いじめの社会理論 (内藤朝雄)

amazon から いじめの社会理論 が届きました。今読んでるとこですが、これは確かに凄い本だな。いじめ問題について考える人は必読だろう。
ニコニコ大会議やネットの全能感について考えたことは後でまとめるつもりですが、とりあえずそれとは関係無く衝撃を受けた話を引用してみる。

事例4:ベンちゃん 南日本のある中学校に、クラスメイトから「(勉強の)ベンちゃん」と呼ばれる勉強熱心な女生徒がいた。彼女は「友だち」のノリから浮き上がり、周囲からギスギスした圧迫を受けていた。彼女は「友だちとなかよく共同生活する」ことを強制する共同体型の学校制度のもとで、「学校の友だち」と朝から夕方までギスギスと一緒に過ごしながら、「協調性のない自分ではだめだ」「みんなとなかよく交われるような自分になりたい」とまじめに悩んだ。そしてこの悩みにつけこんだ「学校の友だち」は、悪意をこめて彼女を壊そうとした。つまり「友だち」は、彼女に売春をさせた。彼女は「みんなと仲良くできない、まじめなかたい自分を壊す」ために売春をし、妊娠し中絶した。
このように「友だちとなかよくできない自分を直さなければ」というプレッシャーによって、「まじめな子」が「友だち」に命じられるままに売春(援助交際)を余儀なくされることがある。
個人の自由を憎む右翼や左翼の共同体主義者たちは、自由がいきすぎて共同体とその規範意識が解体し、その結果若い人たちの売春(援助交際)が流行ると主張する。これを援助交際規範解体説と呼ぼう。
しかしミドルティーンにかぎっていえば、純然たる個人で売春(援助交際)する人よりも、学校で身についたピア・プレッシャーに屈従する習性にひきずられて売春(援助交際)をする人の方が多いと思われる。その意味では学校共同体主義こそが売春の温床であるともいえる。少なくとも地方においては、援助交際規範解体説よりも、援助交際学校しがらみ説の方がミドルティーンの現実にあてはまっているといえるだろう。

著者は「なかよく共同生活することを強制する学校制度」こそがいじめの温床であると一貫して主張します。「いじめは良くない、みんなで仲良く」と生徒に押し付ければ押し付けるほどいじめは酷くなる、との主張。それを出発点に、「学級制度の廃止」を提言してます。たぶんこの主張は正しい。

いじめの社会理論―その生態学的秩序の生成と解体

いじめの社会理論―その生態学的秩序の生成と解体