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IT・システム判例メモ

2018-06-12

写真素材のイラスト化 東京地判平30.3.29(平29ワ672)

同人誌のイラストの一部に写真素材が流用されたとして著作権侵害の有無が争われた事例。


事案の概要


Xが,Yにおいて販売する同人誌に,Xが販売する写真素材をイラスト化して掲載して販売する行為が著作権侵害にあたるとして損害賠償を求めた事案。


問題となった写真素材。

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問題となったイラスト(下方の本の背表紙部分の飲み物を飲む男性)

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ここで取り上げる争点


著作物性と著作権侵害の有無

裁判所の判断


確かに写真素材なので,類似の写真が多く存在するとはいえ,裁判所は以下のように述べて著作物性を認めた。

(1) 写真は,被写体の選択・組合せ・配置,構図・カメラアングルの設定,シャッターチャンスの捕捉,被写体と光線との関係(順光,逆光,斜光等),陰影の付け方,色彩の配合,部分の強調・省略,背景等の諸要素を総合してなる一つの表現であり,そこに撮影者等の個性が何らかの形で表れていれば創作性が認められ,著作物に当たるというべきである。

(2) これを本件についてみると,本件写真素材は,別紙1のとおりであるところ,右手にコーヒーカップを持ち,やや左にうつむきながらコーヒーカップを口元付近に保持している男性を被写体とし,被写体に左前面上方から光を当てつつ焦点を合わせ,背景の一部に柱や植物を取り入れながら全体として白っぽくぼかすことで,赤色基調のシャツを着た被写体人物が自然と強調されたカラー写真であり,被写体の配置や構図,被写体と光線の関係,色彩の配合,被写体と背景のコントラスト等の総合的な表現において撮影者の個性が表れているものといえる。したがって,本件写真素材は上記の総合的表現を全体としてみれば創作性が認められ,著作物に当たる。



しかし,複製又は翻案には当たらないとした。

(3) 本件イラストは,別紙2のとおりのものであり,A5版の小説同人誌の裏表紙にある3つのイラストスペースのうちの一つにおいて,ある人物が持つ雑誌の裏表紙として,2.6センチメートル四方のスペースに描かれている白黒のイラストであって,背景は無地の白ないし灰色となっており,薄い白い線(雑誌を開いた際の歪みによって表紙に生じる反射光を表現したもの)が人物の顔面中央部を縦断して加入され,また,文字も加入されているものである。
  (4) 前記1(2)で説示した本件写真素材の創作性を踏まえれば,本件写真素材の表現上の本質的特徴は,被写体の配置や構図,被写体と光線の関係,色彩の配合,被写体と背景のコントラスト等の総合的な表現に認められる。一方,前記前提事実(3)のとおり,本件イラストは本件写真素材に依拠して作成されているものの,本件イラストと本件写真素材を比較対照すると,両者が共通するのは,右手にコーヒーカップを持って口元付近に保持している被写体の男性の,右手及びコーヒーカップを含む頭部から胸部までの輪郭の部分のみであり,他方,本件イラストと本件写真素材の相違点としては,[1]本件イラストはわずか2.6センチメートル四方のスペースに描かれているにすぎないこともあって,本件写真素材における被写体と光線の関係(被写体に左前面上方から光を当てつつ焦点を合わせるなど)は表現されておらず,かえって,本件写真素材にはない薄い白い線(雑誌を開いた際の歪みによって表紙に生じる反射光を表現したもの)が人物の顔面中央部を縦断して加入されている,[2]本件イラストは白黒のイラストであることから,本件写真素材における色彩の配合は表現されていない,[3]本件イラストはその背景が無地の白ないし灰色となっており,本件写真素材における被写体と背景のコントラスト(背景の一部に柱や植物を取り入れながら全体として白っぽくぼかすことで,赤色基調のシャツを着た被写体人物が自然と強調されているなど)は表現されていない,[4]本件イラストは上記のとおり小さなスペースに描かれていることから,頭髪も全体が黒く塗られ,本件写真素材における被写体の頭髪の流れやそこへの光の当たり具合は再現されておらず,また,本件イラストには上記の薄い白い線が人物の顔面中央部を縦断して加入されていることから,鼻が完全に隠れ,口もほとんどが隠れており,本件写真素材における被写体の鼻や口は再現されておらず,さらに,本件イラストでは本件写真素材における被写体のシャツの柄も異なっていること等が認められる。これらの事実を踏まえると,本件イラストは,本件写真素材の総合的表現全体における表現上の本質的特徴(被写体と光線の関係,色彩の配合,被写体と背景のコントラスト等)を備えているとはいえず,本件イラストは,本件写真素材の表現上の本質的な特徴を直接感得させるものとはいえない。



しかも,念のため,として,本件写真素材の著作権はカメラマンに留保されている可能性があるとして,権利帰属も認めていない。

若干のコメント


特に新しい判断があったというわけではないですし,一見して明らか・・な事例ですが,写真の著作物については他の著作物と比べて創作性のハードルが低いなあと感じた一例として取り上げました。

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