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IT・システム判例メモ

2018-01-15

申込書記載文言の契約内容への組入れ 東京地判平28.11.15(平27ワ21838)

申込書記載の文言が契約の合意内容になっているか否かが争われた事例。

事案の概要


XとYは,平成27年3月18日,YがXに対し,転職情報サイトZへの求人広告の掲載,スカウトメールの代行等を委託し,その対価としてYがXに委託料約140万円を支払うことを内容とする契約(本件契約)を締結した。


同月30日,Yは,Zに対し,広告掲載をキャンセルする旨の連絡をし,求人広告掲載は中止された。


本件契約の締結にあたってYはXに対して本件申込書を提示しており,その末尾には,「サービスに関する利用規約に同意する」旨の文言が記載されていた。また,申込書の下部には,少なくとも3ポイント以上のサイズで,

当社の故意または重過失による場合を除き,本サービスの提供が中止・中断され,又は期間満了を待たずに終了した場合であっても,申込者は本サービスの料金全額を支払うものとします。


という記載があった。Yは,本件申込書の記載及び本件利用規約の内容が本件契約の合意内容になっていることについて争った。

ここで取り上げる争点


本件申込書の下部の記載内容及び本件利用規約が本件契約の内容を構成するか

裁判所の判断


本件は,この点がほぼすべてであるため,少々長いが引用する。

(1) (略)XとYは,本件申込書及び本件利用規約を交付した上で,本件契約を締結していること,Yの担当者であるC又は代表者であるBは,本件申込書に会社名を記名押印し,社判を押印していることが認められるのであるから,本件申込書及び本件利用規約の記載内容は,本件契約の合意内容になっているものと認められる。

(2)  これに対し,Yは,本件申込書の下部の文字は小さすぎて,判読困難であると主張する。しかしながら,前記認定事実1(2)のとおり,本件申込書の下部の文字の大きさは,少なくとも3ポイント以上であることが認められ,かかる大きさに照らせば,記載内容の判読は可能である。
また,前記前提事実のとおり,Yは,平成12年に成立した株式会社であり,証拠(Y代表者本人)及び弁論の全趣旨によれば,Yは,その業務を行うに当たり,契約締結等を複数行っていることが認められる。このように,Yは,営利を目的とした会社として,業務に関連して,契約を締結する以上,契約書であれ,申込書であれ,金銭支払義務が発生する書面において,仮に,Y担当者やYの代表者にとって判読困難な文字が記載されていれば,その内容について,Xの担当者に,問い合わせをすることは十分に可能かつ容易であり,むしろ確認するべきである。また,本件において,殊更に本件申込書の下部を隠されていたであるとか,短時間での署名押印を求められたであるとか,問い合わせや確認を困難にするような事情は見受けられない。それにもかかわらず,問い合わせや確認をせずに,本件申込書に社判を押印して契約締結をしている以上,記載内容が判読困難であることを理由に契約締結の効果を否定することはできないものと解するのが相当である。

(3)  したがって,Yの主張は採用できず,本件契約においては,本件申込書の下部に記載された内容及び本件利用規約に記載された内容も含めて,合意内容となっているものと認められる。

そうすると,本件申込書に記載された「当社の故意または重過失による場合を除き,本サービスの提供が中止・中断され,又は期間満了を待たずに終了した場合であっても,申込者は本サービスの料金全額を支払うものとします。」との内容も,本件契約の合意内容になっているのであるから,Xは,Yに対し,本サービスの料金全額を請求することができるものと認められる。



若干のコメント


本件は,紙でのやり取りにおける利用規約等の条項の有効性が問題となった事案ですが,ウェブを通じた取引においても同様に当てはまると考えられるため,取り上げました。


申込書に記載された不動文字の大きさが3ポイントというのは,かなり小さいと思うのですが,判読不可能ではないこと,B2B取引なのだから,わからなければ問い合わせすればよいし,その機会もあったことなどから,すべて契約の内容を構成するという判断でした。


この事案を見て「紙ベースで渡す規約・約款の文字の大きさは3ポイントでも大丈夫」と判断するのは危険ですが,少なくともB2B取引では,「読んでない」という言い訳は通用しづらいでしょう。


また,定型約款に関する規定は,改正民法548条の2以下に新設されました。本件における広告掲載に関する契約は,「その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの」(定型取引)に関する条項の総体だといえそうですから(同条1項柱書),申込書下部の記載と利用規約は,定型約款に該当すると考えられます。そうすると,同項1号により,個別の条項について合意したことがみなされるように思われます(もちろん,紛争になれば,Yは定型約款の該当性を争ってくるものと思われますが。)。

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