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IT・システム判例メモ

2017-08-04

リツイート行為と著作権侵害/ログイン時の発信者情報開示 東京地判平28.9.15(平27ワ17928)

(1)リツイート行為が著作権侵害に該当するか,(2)著作権侵害行為時ではなく当該アカウントのログイン時の発信者情報の開示を求められるかどうかが争われた事例。


事案の概要


職業写真家であるXは,Xの著作物である写真(本件写真)を,アカウントAがツイッターアカウントのプロフィール画像に設定したこと,アカウントBが本件写真を含むツイートをしたこと,アカウントCらが当該ツイートをリツイートしたことについて,著作権(複製権,公衆送信権)及び著作者人格権侵害に当たるとして,米ツイッター社に対し,発信者情報の開示を求めた。


なお,Xは,開示を求めた発信者情報として,主位的には,アカウントAらが当該アカウントにてログインした際のIPアドレス等については,本判決確定時点でもっとも新しいものを,予備的には,当該ツイート等がなされた際の情報を求めていた。


このような請求を立てた背景としては,(時間の経過とともに通信事業者のログから消えてしまって)個別の投稿をした際のIPアドレス等を保持していないことがあるという事情がある。

ここで取り上げる争点


(1)リツイート行為による本件写真の表示により,Xの著作権等が侵害されたことが明らかといえるか(プロバイダ責任制限法(プロ責法)4条1項1号)


(2)判決確定日時点における最新のログイン時IPアドレス等が,プロ責法省令に定める情報に該当するものとして開示対象となる発信者情報に該当するか


争点(2)について敷衍すると,同省令4号が定める「侵害情報に係るアイ・ピー・アドレス」には,侵害行為そのものを行った時点において割り当てられたIPアドレスに限らず,当該アカウントがログインした時点に割り当てられたIPアドレスも含まれるかという点が論点となっている。通常,ツイッターでは,使用するたびにログイン行為は発生しないため,ログイン時と,侵害行為時とでは時間的感覚があることが多い。同省令7号にいう「侵害情報が送信された年月日及び時刻」についても,同様である。


なお,本件写真をプロフィール画像に設定する行為や,本件写真を含むツイートする行為が著作権等侵害に該当することについては争いがない。

裁判所の判断


本件について判断したのは,東京地裁民事46部,最近異動してしまったが,長谷川コートである。

争点(1)について

リツイート行為の仕組みについて述べつつ,公衆送信を否定した。

本件写真の画像が本件アカウント3〜5のタイムラインに表示されるのは,本件リツイート行為により同タイムラインのURLにリンク先である流通情報2 のURLへのインラインリンクが自動的に設定され,同URLからユーザーのパソコン等の端末に直接画像ファイルのデータが送信されるためである。すなわち,流通情報3〜5の各URLに流通情報2 のデータは一切送信されず,同URLからユーザーの端末への同データの送信も行われないから,本件リツイート行為は,それ自体として上記データを送信し,又はこれを送信可能化するものでなく,公衆送信(略)に当たることはないと解すべきである。


同様に,リツイート行為によって,写真画像ファイルが複製されるものではないとして複製権侵害,さらには著作者人格権侵害も否定した。


これに対し,Xは,画像ファイル自体は確かに送信・複製されており,その主体は,リツイートを行った者であると主張した。この点については,まねきTV最高裁判決(最判平23.1.18)を「参照」しつつ,送信の主体は,写真をアップしたアカウントの使用者であるとした。


よって,アカウントCらのリツイート者に関する発信者情報開示請求はすべて棄却された。

争点(2)について

最新のログイン時のIPアドレスや,同タイムスタンプが「侵害情報に係るIPアドレス」や「侵害情報が送信された年月日及び時刻」に該当するのかどうかという点について,裁判所は次のように省令の解釈論を述べた。

プロバイダ責任制限法4条1項は「特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は〔中略〕当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名,住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。〔中略〕)の開示を請求することができる」と定めており,これによれば,「侵害情報の発信者の特定に資する情報」であれば広く開示の対象となるとみることはできず,「当該権利の侵害に係る」ものでない場合には開示の対象とならないと解すべきである。そして,同項は,これに加えて,具体的に開示の対象となる情報は総務省令で定めるとし,省令はこれを受けて上記のとおり定めているのであるから,省令4号の「侵害情報に係るIPアドレス」には当該侵害情報の発信に関係しないものは含まれず,また,当該侵害情報の発信と無関係なタイムスタンプは同7号の「侵害情報が送信された年月日及び時刻」に当たらないと解するのが相当である。



そのうえで,最新のログイン時のIPアドレス等は,侵害行為とは「無関係であることが明らか」であるとして主位的請求を否定した。


なお,結論は,プロフィール画像に設定したアカウントA及びツイートをしたアカウントBに対応するメールアドレスの限度で開示を認めた。

若干のコメント


この種の発信者情報開示請求,削除請求に関しては,何人かのトップランナー弁護士たちがおり,私個人は,それほど多くの実務を取り扱っているわけではないので,詳しい解説はそういった方々にお任せします。この分野において「(最新の)ログイン時」のIPアドレスを開示してもらえるかどうかというのは実務上の大きな論点で,一定数の裁判所の判断がなされているようです。もっとも,初期のころ(平成26年ころ)には,開示を認めた事例もあるようですが,平成28年途中からは本件のように否定する事例が続いているようです*1。プロ責法及び省令の文言解釈からすると,否定されるのもやむを得ないに思われますが,権利救済の途を閉ざさないようにするには,省令(あるいはプロ責法本体)の改正も検討すべき段階にあるのかもしれません。


もう一つの争点であるリツイート行為の意義ですが,これも,著作権法の視点から見れば,裁判所の判断が妥当だと思われます。もっとも,リツイート行為も,名誉棄損,プライバシー侵害といった不法行為が成立する可能性もありますし,児童ポルノ規制法違反ほか,犯罪の成否においては,別の考え方で「主体」が論じられると思われるため,あらゆる点において免責になるわけではないことに注意すべきでしょう。

*1:このあたりの流れは,2017年7月24日に開催された町村泰貴北大教授の講演会で知りました。

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