主要な気候・エネルギー政策のパブコメ開始

すごい久々の更新がこういう単なる情報整理なのもあれですが・・・・。
先週から、日本の気候・エネルギー政策に関する主要な計画・戦略について、パブコメが開始されました。
日本のパブコメ制度は、市民や業界団体からの意見を広く聞いて、そこから得られる知見を活かす制度としては機能しておらず、せいぜいが最終微調整することで「パブリックから意見を聞いた」という根拠を作るための制度に形骸化してしまっていますが、 それでも、たまに出てきた意見の数は話題になることもあり、出しておくことは大事だと思います。
いずれも、締切は10月4日です。環境省のやつは、締切が10月5日0時00分に設定してあるので、ぱっと見10月5日に見えますが、事実上4日です。

2020年のエネルギーおよびCO2排出量に関するIEAの推計

先日の記事ではCarbon Briefによるまとめをとりあげましたが、この間に、IEAが本年のエネルギーおよびCO2排出量に関する見通しを出しました。

www.iea.org

CO2排出量に注目してみると、IEAの見通しでは、2020年の年間排出量は2019年比で約8%、量にして約26億トンもの減少になるようです。ただ、この削減はあくまで一時的なもので、同見通しでも、「経済を回復させるための投資が、よりクリーンで、よりレジリエントなエネルギーインフラに向けられなければ、排出量のリバウンドは減少を上回るかもしれない」と指摘されています。

エネルギーへの影響

少し詳しく見てみます。

IEAによれば、2020年の第1四半期の実績において、化石燃料需要の中で大きな影響を受けた順番に並べると、石炭、石油、ガスとなるようです。

石炭への影響が大きいいのは、3月までの段階では、石炭を主な燃料源とする中国が一番大きな影響を受けたからとのこと。次いで石油への影響は、モビリティ(輸送用燃料)と航空機燃料の減少が大きいとのこと。これは、一般の私たちからしても想像しやすいですね。これらに比較すると、天然ガスへの影響は比較的緩いようです。

これに対し、2020年通年を推計した場合、最も大きな影響が出るのは石油、次いで石炭、天然ガスとなる模様。世界全体でのエネルギー需要は前年比6%の減少で、これは絶対量での減少としては過去に例がない落ち込みです。前年度からの減少率(%)としては70年ぶりの下落(第2次大戦の方が減少率は大きい)となります。

CO2への影響

これに伴うCO2排出量の減少に関してみると、2020年通年での落ち込みは、冒頭でも述べたように2019年比で約8%、量にして約26億トンもの減少になるようです。これは、CO2排出量の減少率としては過去に例がない落ち込みで、リーマンショックの時の6倍以上になるとのことです。

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IEA:世界のCO2排出量の変化(1900〜2020)

今回の削減率と1.5℃に必要な削減率の関係

ちょっと細かい話になりますが、先日の記事で取り上げたCarbon Briefによる推計は、当初(4月9日)、4.4%(約16億トン)の減少という推計でしたが、その後(4月15日)さらにアップデートされて5.5%(28億トン)という推計になりました。

その後、IEAの見通しが発表された時点で、Carbon Briefは「IEAのデータの方がより最新のデータを引いてます。自分たちのが75%の排出量しかカバーしていない推計であるのに対して、IEAは全部カバーしているよ」という追記をしています。

なので、今後はIEAのデータを参考にするのがよいかもしれませんね。

実は、Carbon Briefは、記事において、推計された大きな減少幅(5.5%)でも、昨年UNEPが出したEmissions Gap Report 2019で示された「1.5℃を達成するために必要な年削減率=7.6%」というのに届かないので、対策の手を緩めてはならない、という評価をしています。

 

ただ、上記IEAの推計によれば、年8%の減少ですので、1.5℃に求められる減少率とほぼ同等といってもよいでしょう。だからといって別に「対策の手を緩めてはならない」という結論が変わるわけじゃありませんが。また、UNEPが計算しているのはCO2以外の温室効果ガス排出量全体で、IEA(およびCarbon Brief)が計算しているのはCO2のみだという点は若干注意する必要があります。

こういうのを見ると、「こんなに経済がダメージを受けないと1.5℃に必要な削減量はできないのか!」と憤慨する人もいるかもしれませんが、正確には「今のままの燃料構成や、エネルギー効率を前提とするなら、そうなっちゃいます」ということなので、そういう印象を植え付けるだけの議論はやめて、むしろ「燃料構成やエネルギー効率をもっと改善しましょうね」という議論にシフトしていく方が冷静だと思います。それが、冒頭の引用でIEAも指摘していることだと思います。

COP26の延期

2021年への延期は決定。でも時期は未定。

COP26の延期新型コロナウイルスの影響を受けて、国連気候変動会議も延期が既に決まっています。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局から各国およびステークホルダーへの通知が出されています。

ざっくりと整理すると以下の通り。

 

  • SB52(補助機関会合)
    • (旧)2020年6月1日〜11日
    • (新)2020年10月4日〜12日
  • COP26
    • (旧)2020年11月9日〜20日
    • (新)2021年、月日は未定

現状を見ていると、この10月のSB会合も、本当に予定通りできるのかちょっと怪しいところはありますね。国連会議の性質上、全ての国が公平に参加できる状況になっていることが必要なので、今みたいに新型コロナウィルスの感染ピークの時期が国によっても違う状況が続き、その影響が、特に途上国において長期化した場合は、再延期もありうると思います。

上記通知文書では、10月に本当にできるかの判断については、以下のように述べられています。

Taking into consideration the uncertainty of how the COVID-19 crisis will evolve in the coming months, the Bureau will review the feasibility of convening the session on the new dates at the latest two months in advance.

つまり「2ヶ月前にレビューしますよ」ってことなので、8月初頭には、10月の会議を本当にやるのかの判断が下されるのではないでしょうか。

政治的な意味

この延期が、現在の国連気候変動会議での議論にどういう影響を与えるかについては、もう少し考えてみたいのですが、すぐに分かる政治的な意味が2つあります。

1つは、COP26はアメリカ大統領選のだいぶ後になりそうだということ。アメリカ大統領選挙は11月3日の予定で、これまで、COP26はアメリカ大統領選の直後に開催される予定だったので、大統領選挙の結果の意味を各国が受け止める時間的な余裕はありませんでした。COP26は現状、来年の早くとも4月以降になりそうなので、そうなれば、アメリカ大統領選挙結果の意味を踏まえてのCOP26開催になりそうです。ただし、アメリカ大統領選挙自体も延期される可能性だってあると思うので、そうなるとまた少し話は変わってくるかもしれません。

もう1つは、中国の次期「5カ年計画」が発表された後の開催になりそうだということ。中国の排出量削減に関するスタンス等も、5カ年計画で結構わかるので、それも大きいかなと思います。

世界の2大排出国の動向を踏まえた上でのCOP26開催になりそうな感じではあります。まだ不確実性が大き過ぎますけれども。

新型コロナウィルス感染症拡大のCO2排出量への影響

経済活動が落ちればCO2排出量も一時的には減る

新型コロナウイルス(COVID-19)が世界中で猛威をふるっています。
日本でもついに非常事態宣言が出されました。私の職場も、しばらく前から在宅勤務体制になっています。

このウィルスの影響が長期化するにつれて、人々の健康への直接的な影響だけでなく、経済に対する影響も大きくなってきました。そして、その結果として、CO2の排出量も減っているという推計がいくつか出てきています。私が目にした2つについて、見ていきたいと思います。

Carbon Briefに掲載された2つの分析

イギリスの気候変動問題に関する情報サイト、Carbon Briefはかなり早い時期から、中国の排出量に関する影響への分析記事を掲載していましたが、今週、新たに世界全体に関する推計も出しました。

www.carbonbrief.org

推計結果部分だけを抜き出すと、以下のように述べています。

Carbon Brief analysis of this data suggests the pandemic could cause emissions cuts this year in the region of 1,600m tonnes of CO2 (MtCO2). Although this number is necessarily uncertain, countries and sectors not yet included in the analysis can be expected to add to the total.

推計結果は1,600 MtCO2の減少、ということだそうです。日本風に言えば16億トンで、実に日本の年間排出量(13億トン)を超える排出量が、減少するだろうという推計です。世界全体で言えば、約4%の減少。かなり大きいですね。年間の排出量の落ち込みとしては、リーマンショック等を超えて過去最大とのこと。

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このウイルスの影響がどれくらい長期化するかにもよりますが、この減少はあくまで経済活動停滞による一時的なもので、根底にある化石燃料依存型のエネルギー経済構造が変わらなければ、やがて元に戻ることは間違いありません。ましてや、このウィルスを受けての景気対策が、エネルギー構造の移行を意識しない単なる延命策になったら、最悪排出量は増える可能性すらあります。なので「CO2の排出量的には減ったのはよかったこと」なんて楽観的な考え方はできません(さすがに誰もしないと思いますけど)。

冒頭でも述べましたが、Carbon Briefは、これに先立って、中国の排出量に関する推計記事も公表していました。

www.carbonbrief.org
こちらの見通しでは、春節後の4週間の排出量を例年と比較すると、同時期で約25%、約2億トン減っているという推計でした。ただし、これはあくまで春節後の4週間という時期で比較した場合で、年間に直すとだいたい1〜2%程度の減少です。


また、同記事では中国が既に経済活動を回復させるために色々と施策を打っている影響で、排出量も回復基調にあることが指摘されています。

上記の世界全体の推計は、こちらの中国に関する分析も踏まえてのもののようです。

米エネルギー省エネルギー情報局(DOE EIA)の短期見通し

Carbon Briefの記事でも言及されていますが、アメリカのエネルギー省(DOE)・エネルギー情報局(EIA)が4月7日に発表したShort-term Energy Outlook (STEO) (短期エネルギー見通し)でも、アメリカの排出量の見通しが出されています。

www.eia.gov
CO2に関しては、以下のように述べています。

After decreasing by 2.7% in 2019, EIA forecasts that energy-related carbon dioxide (CO2) emissions will decrease by 7.5% in 2020 as the result of the slowing economy and restrictions on business and travel activity related to COVID-19. In 2021, EIA forecasts that energy-related CO2 emissions will increase by 3.6%. Energy-related CO2 emissions are sensitive to changes in weather, economic growth, energy prices, and fuel mix.

2020年の排出量は、前年比7.5%減になるという予測が示される一方、2021年には3.6%増加するだろうと予測されています。アメリカでの拡大する経済影響を受けてか、減少割合は上記の中国に関する予測よりも大きいですね。

注意点

通常、CO2を始めとする温室効果ガスの排出量に関する統計というのは、2年ほど遅れて出てきます。たとえば、今年2020年の排出量統計が発表されるのは、通常2022年です。これは、温室効果ガス排出量というのが色々な統計を組み合わせて計算されているからです。

なので、以上で御紹介したものも、あくまで推計であり、実測値ではないことは注意が必要です。

NY国連気候行動サミット(UN Climate Action Summit)と、小泉環境大臣のスピーチ

結構大きく取り上げられた国連気候行動サミット

育休中につき、しばらく気候変動系のニュースを遠巻きに眺めながら過ごしていたのですが、9月23日に開催された国連気候行動サミット(UN Climate Action Summit)は、NHKのニュースでもとりあげられるなど、結構、一般的なニュースとして扱われたようで、個人的にはちょっと嬉しく思ってました。 これについて、少し思うところあり、すごい久しぶりにブログを書いてみることに。

網羅的に見たわけじゃありませんが、国連気候行動サミットについての報道の多くは、

  • スウェーデンの16歳の活動家・グレタ・トゥンベリさんのスピーチ
  • 小泉環境大臣のスピーチ
  • 77カ国が2050年までに実質ゼロを宣言したこと

に焦点を当てていたようです。

中でも、トゥンベリさんのスピーチは多くの人に届いたようです。彼女、だいぶ日本でも有名になってきましたね。彼女のスピーチは、この1年でもうだいぶ聞きなれた感はありますが、それでも、政治的配慮なぞ振り払って、ああいう鋭いメッセージを大舞台で明確に打ち出せる姿は眩しく見えます。

余談になりますが、一部の方々は、あれが環境NGOのお膳立てだと言っている人がいるようですが、プロの環境NGOからしてみても、思わぬところで火がついているのが彼女のすごいところなのです。プロの環境NGOは逆に「なんでうちらああいう風に人の心掴めないんだろ」って反省しているくらいです。火がついてから、彼女のすごさにのっかった環境NGOなり業界の人なりはいると思いますが・・・・。

対して、小泉環境大臣のスピーチに関しては、気候変動問題には、「セクシー」にという部分が強調されていて、メディアの報道そのものはともかく、それに対するネット上の反応は結構、批判的、というか、嘲笑するかのようなコメントが多かったように思います。

小泉環境大臣の「セクシー」発言よりも気になること

いくつかのニュース記事を眺めていると、一つのきっかけは下記のロイターの記事のようですね(英語)。

www.reuters.com

どこかに実際の発言の動画がないかなと思って少し探してみたら、ANNnewsのYouTubeチャンネルに抜粋動画ありました。


「気候変動問題はセクシーに」小泉大臣が国連で演説(19/09/23)

正直、これを見ても、私は「まあ確かに、今の若い人には、ポジティブなイメージで関心もってもらうって大事よね」というくらいに思い、特に気にするようなポイントではないと感じました。ロイターの記事で指摘されているように、具体性をもった行動につながらないと意味がないというのはその通りで、その点で批判はされるべきかもしれませんが、歴代の環境大臣も、こういうスピーチをどこかでやった後に気候変動対策について具体的に何かした人は少ないので、小泉環境大臣が特別という感じもしません。

英語で言う「セクシー」は、「カッコいい」「おしゃれ」という意味も多分に含み、それがないと日本の若い人たちが動かないというのは、悲しいかな、本当だと思います。こういう問題を真面目に語り、真面目に取り組むということは、なんだか「ダサい」もしくは「ちょっと暑苦しい」というイメージは、確実に存在しますし、真摯なメッセージのみで動くのであれば、グレタさんのメッセージは1年前から存在しているのですから。

それよりもちょっと気になったのは、そうした報道において、今回のニューヨークの国連気候行動サミットの意義付けが特に語られていないことでした。今回のサミットで意図されたことがろくに語られないことの方が、より問題だと思います。

今回のサミットの位置づけ

端的に言えば、今回の国連気候行動サミットで期待されていたのは、気候変動対策に関する目標の引き上げです。業界では、これを「野心(ambition)の強化」と呼んだりします。

このことは、今回のサミットのオープニングのプレスリリースにも明確に書かれています。以下抜粋と私のざっくり訳&強調です。

「国連の試算によれば、科学から求められる水準である、1.5℃に気候変動を抑制し、既に世界中で発生している気候被害を避けるためには、世界全体の取り組みを3〜5倍に強化しなければならない。(”The UN estimates that the world would need to increase its efforts between three- and five-fold to contain climate change to the levels dictated by science – a 1.5°C rise at most – and avoid escalating climate damage already taking place around the world.”)

(グテーレス国連事務総長は、)「『各国政府はこの場で国別目標(NDC)を強化するということに真剣であることを示す必要がある。都市や企業は・・・(”He said, “Governments are here to show you are serious about enhancing Nationally Determined Contributions under the Paris Agreement. Cities and business are …”)」

多くの国々は、このサミットの機会に、 2030年までに少なくとも45%の排出量を合同で削減することを目指して、それぞれが2020年までに、国別目標(NDC)をどのように更新していくかのステップを示すと同時に、今世紀半ばまでに炭素中立を達成するような国毎の戦略を準備していくかを示した。(”Many countries used the Summit to demonstrate next steps on how by 2020 they will update their Nationally Determined Contributions (NDCs) with the aim to collectively reduce emissions by at least 45 percent by 2030 and prepare national strategies to achieve carbon neutrality by mid-century. “)」

文中にある国別目標(NDC)とは、パリ協定の下で、各国がそれぞれ掲げている排出量削減目標で、多くの国が2030年を目標年とした目標を掲げています。たとえば、日本は「温室効果ガス排出量を2030年度までに2013年度比26%削減する」という目標をかかげています。

上述のような目的意識は、別にサミット当日に発表されたわけではなくて、サミット開催が決まった時からずっとあるものです。たとえば、3月にグテーレス国連事務総長が、英ガーディアン紙に寄稿した下記記事にもそれは明確にかかれています。

www.theguardian.com

世界は、2015年のパリ協定採択以降も、四苦八苦しています。

パリ協定がかかげている世界の平均気温上昇を「2℃より充分低くおさえ、1.5℃に抑える努力を追求する」という目標に必要な水準に、現状の世界各国の取り組みは全く届いていない、というのはよく知られています。

今回は詳しい説明は省きますが、この必要な水準に達しているのは世界の中でもごくわずかな国のみで、日本も含めてメジャーな国はほぼどこも必要な水準に達していません。

パリ協定の下のスケジュールでは、ほとんどの国は、最低限、2020年3月までに、現在の2030年目標を見直して提出することになっています。これは、パリ協定が採択された時のCOP21の決定(パラグラフ23〜25)において決まったことです。そこでは、関連する国連気候変動会議の「9〜12ヶ月前」に提出しなさい、と書いてあり、通常、毎年の国連気候変動会議は12月頭に開催されるので、早い国は、おそらく今年の会議中にも発表してくると思います。

COP21決定の文言上は、再度提出する目標は、今までの目標と同じでも構いません。ただ、これらの決定が書かれた精神は、明らかに、「目標足りてねーから、みんながんばろうぜ」というものであったため、少なくとも、同じ目標を再提出した国が「先進的」と見られることはありません。

どの国も、一度決めた目標を見直して強化する、というのは非常に難しく、また、「自分だけ」やるというのはハードルが高いものです。国内の反対勢力からは、「なぜ我が国だけが努力しなければならないのだ」というツッコミを受ける可能性が高いなどの理由があります。

そのため、みんなで「目標強化をします!」といいやすい「舞台」を用意する、というのが、今回の国連気候行動サミットの、大事な意味でした

この辺の、「本来の国連気候行動サミットに込められた意味」に対して、「日本の代表たる小泉環境大臣が何をしたのか、しなかったのか」という点について、本来は評価があるべきだと、個人的には思います。

サミットの意図に日本政府は応えていない

その点からみると、やはり「セクシー」でないといけないというスピーチをするだけでは、不充分ではあります。ただし、それは小泉環境大臣だけの責任にするのはちょっと酷な話です。そもそも、国の削減目標を変更する意思を示すというのは、国内的にはかなり調整が必要なことで、それは9月頭に就任した大臣が調整なしにいきなり発表できることではありません。

本来は、このサミットで何かを打ち出すつもりであれば、今年(2019年)始めから、国内的な準備がされていなければできない話です。そんな素振りは、残念ながら一切ありませんでしたし、先の選挙でも気候変動を語る人も、それをイシューとして取り上げる報道もほとんどありませんでした。ですから、これは新任の大臣云々という点をこえて、まず日本政府全体として、そもそも、国連気候行動サミットという舞台に、準備もせずに手ぶらで臨んでしまったということになります。

このことをふまえ、今後、国内での気候変動対策の位置づけをもうちょい上げて欲しいなと思う今日この頃。

経済界にも徐々に変化が?

経済同友会・小林代表幹事の会見

2019年2月1日の小林代表幹事の会見での発言がニュースになってました。知人のFacebookの投稿で拝見しました。

headlines.yahoo.co.jp

気になったので、経済同友会のウェブサイトに行ってみると、会見記録では下記のようになっています。

www.doyukai.or.jp

 

3.11から、8年近くが経った。大規模で突発的な(事故も)、ある意味では予測できたことに対応できていなかったという反省も含め、強力なテクノロジーだが使い方を誤ると人類に牙をむいてくる原子力というものに対して、経済同友会は「縮原発」という言葉をずっと使ってきた。(今冬の)ダボス会議で安倍首相が人工光合成光触媒に言及したことには驚いた。従来は化石燃料、石油・石炭、天然ガスへのアンチテーゼとして太陽光、地熱や風力などが位置づけられ、そこで(議論が)止まっていたが、(安倍首相は)環境問題と絡めて CO2をカーボン源にするということまで踏み込まれた。(東京理科大学学長の)藤嶋昭先生の名前を挙げて、Photo catalysis(光触媒)、Artificial photosynthesis(人工光合成)という言葉を使った。イノベーションさえ起こればそれも可能であると、非常に先を見通した発言をされ、ダボスの聴衆は納得したと思う。原子力も大きな電力源の一つではあるが、太陽光は、FIT制度によって補助して展開を図ったにせよ、日本に限らずグローバルにみても8年前に比べて、(発電)コストが安くなった。風力も地熱も、思った以上にコストが下がってきた。あの事故が起こったことを教訓として、原子力発電の安全に対し、1プラントあたり数千億円の規模で大きな投資をした。すると、かつて(原発の発電コストは)5円/kwh などと言われていたものが、気が付いてみると10円を超えている(という状況になってきた)。その一方で、太陽光は10円以下という国もある。2011年3月11日のあの時点から、(発電の)テクノロジー、経済性という意味では相当変化をしてきた。そこをきちんと考慮していかなければいけない。「縮原発」という思想と併せて、石炭(火力発電)は世界の笑いものになってしまう(ことも意識すべきだ)。人によると、日産・ゴーン前会長の勾留、捕鯨、そしてこうした(石炭火力に係る政策の)ことによって、世界から(日本は)特殊な国だと思われている面もある。それも踏まえて、今後どうしていけばよいのか。原子力を使わないにしろ、(日本に)原子炉は40基以上ある。静脈産業として、廃炉産業は人類にとって重要なものであるし、次の産業として成り立つターゲットの一つだ。(運転年限)が40年か60年かは別として、今あるものは動かしつつ、徐々にフェードアウトしていく(べきではないか)。世界では(原発が)400基以上あり、中国、ロシアがどんどん増やしていく中で、廃炉は事故が起きていないもの(に対して)もそれなりのテクノロジーが必要だ。人類にとって重要なテクノロジーであり、そこに日本が貢献できることは十分にある。加圧水型(原子炉)など、原子核エネルギーを取り出す新しい(方式)、外に拡散しないための研究開発などは、日本でも続けていくべきだ。従来型の炉を(今から)やるというのは、もう現実的ではない。今ある原発を動かすことさえ自治体や国民が納得していない中で、性急に政府が言っている(2030年度におけるエネルギーミックスの)20%~22%を原子力が担うという計画はあまり現実的でないので、徐々に状況を見ながら変えていく。ただし、いきなりサドンデスで、原子力エネルギーを今(すぐ)ゼロにするというのも現実的ではないように思う

 

強調部分は、私が敢えて書き足したところです。結構、踏み込んでいますよね。

原子力のフェーズアウトについて問題提起をしていることに加え、石炭についても言及しているのは嬉しい驚きでした。

少しずつ再開

気がつけばもう2019年が始まり、1ヶ月が過ぎてしまいました。

毎年言って、ろくに続いた試しがありませんが、今年こそ、少しずつブログを書いていきたいと思います。

昨年12月にCOP24でパリ協定の通称「ルールブック」が策定されたので、それについてもまたちょっと書いてみたいと思います。自分のための整理も兼ねて。