Hatena::ブログ(Diary)

蛇足頭脳流出 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2016-02-03

[][]悪の女幹部趣味パ「グレート・ルナリアム」暫定版の紹介 19:41 悪の女幹部趣味パ「グレート・ルナリアム」暫定版の紹介を含むブックマーク

 皆様御存知の通り、私は『戦姫絶唱シンフォギア』シリーズが大好きです。従って、吉井ダン繋がりで、ルネの『悪の女幹部 フルムーンナイト』リンク先18禁注意)に興味を持つのも必然だと言えましょう。当初、私はルネといえば『戦乙女ヴァルキリー』シリーズくらいしか知らず、陵辱ゲームブランドの有名どころという雑な認識しか持ち合わせていませんでした。私自身、陵辱ゲームというジャンルは苦手でありまして、シルキーズの『姫騎士アンジェリカ〜あなたって、本当に最低の屑だわ!〜』くらいしか真面目にプレイしたものは挙げられないほどでありますので、『悪の女幹部』に手を出すのは正直躊躇いがありました。しかし、体験版をプレイしてみるとこれが本当に面白く、魅力的なキャラクターやシナリオに打ちのめされてしまいました。私は即座に製品版の購入を決意しました。これが2014年5月中旬の話です。

 それから暫くしても、『悪の女幹部』のキャラクターへの愛着をなかなか忘れることができなかったため、私は当時少しずつ始めていたポケモン育成と絡めて、自分が女幹部たちを使役するボスとして振る舞うことを考えました。6人の女幹部と同じニックネームをつけたポケモン6体で「悪の女幹部趣味パ」を構築する。それが私の目標となりました。

 そして、どのポケモンを各女幹部にあてるか、という悩ましい問題と向き合うことになりました。原案は次の通りです。

 しかし、悪統一パは意外にもポケモンの選択肢が少なく、悪統一パとしての完成度と「悪の女幹部趣味パ」の満足度を両立することは非常に難しいということが分かりました。(勝手な話ですが)私の中での各女幹部イメージに合致するポケモンが悪タイプには少ないのです。私はタイプ統一の限界という壁に突き当たりました。

 結局、仕事の忙しさや他の娯楽との兼ね合いを言い訳にして、「悪の女幹部趣味パ」の育成は棚上げとなり、2015年6月まで停滞期が続くことになりました。

 転機は、ミルタンク♀をダイヤナにあてがうというアイディアが浮かんだときでした。この時点で完全に悪統一パというコンセプトは崩壊していましたが、それはもはや気になりませんでした。

 以上のような諸々の葛藤を経て(ここに掲げた葛藤はほんの一部に過ぎませんが)、2015年9月にようやく「悪の女幹部趣味パ」のプロトタイプが完成しました。まだまだ改良の余地はありますが、個人的には納得しています。次の目標はこの趣味パでバトルハウス攻略(各モードでの50連勝達成)を進めることなのですが、私の腕(や個体値の妥協)の問題もあってなかなかうまくいきません。ぼちぼち頑張ります。

 以下、「悪の女幹部趣味パ」の面々を紹介して、このエントリを締め括りたいと思います。当然ながら全員♀です。従って、♂タイプの「メロメロ」や特性「メロメロボディ」にはめっぽう弱いです。こればかりはどうしようもないな……。原作のキャラクター造形や設定などはこちらリンク先18禁注意)を御覧ください。

「パーフェクト・メイデン」ルナテミス(サーナイト

f:id:rasiel9713:20160203190245j:image

f:id:rasiel9713:20160203190227j:image

タイプ:エスパーフェアリー

特 性:トレースフェアリースキン

性 格:ひかえめ

努力値:H236 C214 S60

持ち物:サーナイトナイト

技  :ハイパーボイスサイコショック10まんボルト/かげうち

「月影流忍術正統」カグヤ(ゲッコウガ

f:id:rasiel9713:20160203190328j:image

f:id:rasiel9713:20160203190324j:image

タイプ:みず/あく→かくとう or どく or こおり or あく

特 性:へんげんじざい

性 格:おくびょう

努力値:A252 C6 S252

持ち物:いのちのたま

技  :けたぐり/ダストシュート/れいとうビームあくのはどう

「狂魔元帥」エファナチカ(サザンドラ

f:id:rasiel9713:20160203190419j:image

f:id:rasiel9713:20160203190413j:image

タイプ:あく/ドラゴン

特 性:ふゆう

性 格:ひかえめ

努力値:C252 D6 S252

持ち物:じゃくてんほけん

技  :りゅうせいぐんだいもんじあくのはどういわなだれ

「獣狼拳」セレーナ(ルカリオ

f:id:rasiel9713:20160203190432j:image

f:id:rasiel9713:20160203190429j:image

タイプ:かくとう/はがね

特 性:せいしんりょく

性 格:いじっぱり

努力値:H6 A252 S252

持ち物:きあいのタスキ

技  :インファイトしんそく/じしん/つるぎのまい

  • 「悪の女幹部趣味パ」なのに格闘タイプというブレブレっぷりだが、月狼族の族長というセレーナの外見的にはハマっているのではないかしら。クレセントムーン階級らしく、そこそこの実力に仕上がった気がする。理想個体のリオル♀がとにかく産まれず、難儀した割には使い勝手が悪く、愛情だけで育てた感がある。
  • メガシンカ枠を姫様(サーナイト♀)に使ってしまったため、メガルカリオとしての運用ができない。そこで第6世代の環境としては珍しく、「きあいのタスキ」型で育成することにした。今度ヘカテリーナリンク先18禁注意)を育成する機会があれば、メガルカリオ型にしようかと考えている。
  • メガシンカしないため、S種族値90+紙耐久のまま。微妙なS種族値と紙耐久を補うために「きあいのタスキ」を持たせているが、「まきびし」や「ステルスロック」といったHP削り工作や天候技の「あられ」などで「きあいのタスキ」は容易に潰されてしまうため、正直なところシングルでの運用はかなり厳しい(砂嵐状態には強いけれども)。その反面、ダブル・トリプルでの後半戦では、物理アタッカーとしてかなり活躍できているという印象。
  • つるぎのまい」が積めれば(まずシングルでそんな余裕はないが)、最強の先制技「しんそく」によって数多くの相手を葬り去ることができるようになる……はずなのだが、現実はそう甘くはない。
  • 格闘バカキャラを演出するために「インファイト」ではなく「とびひざげり」を採用する予定だったが、遺伝作業が面倒になってやめた。
  • 当然ながら「おにび」で機能停止する。

「幽世に嗤う」オボロ(ブラッキー

f:id:rasiel9713:20160203190443j:image

f:id:rasiel9713:20160203190438j:image

タイプ:あく

特 性:シンクロ

性 格:ずぶとい

努力値:H252 B252 S6

持ち物:ゴツゴツメット

技  :イカサマ/どくどく/つきのひかり/いやしのすず

  • 月兎族出身のクレセントムーン階級ということで、ブラッキー♀をあてがった。直接的な戦闘力は低いが、霊符や式神を操ることには長けているという、頭脳戦を得意とするオボロを意識した技構成にしたが、育成してみたら適当に使っていても強い特殊受けメンバーになってしまった。
  • 「つきのひかり」は月兎族のイメージにピッタリ合致する強力な回復技。回復量が天候に左右されるのが難点だが、それにしたって強力。「いやしのすず」はパーティ全体の状態異常を回復できるため、とにかく重宝する。決定力不足の相手を「どくどく」で削って倒すのが、オボロらしくて楽しい(ただし、ツボツボユレイドル相手だと泥仕合になる)。
  • 特性「シンクロ」のおかげで、毒・麻痺・火傷状態を相手にも移せるのが強み。「どくどく」を受けると機能停止するが、「いやしのすず」があるため、(毒タイプや鋼タイプの相手を除いては)立ち回り次第でこちらだけが状態異常から抜け出ることもできる。
  • 攻撃力の低さは「イカサマ」でカヴァー。第6世代で鋼タイプに悪技が等倍で通るようになったので、汎用性も高まった(エファ様の「あくのはどう」同様)。
  • ゴツゴツメット」を持たせることで、物理アタッカーを「イカサマ」で狩りやすくなる。カビゴンガルーラを簡単に落とせることもある。相手が「つるぎのまい」などを積んでいる場合も、うまくタイミングが合えば「イカサマ」の餌食にできる。
  • フェアリータイプ(特にクレッフィ)には有効打がない。ニンフィアの「ムーンフォース」なども割と危険なので、耐久力の過信は禁物。
  • オボロを出すと対戦時間がとにかく長くなるため、サクッと勝負したい時には使うこちらも苛々してくることがあるが、そこもオボロの魅力ということで。

「ハイグレード・ダイヤモンド」ダイヤナ(ミルタンク

f:id:rasiel9713:20160203190454j:image

f:id:rasiel9713:20160203190451j:image

タイプ:ノーマル

特 性:きもったま

性 格:いじっぱり

努力値:A252 D6 S252

持ち物:シルクのスカーフ

技  :のしかかり/じしん/ほのおのパンチ/ミルクのみ

  • 当初は炎技に引きずられてヘルガー♀をあてがっていたが、キャラクターイメージも合わないし実用性もないということで、ミルタンク♀をあてがうという「乳キャス」に切り替えた。ダイヤナちゃんといったら、やっぱりおっぱいなんですよ。
  • S種族値100という意外にも高い数値のおかげで活躍の場は多い。相手に先手を取られるようでも、「のしかかり」で麻痺させることができれば勝ち筋が見えてくることも。特性「きもったま」のおかげでゴーストタイプにも「のしかかり」が当たるので、無対策の相手にはかなり有効。
  • ORASでの教え技解禁により「ほのおのパンチ」を楽に習得できるようになった。この採用は炎技を使うダイヤナちゃんに合わせたものでしかなかったが、無対策のハッサムを稀に落とせたりするので、使い道がないわけではなかったようだ。
  • 「ミルクのみ」で素早く自己回復できるので、決定力不足の相手には強く出られる。対戦相手が画面の向こう側で「こんな雌牛にやられるなんて……」と歯軋りしている様子を想像すると楽しくなる。
  • 流石に格闘タイプを正面から相手するには不安が大きいが、幅広い相手を狩っていけるので、クレセントムーン階級にしておくには惜しい出来となった。

 さて、今後も「悪の女幹部趣味パ」については改良・微調整、ならびに戦術・立ち回りの研究を続けていくのは勿論のことですが、『悪の女幹部2〜キサマなどに教育されてたまるかっ!〜』リンク先18禁注意)のキャラクターをモチーフとした「悪の女幹部趣味パ」第2弾・ブラックメルヘンについても、育成・調整を進めていきたいと考えています。しゅらひめ(バンギラス♀@バンギラスナイト)ハルカプトラ(デスカーン♀@たべのこし)については育成・調整済ですが、グリムロックサイレーン、バッケンハンター、バッケンローダーについてはどのポケモンをあてがうかというところから決めかねており、まだまだ先は長そうです(あてがうポケモンの案などがありましたら教えていただけると助かります)。なお、しゅらひめ(バンギラス♀)については色違いだったらイメージ的にも最高なのですが、色違いまで粘ると気が遠くなりそうなので妥協しています。

2015-12-28

[]C89『声ヲタグランプリ』Vol. 16が出ます(29日・東“ペ”05b) 21:22 C89『声ヲタグランプリ』Vol. 16が出ます(29日・東“ペ”05b)を含むブックマーク

f:id:rasiel9713:20151228223521j:image

 皆様こんにちは。2015年ももうすぐおしまいですね。やはり、年末と言ったら冬のコミックマーケットでしょう(まぁ、私自身は帰省の関係で一度も冬コミに行ったことがないのですけれども)。谷部 (id:tani-bu) は今回もコミックマーケットサークル参加します。なんと表紙はVol. 14に引き続き、フルカラー印刷です! すごい! 表紙は同人誌の内容を担保するものではありませんが、これは買いです。内容は以下の通りです。

特集 声ヲタクリスマスアワードを振り返る

企画開始10周年! そのとき私はまだ中学生だったんだが!?

声優アワード」に先駆けて声ヲタ有志の間で始まった「声ヲタクリスマスアワード」11年分のデータを全て公開します。温故知新の座談会、必見です!


新人声優リヴュー

「おいおい!」なあの新人も登場するかも?


2015年下半期声優アニメリヴュー

ガチ論考、イベントレポ同然の原稿、のろけ原稿、下ネタ……。編集部の方で比率を調整しているわけではないのですが、集まってみるとちょうどいい塩梅になる。それがこえぐら!


声ヲタお悩み相談所

「なんか、地獄絵図だな……」「今回は怖い案件が多かったね」(本誌より抜粋)

 私は今回、特集座談会とお悩み相談所のパネリストとして参加しているほか、『オーバーロード』『GATE』『モンスター娘のいる日常』の3本を寄稿しています。通底するテーマは「後ろめたさの感覚/意識」です。なお、『モンスター娘のいる日常』リヴューは、今年8月に公開した「『モンスター娘のいる日常』を声優アニメとして観る前に」の実質的な続編となっております。こちらも併せて、お楽しみいただければ幸いでございます。

 ブースは12月29日・東“ペ”05bです。しっかりと防寒と風邪対策をしてお越しください。よろしくお願いします!

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/rasiel9713/20151228

2015-11-09

[]創作と偽史のあいだ――ある事例に見る歴史修正主義の陥穽(コメント欄に追記あり) 19:05 創作と偽史のあいだ――ある事例に見る歴史修正主義の陥穽(コメント欄に追記あり)を含むブックマーク

 皆様こんにちは。ご無沙汰しております、Rasielです。今回のエントリは声優アイドルにまつわる話題ではなく、歴史についての(少し堅めの?)話題です。

 さて。Googleとは恐ろしいもので、先日「カール大帝 ヒルデガルト」で検索をかけていたら、たまたま次のページを見つけてしまいました。

 http://hidexhirax.hatenablog.com/entry/2015/06/29/234249

 http://hidexhirax.hatenablog.com/entry/2015/06/30/235531

 このブログや筆者が何なのかは存じ上げませんが、少なくともこのエントリには言葉を悪くすればデタラメが数多く含まれています。私はカールの時代の国制や教会、ひいては神学に関心があり、ほんの少しですが勉強しているので、このエントリに書かれていることに対する反証を書かせていただきます。趣旨は「カール大帝」その他で検索をかけた時に、こうしたデタラメが引っ掛かるというのは問題だと感じるので、一介の私ではありますが訂正を試みたいということです。その際、多くの人のアクセスの便宜を考えて、なるべく日本語文献を典拠として挙げたいと思います。

 以下、適宜元エントリを引用しつつ議論を進めていきます。まず、カールについては次のような記述から始まっています。

ところでカール1世(=大帝)(742年生)は、5回結婚し、且つ多くの愛妾を持ちました。王の役目は子孫繁栄。子どもや妻、愛妾の多さは一族の争いも招く事も多々ありますが、王の血を継ぐ者が少なければ国家衰亡を招きます。

http://hidexhirax.hatenablog.com/entry/2015/06/29/234249

王の役目に関する(勝手な)想像はご自由にという感じですが、ここで気になるのはカールの生年を742年としていることです。この点に関しては調査不足もやむをえないのかもしれませんが、実は近年になって、カールの生年は747年ないし748年だったのではないかという見解が主流になっています。カールの父ピピンと母ベルトラーダの婚姻は744年ないし749年に成立したと考えられており、カールの出生を742年とすると彼は私生児ということになり、問題が生じます。というのは、ローマ教皇は754年7月にカールとその弟カールマンにフランク王国継承者としての承認を意味する塗油を施しているからでありまして、ローマ教皇私生児を次世代の王として聖別するとは考えられないからです。そこでカールの両親は744年に婚姻を結び、747年ないし748年にカールが生まれたと考える見解が有力となったわけです。これについては次に掲げる文献を御覧ください。

 その後、カールの息子ピピンについての記述が続きます。

最初の妻は、ブルグント貴族(何家か不明)の娘ヒミルトルーデ。西ローマ皇帝として即位する前年767年頃の結婚で、長女アモードル(768年)と長男ピピン(770年生)を授かりますが、ピピン誕生後に離婚。その後のヒミルトルーデは、アモードルを連れ修道院へ。残されたピピンはその事実を知った時から父カールに対して反抗的になる。ピピンはイタリア王となりますが、父に謀叛。しかし、それは失敗して生涯幽閉の身に。イタリア王位は、同じ名を持つ異母弟ピピンに譲られます。

http://hidexhirax.hatenablog.com/entry/2015/06/29/234249

この記述は端的に誤りです。第一にカールが「西ローマ皇帝」なる称号を少なくとも800年の戴冠以前に用いたことは一度もありません。仮に百歩譲って800年の戴冠を「西ローマ帝国の復活」と看做すにしても(そもそもこうした枠組自体、「古代末期」研究によって覆されているわけですが)、カールを即位当初から「皇帝」と呼ぶ慣行は(教科書レベルですら)存在しません。第二に「同じ名を持つ異母弟ピピン」はもともとカールマンという名前でした。カールと最初の王妃ヒミルトゥルーデとの間に生まれた長男ピピンは「せむしのピピン」と呼ばれる障害児でありました。カールは781年4月の生涯二度目のローマ訪問に際して、三番目の王妃ヒルデガルトとの間に生まれた三男カールマンと四男ルートヴィヒを伴いまして、二人の王子に時の教皇ハドリアヌス1世から洗礼・塗油を受けさせています。そしてこのタイミングで、カールマンはピピンに改名されたのです。これは長男の「せむしのピピン」の事実上の廃嫡を意味すると考えられており、792年に彼が叛乱を起こすのは以上の文脈で理解しなければならない、ということになります。これについては次に掲げる文献を御覧ください。ですので、

そして、父カール大帝に謀叛するピピンが実はアデルペルガの子で、三男とされるピピンと同一人物だとすると、全て辻褄が合います。

http://hidexhirax.hatenablog.com/entry/2015/06/29/234249

という想定は全く成り立ちません。また、三男カールマン(=ピピン)は781年4月の段階で教皇ハドリアヌスからイタリア王として聖別を受けており、長男ピピンが叛乱を起こすのは792年ですから、論理的に考えて長男から三男へとイタリア王位が譲渡されたという解釈も成り立ちません。

 もう一つのエントリも事実誤認に満ちています。

774年。カール率いるフランク軍(=西ローマ軍)はロンパルディアへ侵攻。王都パヴィーアを占領して、ランゴバルド王国を滅亡に追い込みます。これによって、フランク族ローマ教皇を守護する盟主となり、神聖ローマ帝国を建国する根拠にもなります。

http://hidexhirax.hatenablog.com/entry/2015/06/30/235531

とありますが、このカールの生涯一度目のローマ訪問でいかなる内容の合意が成立したのかは、史料の制約からして何も言うことができません。「フランク族ローマ教皇を守護する盟主とな」ったというのは、後世の歴史家の推測に過ぎませんので注意が必要です。仮にこの点を正当化するにしても、いっそう周到な議論の枠組が必要です。ですからこれが「神聖ローマ帝国を建国する根拠」などにはならないことは明らかでしょう。また、

3年後の777年。恐らくフランクの王と、ローマ教皇、そして所謂ランゴバルド三侯国の公の協議が行われ、カール1世の長男ピピンランゴバルド王に即位。このピピンに関しては、前回、カール1世とアデルベルガの子どもではないのかな?と考える此方はそういう怪説を致しました。昨日の今日で路線変更など出来ませんから、その流れで話を進めれば、元弟妃アデルベルガ=ピピンの実母の願いを聞き入れて、ピピンをランゴルド王に即位させ、ランゴバルド三侯国の保護存続を認めた。という事になります。

http://hidexhirax.hatenablog.com/entry/2015/06/30/235531

という記述についても、そもそも777年にフランク王とローマ教皇の協議があったという事実はない、とだけコメントしておきます。

そして、こうした数々の事実誤認にもまして問題なのが、次の記述です。

千年以上も昔の真実は今更何も出て来ないでしょうけど、こういう説で書かれている本など我が国には無いみたいですから、全ては此方の勝手な想像。百年後、千年後、こういう話が事実化されていたら面白い。歴史は後からだって創る事が可能です。その事は、支那や韓国に好き勝手に歴史を騙られている我が国の人達が一番理解出来るでしょう。

http://hidexhirax.hatenablog.com/entry/2015/06/30/235531

実際、私がこのエントリを書こうと決意したのも、この記述に対する怒りからであります。筆者が意識的に書いているのかどうかは定かではありませんが、西欧中世を題材にして歴史家ぶりつつも、とうとう馬脚を露わしたものです。「支那や韓国」を引き合いに出す時点でお察しではあるのですが、ここには中国や韓国に対する明らかな差別侮蔑意識が窺われます。「好き勝手に歴史を騙られている」と一方的に相手を悪者に仕立て上げ、自分は居直って被害者ぶるというのは所謂「ネトウヨ」や歴史修正主義者の常套手段でありますが、この筆者もまさにそのパターンに陥っているということは言うまでもないでしょう。そして、極めつけは「歴史は後からだって創る事が可能」という豪語です。このように従来の歴史学の研究蓄積を全てうっちゃって、ゼロベースで議論したがるのも歴史修正主義者の特徴でありますが、それを地で行っているという印象を受けます。少なくとも、この筆者の説とやらが「事実化」されることは何千年経とうがありえないでしょう。

 私は歴史モノの「創作」や「歴史小説」を全否定しているわけではありません。しかし、昨今の『艦これ』や『刀剣乱舞』をめぐる情勢を見ていると、「創作」は一瞬にして「偽史」へと移り変わり、それが歴史修正主義と強固に結びつく事例があまりに多すぎると言わざるを得ません。何の根拠もないデタラメを並べ立てること自体にも問題がありますが、いっそう醜悪なのはそうしたデタラメを撒き散らすことに一切の躊躇いや恥ずかしさを覚えないメンタリティだと思います。上で一つ一つ反証したとおり、少なくともカールに関するこれらのエントリは大半が典拠不明の嘘から成り立っています。このような加工を行える人間が他のエントリでは「歴史的」な思考をしているとは思えませんので、当該ブログ全体が歴史修正主義的な色彩を帯びているのだと考えてよいでしょう。他のエントリについては、私は検証する余裕も能力もありませんが、正しい知識と作法を身につけた良識ある方がそれらを否定してくださることを願っています。歴史修正主義は我々の身近に潜んでおり、様々な局面に忍び寄ってきているのだ、と今回の一件で私は強く感じました。仮に百歩譲って歴史学が「何の意味もない、金にならない学問」なのだとしても、こうした俗悪な歴史修正主義を拒絶するだけの力はあると私は信じております。

 最後に、今回のエントリに関連するTogetterまとめを紹介しておきます。ご関心のある方は是非併せてお読みいただければと思います。

  http://togetter.com/li/728649

  http://togetter.com/li/854543

  • 「ところで艦これ厨は滅ぼされねばならない」内輪ネタの妄想と、歴史の大系について

  http://togetter.com/li/879015

  • 「ところで艦これ厨は滅ぼされねばならない」タグをめぐる補論〜鳥山仁氏に応えて・ほか

  http://togetter.com/li/889851

  http://togetter.com/li/897515

rasiel9713rasiel9713 2015/11/10 14:17 「関係ないけど、もう誰も本当の意味での歴史修正主義って使わなくなっちまったな。本来は過ちを事実を持って塗り替える運動だったはず。嘘八百ならべる奴は、歴史捏造主義者でも大仰で、嘘つき君で十分なんですよ」

 はてなブックマークにこのようなコメントが残されていましたので、この点について補足したいと思います。実は文学者や歴史家の間で、修正主義 (revisionism) ではなく、否認主義 (negationism) という言葉を定着させようという同様の動きがあります。

https://twitter.com/Cristoforou/status/598731706124750848
https://twitter.com/odg1967/status/598734631974805504

 確かに指摘の通り、一見すると修正主義という言葉は革新的な意味を帯びているようにも見えます。議会を通じて漸進的に社会主義を実現しようとする動きも修正主義と呼んだりするわけですし。しかしながら、はてなブックマークにある「本当の意味での歴史修正主義」などというものがあるのでしょうか。言い方を変えれば、修正主義という言葉がネガティヴなものであることは日本語に限った話ではありません。例えば、以下のJapan TimesとNew York Timesを御覧ください。

http://www.japantimes.co.jp/opinion/2015/08/22/commentary/abes-revisionism-japans-divided-war-memories/#.VkF86rfhDVY
http://www.nytimes.com/2014/03/03/opinion/mr-abes-dangerous-revisionism.html?_r=0

 ここでも当然の事ながら、過去を捏造し悪行をなかったことにしようとするかのごとき言辞・行動はRevisionismという言葉で表されています。そもそもの問題として、誤った認識を正していくのは歴史学自体の使命でありますから、「本来の意味での歴史修正主義」などという相対化を行う必要はないように感じています。以上、補足でした。

超絶!コンバットスーツ超絶!コンバットスーツ 2015/11/10 23:31  はじめまして。
 現在、山岡荘八氏の小説を読んでいる最中なのですが、現在の私の心中と言うか、読んだ感想をぴたりと言い当てたフレーズが有った事に感動し、思わずコメントをしてしまいました。

 それまで評価が悪かった陣営にスポットを当てたり、彼らなりの価値観を多くの受け手に提示するのは歴史小説と言うか歴史を題材にした小説、あるいはその元になる想像力の重要な役割だとは思っているのですが、此方の記事や山岡氏の小説を読みながら、限度が有りますし、作品が歴史修正主義との親和性が高くなっていないか気をつけなければならないと感じました。

 それでは、失礼いたします。

hokusyuhokusyu 2015/11/11 01:17 結論に異論があるわけではないのですが、社会主義の場合、「修正主義」は、少なくともソ連型社会主義と西欧マルクス主義の評価が逆転するまでは、社会主義左派が右派を攻撃するときに用いるネガティブなレッテルだった気がします。イギリス史においては、Revisionismはいわゆる「ホイッグ史観」の修正として、少なくとも中立的な意味ではつかわれていますね。

rasiel9713rasiel9713 2015/11/12 01:52 >>超絶!コンバットスーツさん
はじめまして。丁寧なコメントならびにブログでの引用、誠にありがとうございます。
はてなブックマークでも「司馬史観」が問題視されていましたが、歴史小説や大河ドラマとどう向き合うかは本当に難しいと思います(それらが大衆の歴史への関心のきっかけになるということも大いにあるので全否定はできないという意味で)。
ただ、実際問題、歴史小説から入って史学科に来たものの、あまりに地味な作業に絶望するというケースもままありますので、「距離のとり方」を中等教育段階で仕込むべきだとは感じています。西洋史については言わずもがな塩野七生や佐藤賢一の著作が「創作」にあたりますね。ところが、専門書よりもこうした創作の方が広く読者を獲得しているわけで、微妙な気持ちになります。

>>hokusyuさん
社会主義の場合の用語法について補足ありがとうございます。近現代の用語法についてはまだまだ勉強が足りないので、助かります。

attack2010attack2010 2016/02/04 22:50  結局歴史修正主義という言葉を使うからには修正される前の歴史を絶対視していて新説や異論を認めないと考えているわけで、それこそ非知性以外の何者でもないかと思います。
 悪人の再評価であろうと自由に議論されるべきで、それを行う活動態度そのものを危険視して止めろというのは言論弾圧でしかありません。
 
 どの歴史観に対しても不正確な部分を指摘し合うことが真実に近づく唯一の道です、「相手の不正確さを批判することは、どの陣営からでも自由に行われるべきです」特定の認識を神聖化し、批判することをレッテルを張って禁止するのはなんであろうと間違っています。
 問題は「自分が発信する際に、不正確な情報を流すこと」です。どのような意見であれ、発信者は事実に基いて書かなければなりませんし、妥協する場合は必ず補足を付けなければなりません。それが守られないことが危険なのだと思います。
 
 つまるところ、どんな場合でも相手の嘘を批判するのは自由でなければなりませんし、自分が嘘をついてはいけない、ということです。立場で善悪を決め、それによってこの原則を左右してはなりません。絶対的な善などありえないのですから。

2015-08-14

[]C88『声ヲタグランプリ』Vol. 15が出ます(15日・東“ト”46a) 17:46 C88『声ヲタグランプリ』Vol. 15が出ます(15日・東“ト”46a)を含むブックマーク

f:id:rasiel9713:20150814174359p:image

 まさか、2015年最初のエントリが夏コミ告知になってしまうとは。多忙を理由に筆不精になってしまうのはよくないですね。ブログもファンレターもこまめにね、を心がけたいと思います。「余は如何にしてアイドルヲタクとなりし乎」については、ブランクがありすぎて(その間に色々な変化もあって)全面的に書き直した方がいいのではないかという気がしてきました。また、内村鑑三パロネタで行くなら、全編通して英語で書けという指摘もなされており、恥じ入った次第です。

 さて、2015年の夏も我々谷部 (id:tani-bu) はコミックマーケットサークル参加します。今回は諸事情によりグレースケール表紙に戻りましたが、内容は一段とカラフルに(?)なっていますので、ご期待ください。内容は以下の通りです。

特集 僕たちの好きな声優88人

C77に合わせて企画された『声ヲタグランプリ』Vol. 4の特集から5年半が経過しました。あの時の声ヲタたちはこの5年半でどのような変容を遂げたのか? 刮目せよ!

取り上げ損ね・新人声優リヴュー

今回のお品書きは田中あいみ高田憂希、イヤホンズとなっております。それが声優、それが声ヲタ

2015年上半期声優アニメリヴュー

放課後のプレアデス』のリヴューだけで10頁近い! 『放課後のプレアデス』大好きサークルかよ! 一部作品については紙幅の都合で掲載できませんでしたが、これから上半期アニメを回収する方々への指標としてご利用いただくには充分なヴォリュームとなっております。

声ヲタお悩み相談室

「これまでのこのお悩み相談はなんだかんだいいつつ「あ、あいつだな」っていう身内同士のなれあいによって成立していた側面があるから、こういうガチの球を投げられても困るよね」(抜粋)

 私は今回、特集「僕たちの好きな声優88人」に参加しているほか、『SHOW BY ROCK!』『新妹魔王の契約者』『電波教師』のリヴューを担当しています。『放課後のプレアデス』についても、俗説ギリシア神話から考える声優声ヲタ!みたいな、作品にあまり関係のないことを書いています。ただ、この作品については珠玉のリヴューが何本も併記してありますので、ご安心ください。

 なお、これとは別に5,000字程度の自由投稿を書いたのですが、紙幅の都合で掲載見送りになりました。かなしい! この自由投稿は今すぐに掲載しないと旬を逃すものですので、この告知エントリが書き終わり次第、このはてダで公開することにします。次のエントリでまたお会いしましょう!

 ブースは15日・東“ト”46a「谷部」です。熱中症などに気をつけてお越しください。よろしくお願いします!

[][][]『モンスター娘のいる日常』を声優アニメとして観る前に 19:40 『モンスター娘のいる日常』を声優アニメとして観る前にを含むブックマーク

 こんばんは。以下に掲載するエッセイ「『モンスター娘のいる日常』を声優アニメとして観る前に」は、明日(2015年8月15日)のコミックマーケット88で頒布される、谷部『声ヲタグランプリ』Vol. 15に掲載されるはずだったものです(『声ヲタグランプリ』Vol. 15についての告知はこちら→http://goo.gl/DmOFzR)。

 我らが編集長から、紙幅の都合により(つまり優先順位の関係で)どうしても全文掲載することができないと言い渡されてしまったので、このままボツ・お蔵入りにするのは(個人的に)勿体無いと思い、このブログで直ちに公開することを決めました。

 というのも、仮に次の『声ヲタグランプリ』刊行のタイミングを待つとなると、それは今年の12月末となってしまい、完全に「後出し」になりかねないと思うからです。業績争いごっこをするつもりはありませんが、私にとってかけがえのない作品である『モンスター娘のいる日常』について色々なコメントがなされるのを12月末まで黙って見ているのは耐えられませんので、「鉄は熱いうちに」の精神で5,200字ちょいの本文を全文公開します。

 正直なところ、内容が内容なだけにブログでの全文公開には躊躇いがないわけではありませんが、「言いたいことがあるんだよ!」という思いを抑えきれないので、自ら晒し上げることにいたします。それでは、どうぞ。

 「モンスター娘百覧」(或いはとろとろレジスタンス)、「クロビネガ」(或いは健康クロス)、Vanadis、『コミックアンリアル』。試みに四つの単語を挙げてみたが、この時点で身体が反応した読者諸賢はこのエッセイの続きを読む必要はないかもしれない。この四つの単語は『モンスター娘のいる日常』の周囲に広がる小宇宙の性質を端的に明らかにしている。語弊を恐れずにタグ付けするならば、それは巷で「異種姦」「人外」「捕食」などと呼ばれるものである。このエッセイは、とうとう地上波放送されてしまった『モンスター娘のいる日常』の奥深さを、心ある声ヲタ諸賢に伝えるために書かれた。暫しお付き合いいただきたい。


1 オカヤドと「人外」の小宇宙

 現代史を語ることほど躊躇いを覚えることも少ないわけだが、たとえ蛮勇との謗りを受けようとも書かねばならぬこともある。まず『モンスター娘のいる日常』の原作者、オカヤドという人物について説明したい。オカヤドは2007年2月12日の夜、半角二次元板の「モンスター娘・約28匹目」スレッドに彗星のごとく現れた。「ラミアのいる日常」と題された1ページ漫画を皮切りに、オカヤドは「○○のいる日常」シリーズを断続的に掲示板へ投下するようになり、彼の作品は瞬く間に世界中の「人外」ファンを熱狂の渦に巻き込んだ。その熱狂は「隔離スレ」的なコミュニティに特有の静かな盛り上がりではあったが、オカヤドをこの小宇宙における伝説的な存在に押し上げるには充分なものであった。なお、このシリーズは2008年12月23日以来、オカヤド本人によってPixivに転載されてきたため、現在も容易に閲覧することができる。


 オカヤドの作品は当初からモンスター娘との「イチャラブ」展開を主軸にしている点で特徴的であり、異形の存在(外形的に雌型をしていても性別のない無機物をも含む)に性玩具として弄ばれたい、或いは終わりのない快楽の中で発狂させられたい、或いは種馬として徹底的に搾精されたい、或いは単に餌として捕食・消化されたいといった願望を有する過激派の「人外」ファン層にとっては生ぬるく物足りないものであったかもしれない。一つ別の例として『Girls forM』を挙げれば、主人公が身体的・精神的に壊される展開を望むか否かについてファンの間で意見の一致を見ておらず、過激派と穏健派の双方に訴えかける作品を想定するのは極めて難しい現状にある。それと同様に、「人外」の小宇宙にも物語の展開や人外部位の割合などをめぐって様々な派閥があり、一つのジャンルとして単純に理解することはできない(「クロビネガ」の投稿SSの感想欄を眺めてみればよい)。要するに、この小宇宙において平均値を求めることは無意味であり、オカヤドがメイン・ストリームに位置しているのか否かは相対的な問題でしかないが、一つだけ確かなのは、この小宇宙が御し難い異常性を秘めているということなのである(異常性という用語法については後述する)。


2 「異常性」対「普遍性

 さて、『COMICリュウ』というプラットフォームのおかげか、『セントールの悩み』や『ヒトミ先生の保健室』といった作品群が順調に巻数を重ねている昨今、ともすれば「人外」的要素が市民権を得たかのように錯覚されるかもしれない。しかし、こうした錯覚は表現や趣味嗜好の異常性を隠蔽・緩和してしまい、議論の筋を悪くするおそれがある。異常性という強い言い回しに不快感を覚える人もいるだろうが、もう少しの辛抱をお願いしたい。


 「表現の自由」を論ずる際には、法の次元と倫理の次元を峻別しなければならない。例えば、コミックマーケットで受け取った紙袋に少女のあられもない肢体が描かれているという状況を想定してほしい。電車での帰り道、貴方はこの紙袋を隠して乗車するだろうか、それともこの紙袋を堂々と陳列したまま乗車するだろうか。筆者はたまに、こうした露骨な性表現は「表現の自由」によって保護されているのだからコソコソ隠す必要などない、という主張を耳にするが、この主張には法の次元と倫理の次元との混交が見られることを指摘しておきたい。昨今の表現規制問題をめぐる漫画家たちの主張にも同様の混交が散見されるが、ここで確認すべきは、ある表現が「表現の自由」によって法の次元で保護されていることと、それが倫理の次元でも普遍的に受容されることは別問題だということだ。言い換えれば、「表現の自由」とは倫理の次元では到底受容されない異常性を保護するための防壁だということになる。「表現の自由」は(一定の限界こそあれど)表現自体の異常性を問題としない点で魅力的だが、この法の次元は倫理の次元から切り離されているということを忘れてはならない。この峻別を疎かにすると、途端に表現規制問題をめぐる議論の筋が悪くなる。


 既にお分かりかもしれないが、異常性という用語はここでは普遍性の対義語として使われている。そして、普遍性倫理の次元において支配的な価値となっている。だから、世に言う異常性癖なるものは、倫理に対する宣戦布告文脈で「異常」とされるのである。ある表現に「異常」のレッテルを貼ることは、「表現の自由」の放棄などでは断じてなく、むしろ「表現の自由」を効果的に利用するための現状把握なのだ。筆者が「人外」の小宇宙に「異常」のラベリングをしたのも害意あってのことではない、ということを読者諸賢にはご理解いただきたい。


3 異常性を愛好するということ

 法の次元と倫理の次元を峻別する伝統を持つ地域では、異常性の側に立って倫理と対峙するには相当の覚悟が必要だ。何となれば、それは普遍性、すなわち全世界を敵に回すことなのだから。さて、異常性の側に立つ営みの一つが文学と呼ばれるものである。サルトル文学の性質を悪と看做したのに対して、ロラン・バルトは「エクリテュール」という概念を持ち出して作家のある種の社会的責任を説いたが、こうした悪や異常性をめぐる論戦は「普遍性」の存在を前提としている。『超訳 ニーチェの言葉』などがベストセラーになる本邦では実感がないかもしれないが、彼らは多元主義相対主義を通じて悪や異常性を隠蔽・緩和することが許されないほどの厳しい価値対立の中に身を置いていたのだ。


 法の次元と倫理の次元との混交が生じ、異常性と普遍性との境界が融解している本邦では、価値対立の中で異常性を選び取ることの重みが理解され難いのかもしれない。この点で、田山花袋が作家としての「切実な問題意識」に欠けており、悪や異常性すらも引き受ける文学の営みを「善良なる市民」のものに脱色してしまった、という福田恆存の指摘は傾聴に値する(田山花袋蒲団/重右衛門の最後』、新潮文庫版の解説を参照)。現在「人外」の小宇宙に暮らす多くの者たちも、花袋同様に「芸術家の才能なくして、芸術家に憧れる」健全な市民なのではないだろうか。


 だとすれば、「人外」ファンに改めて求められる態度は、自分の愛好するジャンルがひょっとすると倫理の次元では受容されないものなのかもしれないと反省し、その上でなお「人外」の小宇宙に居座る覚悟を固めることなのではないだろうか。「人外」が好きで何が悪い、むしろ「人外」こそがメイン・ストリームであるべきだ、「人外」ファンが大手を振って歩けるようにしろ、などと過激な主張を行う者が増えやしないかと、筆者は常々恐れている。その恐れが私にこのエッセイを書かせた動機の正体でもある。


4 筆者の遍歴

 さて、ここまで一般的な話を続けてきたが、上から目線の説教がしたいわけでは毛頭ないので、ここで筆者自身が「人外」の小宇宙に辿り着くまでの経緯を披瀝することにしたい。筆者の本格的な性の目覚めは、小学校高学年の時に「Kekeo’s Ballbusting World」というサイトに出逢ったことに起因する。そこで「Pussy Envy」の翻訳を一気に読んだ時の衝撃は今でも忘れない。性の目覚めといっても、解放としての自慰を覚えたのは高校二年生の時だったので、筆者は解放以前にかなり長い貯蓄の期間を過ごしたわけだが、その間に「急所蹴りの美学」、「ヌギスタ学園」、「Girl Beats Boy」、「サキュバスの巣」、「アマゾネスの宴」などを経て、とうとう冒頭でも書いた「モンスター娘百覧」に到達したのだった。簡潔に言えば、筆者は「金蹴り」から被虐の世界に入門し、少しずつ位相の異なる被虐属性へと誘われながら、妖女・モンスター娘に犯されるという世界に迷い込んだというわけだ。だから筆者にとって、モンスター娘との「イチャラブ」展開や、モンスター娘の主食は人間男性の「精」であるとかモンスター娘は人間男性を傷つけないとかいった設定は全て「後付」に思われた、ということを告白しなければならない。何となれば、筆者にとっての「人外」の小宇宙とは、被虐の小宇宙の一部をなしていたのだから。


 中学一年生の時に「ヌギスタ学園」を無邪気に同級生に勧めてドン引きされて以来、この手の趣味は「隠して」生きていかなければならないのだという意識が、筆者の中には燻っている。成長過程で多くの同級生が興味を抱いた性表現に全く昂ぶりを感じない、というある種の不感症の体験が筆者を後ろめたい気持ちにさせる。そして、テクストサイト偏重の体験が、画像よりも文章表現に興奮するという筆者を形成することにもなった。筆者は「人外」の小宇宙に閉じ籠もって、趣味嗜好について語り合う相手を持たないまま数年を過ごしたのである。そんな筆者にとって、オカヤドがいつの間にか商業デビューを果たし、「人外」ジャンルが少しずつ普及し始めた様子はあまりに眩しく映った。だがそれは「故郷に錦を飾ってくれた」という喜ばしい感情ではなく、むしろ「このジャンルがスケープゴートにされるのではないか」という警戒感を伴っていたのである。


5 異常性は声優によって隠蔽されるのか?

 『モンスター娘のいる日常』がアニメ化され、さらに地上波で放送されているという事実が、どれだけ筆者にとって信じがたいことであるか、少しでも読者諸賢に伝わったのなら幸いである。最後に残る問題は、オカヤドの描いたキャラクターたちが女性声優の声で喋り出すということだ。そう、アニメ化によって異常性は声優性を帯びて現前することになる。


 声優が役柄や作品の宿す思想に溺れてしまう可能性、ならびに声ヲタ声優を「悪影響」から防衛することの不可能性については、これまで幾度も述べてきたので敢えて繰り返すことはしない。ここで新たに問題にしたいのはキャスティングである。『モンスター娘のいる日常』のキャストを眺めてみると、ミーア役に雨宮天、パピ役に小澤亜李、マナコ役に麻倉もも、ティオ役に久保ユリカなど、ピンチケが好みそうな(偏見)今をときめく女性声優を揃えてきたなという感じであり、11月15日に日比谷公会堂で開催されるイベントが「作品ファン感謝祭」として機能するのかどうかについては不安が残る。


 とはいえ、セレア役に相川奈都姫、スー役に野村真悠華と新人を配する一方で、墨須役に小林ゆうゾンビーナ役に持月玲依を配するなど、当世風でありながら渋さも感じさせる面白いフォーメーションになっていることは疑いえない。さらに、メロ役には山崎はるかを登用しており、日ナレメソッドによってロイヤル感に説得力を持たせようとするなど、一々面白いフックが取り付けられていて、「声優アニメ」として間違いなくよくできている。とりあえずこのくらいにして、詳細なリヴューは『声ヲタグランプリ』16号の担当者に譲ることにしよう。


 最後に問いたいのは、今をときめく女性声優の魔力によって、縷々述べてきた異常性が隠蔽されるのかということだ。2013年のポケモン映画神速のゲノセクト』で、水ゲノセクト諸星すみれの声で話し始め、涙を流したとき、貴方は「このゲノセクトならいける」と思っただろうか、それとも「却ってゲノセクトのグロテスクな形状を際立たせただけだ」と思っただろうか。いずれにせよ、異形の存在が女性声優の声を発したとしても、それが異形の表象であることには変わりはない。同様のことが『モンスター娘のいる日常』にも当てはまる。つまり、仮に異常性が隠蔽されたと感じるとすれば、それは声優の力によって実際に隠蔽されたのではなく、声ヲタがそう解釈しただけだということになる。それぞれの声優普遍性と異常性とのせめぎあいを自覚しているかどうかは分からない。しかし、声ヲタが異常性に対する意識改革を遂げることはできる。普遍性と異常性との鋭い緊張関係を自覚した声ヲタは、異常性に対して甘い態度を示してしまう人々よりも遙かに深く『モンスター娘のいる日常』を味わうことができるはずだ。


 さて、タイトルに立ち返ろう。『モンスター娘のいる日常』を声優アニメとして観る前に、何が奨励されるのか。ここまで辛抱強くお読みいただいた読者諸賢にはもうお分かりだろうから、敢えて多言は弄すまい。このエッセイが皆様に「人外」の小宇宙への扉を開くきっかけになれば、筆者にとっては望外の喜びである。

2014-12-27

[]C87『声ヲタグランプリ』Vol. 14が出ます(28日・東“テ”30a) 23:42 C87『声ヲタグランプリ』Vol. 14が出ます(28日・東“テ”30a)を含むブックマーク

f:id:rasiel9713:20141227234025j:image

 今回は告知エントリです。「余は如何にしてアイドルヲタクとなりし乎」の続きはもう少しお待ちください(誰も待ってない)。

 今年の年末行事、冬のコミックマーケットにも、我々谷部 (id:tani-bu) はブースを出します。総合声優声ヲタ批評誌『声ヲタグランプリ』もなんと14号を迎えました。私が谷部に参加してから、既に丸5年が経過しようとしているということになります。もう5年もこんな活動やってるんですね……。いやいや、執筆者一同まだまだ現役! 5年と言わず10年、20年書き続けていく所存です(勝手なことを言った)。

 そして、とうとう谷部もカラー表紙を採用することになりました。かわいい! カラー表紙につき1冊500円へと値上げがなされますが、どうかご了承ください。表紙はナカシマ723さんに描いていただきました。ありがとうございます! ナカシマさんのパクツイbotスレイヤー (http://botslyr.nakashima723.info) も応援よろしくお願いします。

 さあ、気になる内容は以下のとおりです。

特集 アイカツ!

第2シーズンを「ラララ〜♪」な感じで終えて、「ブーン!」と第3シーズンに突入した『アイカツ!』。劇場版も大絶賛放映中の今こそ、第2シーズンまでを振り返り、個別キャラクターリヴューをやろうではないか! ということで、「1000年に1人の声ヲタ」たちが集結しました。20人にも及ぶ個別キャラクターリヴューに加え、第1シーズン、第2シーズンの総括までついています。これは、チェックするしか!

声ヲタ自叙伝シリーズ 真愛III

とうとう第3弾です。あの声ヲタはどうなったのか? 以前の自叙伝をお読みでない方も胸を打たれる、感動の短編を送ります。

取り上げ損ね声優リヴュー

実質的に、みんな大好きi☆Ris特集になってしまいました。『プリパラ』以前の段階で新人として取り上げるのは無理だっただろ! という文句もありましたが、全てはせーりーざーわーゆーうーちゃんのせいだ!

新人声優リヴュー

今回は締め切りギリギリに突っ込む形となりました。突貫工事感否めませんが、お楽しみください。

2014年下半期声優アニメリヴュー

アニメ多すぎだよ、網羅できないよ! すみませんでした。

声ヲタお悩み相談室

前回に引き続き第2回目です。今回も相変わらずひどいので、心臓の弱い方はお読みにならないでください。

 いよいよ明日はコミケ当日です。防寒対策など怠らずに、是非ブースまでお越しください。

 ブース28日(日)東“テ”30aになります。皆様、よろしくお願いします!

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/rasiel9713/20141227