変身 自白の心理学

とても久々に読んでみました。
いつだったかも書いたけれど、ようやくの岩波文庫版。

変身・断食芸人 (岩波文庫)

変身・断食芸人 (岩波文庫)

新潮文庫版との比較、と思って読み始めたけれど、新潮版を読んだのはもう高校生のときだからディテールはさっぱり覚えていない。でも何となく岩波版のほうが言葉遣いが古そう、というのは単なるイメージか。ある朝突然虫に変身してしまったグレゴールの姿は実際にはどんなもの?と思うのはいつものことで、節目があって、平たく細い足、動きが鈍い、というとそれはマダガスカルゴキブリ巨大版なのか、それともワラジムシみたいなものか、と悩む。


マダガスカルゴキブリ。苦手な人は注意。
http://members.at.infoseek.co.jp/dentan/species/roach_spc_mdsp1.html
↓ワラジムシその他。やっぱり苦手な人は注意。
http://members.jcom.home.ne.jp/fukumitu_mura/syu_q/koncyu_gai_.html


読後感は忘れてしまっていた。こんなに悲しいとは思わなかった。変身したグレゴールを厭うばかりの家族を彼は恨むことなく、どうにかして理解してもらおうとむなしい努力を続け、何をされても家族を想う。終わりを迎えたときのその唐突感がとても印象的。




こちらは痴漢冤罪からの流れ。

自白の心理学 (岩波新書)

自白の心理学 (岩波新書)

冤罪が何故生じるかと言えば、その一因は無実の被疑者の語る詳細な自白がその要素にある。なぜ無実なはずなのに、そんな詳細が語れたのか、外部のものからはその生成過程が窺えない。被疑者を犯人と固く信ずる取調官と、過酷な取り調べに心身共に疲れ果てた被疑者間の相互作用がついにはやってもいない犯罪ストーリーを作り上げていく。

1954年10月、山口県で起きた仁保事件は、一家6人が惨殺された凶悪事件だが、被疑者とされたのは事件当時大阪にいた岡部保さんだった。この事件では珍しくも取り調べ過程を録音したテープが揃っているために、取調官たちが辛抱強く説教しながら、岡部さんに(やっていない)犯行を思い出させていく過程を知ることが出来る。

仁保事件 - Wikipedia

「うそ」がその場の関係性において出来上がってくることを端的に示す実験として「アッシュの実験」が紹介されている。→集団思考~アッシュの実験カード~
心とは脆いものだなぁとつくづく。