Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

『おっさんずラブ』映画版に期待すること

おっさんずラブ DVD-BOX

おっさんずラブ DVD-BOX

普段はドラマを全く見ない自分は、本放送は気にはなっていたものの見逃してしまっていた。しかし、Amazonプライム見放題に入ったのを機に観てみると、第1話から一気に引き込まれ、全7回を繰り返し見るほど好きな作品となった。
そこで、この大好きなドラマの何処に自分は惹かれ、映画版に何を期待するかをまとめてみた。

このドラマのキモ

このドラマの面白さのキモがどこにあるかと聞かれたとき、「おっさん同士のピュアな恋愛」を描いていることをまずは誰もが挙げるだろう。
しかし、自分がこのドラマを好きな理由は、ストーリーよりもひとえに黒澤部長(吉田鋼太郎)の表情の変化(声の表情を含む)にある。
黒澤部長が苦しみ悶え、そしてとびきりキュートに振る舞う。そこに引き込まれ、観ている側としても全力で応援したくなってしまう。ストーリーは、その顔芸のお膳立てのためにあるのだとさえ思う。
主人公・春田も、表情の変化が豊かで、おどけたり怒ったり、迷ったり自分勝手に振る舞ったり、いろいろな側面を見せるが、台詞以外に、頻繁にモノローグが挟まりその内面を説明する。しかし、黒澤部長は、表情と声色だけで、心の浮き沈みが強く伝わってくる。(厳密に言うと、黒澤部長のときだけは、街明かりがハートマークになったりする特殊効果がある気はする)
ここは明らかに人間が演じる映像作品の強みで、小説は勿論、漫画でも難しいと思う。
例えば、春田に別れを切り出されるシーン、妻の蝶子にばれたシーン、そして、フラッシュモブからのプロポーズのシーン、すべてのシーンの黒澤部長が愛おしくなる、『おっさんずラブ』はそんなドラマだったと思う。

登場人物全てが好きになれる作品

2018年を代表する映画『カメラを止めるな!』が良かったのは、よく出来たストーリーと構成にあることは間違いない。しかし、何度も見たくなる理由は、登場人物全員を好きになれる映画だからだと思う。『おっさんずラブ』にも同じことが言える。
序盤からずっと好きだった登場人物は、最初に挙げたように黒澤部長だが、ちず(内田理央)は、中盤以降、大好きになり、とにかく肩入れして観て、告白シーンには泣いた。
ただし、ちずに対する想いはやや複雑だ。物語としては、ちずの気持ちは片思いで終わるべきだからだ。幼馴染の男女である春田とちずが付き合うのは流れとして自然だが、観ている側も含めて傷つく人が多過ぎる。でも、ちずの想いが成就して欲しい。
そう思わせるのは、内田理央という女優の上手さなのかもしれない。ラストで、とりあえずの幸せを掴んだように見えるちず。好きなキャラクターだけに、あの終わらせ方は少しぞんざいな感じもしてしまったのだが…。


ちずだけではない。 最初は、「その他の登場人物」だった 武川主任に対しても、鉄平兄に対してもの、回が進むにつれて好意を抱くようになる。中でも面倒くさい後輩だったマロと蝶子(黒澤部長の妻)は、最終話では大好きなキャラクターになった。

春田フラフラ問題

ただ、観たほとんどの人が感じると思うが、登場人物の中で唯一、春田に対しての評価は、終盤に大きく下がることになる。
「分からなかった自分の気持ちに気づいていく」というタイプの話は自分は好きだ。(特にBL)しかし、春田については度が過ぎる。相手が男でも女でも、結婚式当日に、結婚を約束した相手以外への想いに気が付く、というのは酷いとしか言いようがない。
春田が牧と結ばれるラストは、物語的にはもっとも納得のいく着地点だが、もっと黒澤部長やちずのことを傷つけずにそこに辿りつくラストは無かったのかと思ってしまう。


なお、ここまで書かなかったが、牧(林遣都)は、その気持ちが一貫していて、むしろ、こちらを主人公として観たいくらいだ。自分の中では「応援したい度」は、黒澤部長とちずの次になってしまうが、だからこそ、ドラマのラストはとても良かった。

映画版に期待したい展開

公式HPには映画について次のように書かれている。

キャストはドラマ版と同じメンバーが全員続投!田中圭吉田鋼太郎林遣都の3人やお馴染みのレギュラー陣に加え、超豪華ゲスト俳優の出演も予定!?ドラマ版のその後のストーリーを描きます。
HappyHappyWeddingを迎えたはずの男たちに恋の嵐がまたもや吹き荒れる!?そこに新たなおっさんも参戦なのか・・・・!?“平成最後の純愛ドラマ”が、スクリーンでも熱い恋の火花を散らします!

さて、普通に考えれば本編と同様に春田を中心とした恋模様が描かれることになるが、ここまで書いてきたドラマの面白いところと問題点、そして最終回からすると、春田がまたフラフラして牧と別れてしまうような展開は、さらに春田に対する視聴者の嫌悪感が増してしまうだろう。
それは作中の登場人物にとっても同じで、春田が同じことを繰り返してしまうと、「また、春田か…」と呆れてしまい、その恋の行方を真面目に案じてくれる人は出てこないだろう。

と考えると、映画版で描かれるのは、黒澤部長の恋愛が中心になる。
黒澤部長が新キャラクターに対して恋をする。それであれば、蝶子や武川など、サブキャラクターも部長の恋愛を応援するし、観ている側も応援できる。
そこに、春田−牧のカップルのイチャイチャ&いざこざを絡めて描かれる映画であれば、もう誰も傷つかずに安心して物語を楽しく観ていられる。
つまり、本編の面白さとは完全に別の楽しさを持った作品を、映画版は志向すべきと思う。
などと書きつつ、映画版には大いに期待しています。
是非笑って楽しく見られる、そして登場人物みんあが幸せになれる映画を!