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2014-10-18 Sat

[]映像化を希望したい“男VS蜂”のガチンコ対決貴志祐介『雀蜂』

雀蜂 (角川ホラー文庫)

雀蜂 (角川ホラー文庫)

自分にとって安心して読めるエンタメ作家ということで信頼感のある貴志祐介

ただ、今回は既に読んだ人が酷評していたので、少し用心しながら読み始めて一気に読了。


感想を一言で言えば「十分面白かった!…でも、これ、貴志祐介かなあ?」


タイトルは何かの比喩かと思いきや、まさにそのままスズメバチに襲われるホラーで、シチュエーション的には、狂犬病にかかったセントバーナードに襲われるキングの『クージョ』を思い出させる展開。

11月下旬の八ヶ岳。山荘で目醒めた小説家の安斎が見たものは、次々と襲ってくるスズメバチの大群だった。昔ハチに刺された安斎は、もう一度刺されると命の保証はない。逃げようにも外は吹雪。通信機器も使えず、一緒にいた妻は忽然と姿を消していた。これは妻が自分を殺すために仕組んだ罠なのか。安斎とハチとの壮絶な死闘が始まった―。

裏表紙あらすじ)


二度目に刺されるとアレルギー反応によって最悪の場合死に至るという、いわゆるアナフィラキシー・ショックがテーマになっているのだが、ありそうでなかった小説かもしれない。

自分はスズメバチに刺されたことは無いと思うが、子どもの頃だけでなく、大人になっても、色んなところで刺されそうになったり、また家の近くにでかい蜂の巣を見つけたり、などと、身近な昆虫だけにやや警戒している。

そんな中、今回、アナフィラキシー・ショックで症状が重篤化しないためには、給食のアレルギーの問題でよく名前を聞いた「エピペン」が有効だということが分かった。また、スズメバチと対峙した場合や、室内でスズメバチの大群に襲われた場合(笑)の対処方法について知ることができて、結構、実用的だった。


さて、思い出話や、自分をこの状況に陥れたに違いない妻の話を挟みながら、物語の8割はスズメバチと主人公の小説家との対決のみで話は進むのがこの物語の最大の魅力*1

しかし、後述するポイントと「主人公が小説家」という設定が合わさってしまっていることが、この魅力を大きく減じている。

当初は『クジョー』×『ミザリー』なのかな?等、色々と考えもしたが、登場人物が主人公だけで、この小説家の独白で話が進むので、どうしても、これはアレだよね、あのパターンだよね…と思って読んでしまう。自分は、当初からこの手の展開の情報はなるべく伏せておきたいので、今回も裏表紙は読まないでいたのだが、さきほど引用したあらすじの下にはこう続く。


最後明らかになる驚愕の真実。ラスト25ページのどんでん返しは、まさに予測不能!


はっきり言ってこれは不要。

この惹き文句を知ってから読み始めてしまうと、そこにばかり目が行ってしまい、この小説の一番の見どころである、男VS蜂のガチンコ対決の部分を見過ごしてしまう。

自分は、それを知らずに最後まで読み通したので(相当に強引な展開ではありましたが)なかなか楽しめたけど、「予測不能!」とか本当に興醒め。こう書かれている割には、主人公の設定のせいで十分想定の範囲内で、角川ホラー文庫の担当者を小一時間問い詰めたい気持ちでいっぱい。貴志祐介の新作小説というだけで十分売れるはずなのに、なんでこういうテレビ番組みたいな煽りを入れるのか理解しがたい。


ということで、面白かったけど、貴志祐介の小説としてはどうだろうか。

貴志祐介は実は初期作しか読んでいなくて、近年の代表作が未読だけれども、もう少し作中の登場人物に感情移入したり、圧倒的な嫌悪感を抱きながら、作中世界にどっぷり浸かれるのが貴志祐介の作品の魅力だったように思っていた。

しかし、今回は、どんでん返しを意識しすぎて、登場人物が「コマ」のように配置されている感じがしてしまって、人間的な魅力に欠けるように思う。(勿論、問題の箇所は、貴志祐介ではなく作中の小説家の書いた拙い文章だから、という言い訳もあるのかもしれないが…。)

ただ、動物との対決ストーリーは面白かったので、『クージョ』も読み返してみたいし、ジョーズピラニアみたいなベタなパニックものも読んでみて、何かの時のために危険動物との対決に備えたい。まずはこれ↓を読んでおこう(笑)

危険動物との戦い方マニュアル (「もしも?」の図鑑)

危険動物との戦い方マニュアル (「もしも?」の図鑑)


参考(関連作品、過去日記)

キングの作品をそんなにたくさんは読んでいないけど、『クージョ』はすごく印象に残っている。でもラストを忘れてしまっている(!)ので読み直したいです。あと、映画の方はタイトルが『クジョー』だけど、こちらはどうなんだろうか。(もしかして空条承太郎の苗字って、この小説から来ている?)

クージョ (新潮文庫)クジョー [DVD]


あと、『ミザリー』は、小説だけでなく、映画を見直したいですね。

ミザリー (文春文庫)ミザリー<特別編> [DVD]


貴志祐介は、読みたい読みたいと思いながら代表作2作を読んでいません。『悪の教典』は、やはり小説→映画の順に味わいたい。

新世界より(上) (講談社文庫)新世界より(中) (講談社文庫)新世界より(下) (講談社文庫)

悪の教典〈上〉 (文春文庫)悪の教典〈下〉 (文春文庫)悪の教典 DVD スタンダード・エディション


青の炎』あたりが、登場人物の人間的魅力が素晴らしかったように思います。でも忘れた(笑)映画は未見ですが、これも評判いいですよね。

青の炎 (角川文庫)青の炎 特別版 [DVD]


このシリーズも先を読まねば。

個人的「鉄板」作家の満足度の高いミステリ〜貴志祐介『硝子のハンマー』2011年9月)

*1:この対決部分が冗長だとか、戦い方が理に適っていない、みたいな批判Amazon評でなされているが、パニックに陥った主人公の行動としては、むしろ、その雰囲気の伝わる巧い展開のように思いました。

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