Yondaful Days!

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これこそ唯一無二の奇書〜泡坂妻夫『しあわせの書』

しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 (新潮文庫)

しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 (新潮文庫)

用事があって厚木に行ったときに寄った有隣堂で、何故か最新の文庫の隣りに平積みになっていて、これは、今読むべきだという天の声を感じた。泡坂妻夫の凝った作品として有名な『生者と死者』の方も隣に置いてあったが、あちらは、「特殊な本」であることが、本屋でも一目瞭然だ。
しかし、この『しあわせの書』は、同じく「特殊な本」であることが売りだが、外から見てもどこが特殊なのかよく分からない。そこに逆に惹かれて、ファースト泡坂妻夫は、こちらにしようと決めた。

二代目教祖の継承問題で揺れる巨大な宗教団体“惟霊講会”。超能力を見込まれて信者の失踪事件を追うヨギガンジーは、布教のための小冊子「しあわせの書」 に出会った。41字詰15行組みの何の変哲もない文庫サイズのその本には、実はある者の怪しげな企みが隠されていたのだ―。マジシャンでもある著者が、こ の文庫本で試みた驚くべき企てを、どうか未読の方には明かさないでください。


さて、実際に読んでみた感想だが、これはかなり驚いた。読み飛ばしを全く気にしないよう太は、初読時は、この本の「最大の仕掛け」を読めていなかった。そこで、よう太に、この本の本当の凄さを教えてやると、かなり驚いて、「この作者の人は正気じゃない!」と絶賛していた。
勿論、自分も完全にノーマークの方向からの見えないパンチにノックアウト。普通はこんなことを考えないし、これと似ている本はこれまでに読んだことがない。
ひとことで言えば、これほど「実用的な」ミステリはないと思う。
今後も同様の趣向の小説が出ることはないだろうことを考えると唯一無二の存在。


前述した『生者と死者』も含めたヨギガンジーのシリーズは勿論、他のシリーズも楽しみ。
ちょうど、今年2月にムックも出ているようだし、もう少し読んでみたい作家です。

生者と死者―酩探偵ヨギガンジーの透視術 (新潮文庫)

生者と死者―酩探偵ヨギガンジーの透視術 (新潮文庫)