- 作者: さそうあきら
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2003/12
- メディア: 文庫
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音楽はそれ自体が計れないほど大きな力を持った表現です。
しかし、発信された音楽にむかって傾けられた耳がないとその表現は死んでしまいます。『神童』の中で僕は音楽を耳の問題として表現しようと思いました。
どういうふうに耳を傾ければ音楽が音楽として聞こえてくるのか?
音楽を音だけではなく、絵だけでもなく、エピソードとして表現すること。それが僕の考えた方法でした。
しかし、僕は音楽について何かを人に語るほど音楽を大切に扱ってきたわけではありません。描き進むにしたがって、僕の中には今まで散々無駄にしてきた音たちが後悔の念とともによみがえってきました。
主人公=うたに教わることは、作者である僕にとっても少ないものではなかったのです。
うた、そしてこの作品を支えてくれた皆さん、本当にありがとうございました。
久しぶりに読み返した*1ら、やっぱり傑作でした。とにかく未読の人には、是非とも、オススメの作品。
主人公の天才少女うた(小学生)と、大学生の和音が、出会い、音楽的にも人間的にも成長して行く物語。冒頭でも書かれているように、音楽をエピソードとして表現する、という目的は明確に果たされていて、特に好きなのは、赤ん坊のときから常に一緒にいたグランドピアノ(ハンブルグスタインウェイ=愛称“スタちゃん”)との別れのシーン。
母子家庭のうたの家に押し寄せた借金取りがピアノの梱包を終え、トラックに積み込む直前に「最後に一曲だけ弾かせて」とお願いするうた。青空のもと、アスファルトの上に置かれた“スタちゃん”を弾くうた。街に流れるピアノの音に、道行く人は足を止め、自然と涙する、そのシーンは、非常に印象的です。
ここも含めて、映画素材として魅力的な要素が多いので、きっと…と思ったら。やっぱりありました。レンタルできれば、是非、見てみたい。
⇒13歳の成海璃子と松山ケンイチによる『神童』
- 出版社/メーカー: VAP,INC(VAP)(D)
- 発売日: 2007/11/21
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物語も後半の文庫3巻になってから、うたは、巨匠ピアニスト、ロブコウィッツの代演をきっかけに、クラシック界の新星として活躍することになりますが、その後、突然のアクシデントからスランプに。このスランプを抜け出してラストでは、戻ってきた“スタちゃん”とともに復活を果たしますが、復活のきっかけ(ここではネタばれを避けるため書きません)も納得感があり、非常に興味深いです。
ギャグ演出も光り、楽しく読めて、あとにも確実に何かが残る作品で、趣味を問わずいろいろな人にお勧めできる作品です。文庫3巻完結で無駄なエピソードが全くないのも素晴らしい。
もう一度言いますが未読の人は是非!