については『ビッグクランチ』と比較すれば、大した説明はいらない。単純に「薄い」。1、2曲目がシングルという構成が好みでないのもあるが、中盤「月に静かの海」「守護天使」「Xの絵画」「哀しいノイズ」が薄い。それぞれ美しいメロディーという評価ができるのかもしれないが、あまり印象に残らない。「ムーンストーン」や「悪い種」「冗談」と比較すると、歌詞のメッセージ性も希薄*6で、4曲一気に聴き流してしまう。
濃すぎてお腹いっぱいな『ビッグクランチ』の反動から、このような内容になったのだと思うが、中盤4曲(と「アダルトオンリー」)以外は好きなだけに残念。

イチオシ曲:「ムーンストーン」「冗談」
苦手曲:「アダルトオンリー」「Xの絵画」

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今回、書いてみて思ったが、やはり『ビッグクランチ』は非常に惜しい点が多い。そこで、こうだったら、『ビッグクランチ』が傑作になったのに、という妄想をここで2ケース。

CASE1:『ダブルバーガーランチ』

  1. 女を捜せ
  2. 地球独楽
  3. ダブルバーガー
  4. セックスサファリ問題OK
  5. ショウマン

3曲目「愛の薬」を、美味しくてお得な「ダブルバーガー」に差し替えて、前半5曲だけでミニアルバムに。元のアルバムは「びっくりランチ」っていうくらいだから分量が多くてお腹いっぱいになるので、分量を半分に抑えて食べやすく調整。

CASE2:『ディスカバリー

  1. 女を捜せ
  2. 地球独楽
  3. セックスサファリ問題OK
  4. ショウマン
  5. ダブルバーガー
  6. 大宇宙冒険王
  7. 液状チョコレート
  8. アポトーシス(サビの歌詞の変更希望)
  9. 地球独楽リプライズ
  10. R&R
  11. ムーンストーン

まず、A面B面構成には拘らず、(僕にとっての)苦手曲をなるべく廃した(笑)。『ビッグクランチ』とは正反対の青いメッセージ・ソング「冒険王(single)」のリミックス「宇宙冒険王」をさらに馴染むようにアレンジした「大宇宙冒険王」*7を大胆にフィーチャー。ラストは「R&R」では物足りないので、稀代の名曲「ムーンストーン」を入れてポジティブなメッセージ性をさらに強めた。「収束」を意味する「ビッグクランチ」は好みでないので、地球〜宇宙(〜月)を往復するスペースシャトルの名称と、田島貴男にとっての転機(発見)のアルバムという意味を込めて。

CASE3:『月見バーガーセット』

  1. 女を捜せ
  2. 地球独楽
  3. ダブルバーガー
  4. 液状チョコレート
  5. ショウマン
  6. 夜行性
  7. GLASS
  8. 悪い種
  9. 冗談
  10. ムーンストーン

CASE1の発展形。苦手な2枚のアルバムのいいところ取りして1枚にしてしまえばいいのではないかという短絡的発想に基づく。A面「バーガー編」B面「月見編」。

*1:http://www.ne.jp/asahi/original/love/discography/album/9th.htmlから飛べるラジオ盤組バーストでの田島自身の全曲解説。今回の企画に取り組むにあたって、アンオフィシャルをだいぶ参考とさせてもらいました。充実しすぎている内容に感謝。

*2:どちらも2nd『勝訴ストリップ

*3:完全に個人的な感覚に基づいたものです。不快に感じられた方、すみません。

*4:オリジナル・ラヴにとって転機となった重要な曲だと思うので、こういう言葉を書くのが申し訳ないです。

*5:中村一義のアルバムに共通する感覚。歌詞だけがその要因ではないと思う。

*6:希薄というのは内容だけでなく、何度聞いても「耳に入ってこない」という意味を含む。

*7:宇宙冒険王はシングル「冒険王」に収録されていますが、「大宇宙冒険王」は、嘘なので悪しからず。