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2012-02-28

本の浪費癖(ケーススタディ:将棋)

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  生活費が苦しくなっているから経費削減策として始めた新古書店105円本購入だったのだけれど、毎月毎月月末が苦しいのが変わらない。おかしいなと思ったが、よくよく考えればそりゃそうだと思った。

  いままで購入してきた本は基本的に仕事用の本。必要性を感じて購入する。早く目を通したいから新刊本で購入したり、古本であっても専門性の高い本なのでそんなに安くはならない。だから書籍代がかさんだ。今回の経費削減策として、こういう仕事用の本を買う出費を控え目にしたわけです。
  でこれもまた書籍代削減の一環として始めたつもりの、新古書店の105円本で本を安く買うという対策はと言うと、こちらは必要に迫られて買っているわけではないし、今すぐ読まないとという切実さもない。仕事用の本の購入理由とはまるで正反対だ。あくまでお得な特売品を見つけ他の人の手に渡らないうちに確保しておくため。だからいつ読むか分からないけどとりあえず買っておくという、以前とは違う形の書籍費出費が現れたわけで、削減したはずの書籍費を新しい理由の出費にあててしまっている、だからトータルで見ると書籍代出費が大して変ってない、というお粗末な結果になってしまいました・・・
  新古書店の利用もちょっと考え直さないとな、と思ってます。

  それはそうと最近は将棋にはまっている。
  なかなか将棋の強い友人といつか将棋を指せたらという理由もあったのですが、もうひとつ理由が。
  ファミコンソフトをポータブルで出来るゲーム機を買ったり、ゲームボーイカラーの中古を買ってして、いま中古ゲーム屋で投売り価格になっているソフトを買ったりしている。200円とか300円という安値なので、試しにあれこれ買ってしまう。主にパズルゲームを買ったりしたのですが、一方ではファイナルファンタジー3とかドラクエ初期三部作の伝説的評判を耳にしていたのでふらふらと買ってしまってもいる。いま病気療養中で仕事を休んでいるのでこれらの名作RPGをやろうと思えば時間は確かにある。
  でも・・・
  それらRPGをやり遂げて身につけたゲームの技量はせいぜい他のRPGをやる上で役に立つ程度だ。場合によるとそのソフトだけしか通用しない技量だったりするケースも多いのも知っている。労力かけた割りに得るものが少ないような気がして、いま一歩それらRPGを実際やってみることになっていない。
  パズルゲームの方もそのパズルだけの技量になってしまう。
  身につけた技量を長く使えた方がいいな・・・と思ったところで目をつけたのが将棋、というわけです。

  で、いまは身近に対戦相手がいないし、まだまだ素人なので安売り将棋ゲームソフトに相手してもらっている。
  それらの将棋ソフトの中にはテクニック解説や詰め将棋も収められているものがありますが、やはり書籍でそういうものに接した方がいいと思える、ソフトでの使い勝手の不便さがあるのはいたし方ない。

  で、書籍費削減を目指していたはずなのに将棋本を買ってしまう、というあまり感心できないことにいまなってるわけです。
  感心はできないが、しかし、身銭を切って己の欠点を思い知るという面があったのは確か。
  実際いま将棋本をあれこれ買いながら、この無節操ですらある買い方は仕事用の本の買い方と同じだな、と気付かざるを得ませんでした。

  つまりひとつの課題・テーマを自らに課すと、そのテーマを体系的にカバーできる本をとりあえずひと揃え買ってしまう、というやり方なわけです。実際にそれらの本を通読し終えるつもりなら、なかなかに現実的ではないものすごい時間がかかることは分かっているというのに。それでもそういう買い方をしてしまうのは、それぞれの本が担当・得意とする部分をそれぞれあちこち読み合わせることで、広く浅い形から体系性・総合力を少しずつ積み上げていくやり方を自分は採用することが多いと分かるのだ。
  と自分の傾向を分かった風に書きましたが、これを知ったのは(自覚的にはっきりと)今回の将棋本の買い方で分かったことです。

  最初は羽生さんの『序盤の指し方入門』と『実戦であった詰め将棋』(書籍の正式タイトルでないですよ。その本の内容を説明するのを省略するための便宜的タイトル。しかし羽生善治さんの将棋指南本は大量にありますねえ・・・)。序盤と終盤を知るため。そしてこの段階では新古書店で買った安売り本。
  つぎに図書館に寄って(経費にならない形にするため)将棋本を探します。こちら指南本でなく、読み物として将棋に関心を深めるための本を探す。指南本も図書館にはありますが、それを借りる(二週間だけ)のは受験生が参考書を図書館で借りて受験勉強するようなもので、あまり現実的とは言えません。で、借りた本が梅田望夫『どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?−現代将棋と進化の物語』と田丸昇『将棋界の事件簿ー現役プロ棋士の実話レポート』。前者で現在の将棋の様子を知り、後者で将棋界の歴史をおさらいする。(後者の田丸さんの本のタイトルは煽情的ですが、確かに内輪事情をちょっと踏み込んだ形で叙述してたりもしているとは言え、全体的にはしごくまっとうな戦後将棋界の通史になりえています。タイトルが損をしているなあ。ゴシップを好む読者には物足りないだろうし、禁欲的な将棋好きからはタイトルのために手に取ってもらえない、という可能性もある。実際僕は図書館でこの本をゴシップ的なタイトルに惹かれて手に取り、中身をざっと確認して案外まともな通史だぞと思ったから借りたのでした。)

  さてそうやって現況と通史という縦軸・横軸をおさえて、次に雑誌に手を出します。月刊『将棋世界』と『NHKテレビテキスト将棋講座』。いま現在進行中の将棋の様子と、将棋好きはこういった雑誌で何を読んでいるか、を知るため。ここで棋士たちが様々なアプローチの立て方で戦術研究の披露や過去の観戦記から戦術分析をしていることを知る。特にそれぞれの雑誌に付録としてついている小冊子のコンパクト戦術指南書に僕はインパクトを受けました。薄い冊子なので試しに問題解答しながら通読してみましたが、読み終えるのに(解き終え・戦術の咀嚼をするのに)すごい時間がかかりました。まさに参考書的な、読み流すのでなく、内容を吸収しながら読み進める、ページを繰るのに時間がかかる本。もちろん雑誌を読んで、いま将棋界で話題の出来事を知ったり、全国津々浦々で毎週・毎日のように催される将棋イベントの様子を知ったりもしました。

  そして、最初に買った『実戦で現れた棋譜をもとにした詰め将棋』では自分にはまだ早すぎる内容かと思い直し、アマゾンのレビューを参考にもっと基本的な詰め将棋を教えてくれる本として内藤国雄さんの『将棋ワークブック』を古本で購入。届いて早速内容を見ていくと最初の方の問題は「馬鹿にしてるのか」と思うほど簡単な問題から始まっているが、しかしまさにそういう本がよかったのです。後の方の問題はちゃんと難しい。素人将棋指しを親切に導いてくれそうだ。

  ここら辺で将棋本購入を一旦中止にすればいいものの、梅田さんの著書に刺激されて「羽生さん以外の棋士の、戦術指南書も見ておかないとバランスに欠くのでは?」という、単に本を購入したいだけなのに方便を弄して近所の大型書店に出向くことに。
  まずは羽生さんよりひと世代前の名人・谷川浩司さんの『光速の寄せ・総集編』。これは「将棋連盟文庫」での谷川さんシリーズ3巻本の3巻目。1巻は『光速の寄せ・振り飛車編』、2巻が『矢倉編』。まあ手っ取り早く総集編を、と。まさに「光速の寄せ」の人物だから、終盤術を教示してもらえれば、というのが購入理由。
  逆に羽生さんより若い世代の棋士の指南はどんなものかなと思い、竜王・渡辺明さんの『将棋・ひと目の手筋』(「マイコミ将棋文庫SP」)。渡辺さんのことはまだあまり知らないのだが(特に棋風)、ひとまず羽生さんや谷川さんとの違いを確認するために。(それから「NHKテレビテキスト将棋講座」付録の大内俊之さん「後手矢倉」シリーズとの比較(鉄板の守り)も。)買って帰ってまず「まえがき」を読んでみると、幼い頃から手筋の習得・吸収に興味があったという渡辺さん。プロ棋士と活躍する現在、「もう知らない手筋はないだろう」と自負していたはずが「ビックリするような知らない手筋がまだまだあるのだな」と語る。そういう問題が本書にいくつも入れておきましたよ、というまえがき。なかなか上手いまえがきではないか。俄然挑戦してみたくなる。それから攻めの手筋だけでなく受けの手筋も紹介したとある。これはありがたい。
  そしてもう一冊、羽生喜治さんの本を買う。いままで入門者向けの本しか買っていなかったから、本格的な指南書も買わないと。
  羽生さんの著作の、本格志向の代表作に『変わりゆく現代将棋』がある。図書館にあったので内容を詳しく見てみた。タイトルからイメージして、日々進化する将棋の指し方のあり様をあれこれ書いたものかと思いきや、「矢倉」での戦い方をものすごい微細なところまで探究している内容。これはとても自分にはまだまだ早い内容だと、ビビッたほどだ。
  そして梅田望夫さんの将棋本第一弾『シリコンバレーから将棋を観るー羽生喜治と現代』が貸し出し中だったのが返却されているのを(図書館の検索サイトで)見つけ早速図書館に行って借りてきたのだが、その本に『変わりゆく現代将棋』のことが詳しく語られている。もともとこの本の原稿は「将棋世界」で連載されていたもので、そのときの連載のタイトルの副題が「第一章 矢倉」だったのだが、第二章が書かれることなく連載が終ってしまった。実際書籍化したものが矢倉のことに終始するのは先に述べたとおりだ。梅田さんは第一章だけでなぜ連載をやめてしまったのかと、羽生さん本人に聞いたところ、初めから第一章しか書くつもりがなかったとあっけらかんと手の内を明かされる。矢倉を探究することで従来閑却されていた序盤を、勝負所の緊迫化を促したこの「第一章」によって、いま現在将棋界で日々研究され指されている内容自体が「第二章」そのものなのだと梅田さんは言う。
  となると、羽生さんの本格指南を知るには矢倉かな、というわけで、『羽生の頭脳3 最強矢倉』(将棋連盟文庫)。ちなみに1は「四間飛車破り」、2は「振り飛車破り」ときて4が「角換わり・ヒネリ飛車」、5「横歩取り」と続く。この「頭脳シリーズ」に続き「羽生の法則シリーズ」も続々刊行中だ。こちらは駒ごとの対応策らしい。しかしここから一冊、となると、入門書でなく専門書、しかも本人が画期をなした業績となったら「矢倉」を買うしかない。

  さてさて、この時点でだいぶ将棋の本が揃った。これ以外にも図書館にて棋士たちの自伝だったり評伝だったりの「読み物系」もある。でも、こういった読み物系は図書館で借りる他の分野の本と同じく二週間以内に読み終えて返せる類のものだ。

  しかし指南書は違う。読み物系の1ページと指南書の1ページはそもそもの質が違う。読み物は読んでその内容が分かればいいだけだが、指南書はその1ページに描かれた棋譜で提示された「問い」をウンウンと考えて「これか!」とページをめくり解答編を見る、当っていても間違っていても、ページをめくり直し解答編とつきあわせながら手筋の手順を辿り頭に叩き込もうとする(しかし一回では身につきませんよ、何回も繰り返してくださいね、とそれぞれの著者は書いている)。だからより正確に言えば「読み物の2ページと指南書の2ページは、書物のページとしてまるで性質の違うもの」なのだ。

  だ・か・ら・・・そういう指南書を気が早まって4、5冊買った時点で、僕はもう相当量の読書時間(読解時間)を潜在的に抱え込むことになっているわけです。しかもそれぞれの一冊は文庫としても厚目であることも共通している。雑誌の付録の薄いものですら相当頭の負担および時間が費やされるのだから、これら購買欲にかられて積み上げたそれらの一冊一冊のぶ厚さがもう・・・

  話は冒頭にもどりますが、こういう行為は今回の将棋に限ったことでないのです。仕事の必要上の書籍購入もこういうことをしてしまいがちで。新たなテーマ・課題が現れると、読破できるはずもない(まあ、仕事上必要な部分だけ読めばいいのですが、その部分を読むだけにしろ)相当量の書籍を集めてしまう。こうなると純粋の「必要に迫られて」とは到底言いがたい。明らかな浪費癖である。ストレスが溜まるとあれこれ服を買ってしまいカード破産してしまう女性なんかと精神構造は大して変わりないと思います。

  しかしメリットとして(強引な強弁かも知れないが・・・)冒頭に書いた、ゲームソフトの購入が止まったことだ。そしてRPGをやってみようという気持ちが(一時的なものかも知れないが)やんでいる。将棋なら一生遊べる、そういう遊びを手に入れたわけだ。そしてゲームソフトよりもより普遍的・長期的に対戦相手が見込まれる。オンラインRPGのように盛衰がないのだ。これはいいものを見つけた、というわけだ。

  あとは、これで人生で破綻しないよう、のめりこみ過ぎないことに注意すること、ですな・・・

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