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2007-10-12

論文力(1)

| 00:22

また座談会の話を引っぱってしまうが,「論文」を書く力(以下,「論文力」とする)をどうやって高めるか,という趣旨の質問も多かった。


新司法試験の最大のヤマ場は論文試験である*1。座談会での質問に対する答えは場当たり的にしてしまった部分もあるため,今回から新司法試験の論文について,考えてきたことを何回かに分けて書いていこうと思う。


論文の対策については,いろんな人がいろんなことを言うように,何か特定の方法が正解というわけではない。ただし,試験までの勉強時間は限られているだけに,やみ雲に何かに取り組むというのではなく,自分の弱点がどこで,そこに効く勉強は何か,ということを考えながら対策を打つというのは重要なことだ。


「弱点」を考えるには,「分析」が必要になる。例えば,「利益を増やす」というゴールを達成するためには,「売上を増やす」のか,「コストを削減するのか」という視点が必要だ。さらに前者の場合でも,「販売数量を増やす」のか,「販売単価を上げる」のか,数量を増やすにしても「テリトリーを拡大する」のか「販売チャネルを増やす」のかといった視点が考えられる。分析方法はいろいろあるだろうが,このように分析的にとらえないと,「とにかくがんばれ」と営業の尻を叩くだけで終わる。


話がそれたが,「論文力」を強化するにも,このようなフレームワーク的思考が有効だと思う。「論文,なんとかしなくちゃ」というだけでは,自分がやろうとしている対策が果たして有効に機能するかどうかもわからない。


切り口の一つとして,「科目」「分野」が考えられる。例えば,新司法試験の論文科目は8科目あるから,科目別に自分の得意・不得意を把握し,不得意な科目の対策に充てる時間を増やすという考え方だ。不得意と感じる科目については,さらに細かく分野ごとに分けて考えることもありうる。この切り口については,おそらく誰でも考えているだろう。


次に,科目横断的に見て,論文を書くプロセスに注目した切り口を考えてみる。論文を書くには,問題文・資料を読み,その事実関係を把握し,問題点を抽出して,それに検討を加えて一つのストーリーを構成することが必要になる。その過程では,六法(法文)のように全員に等しくアベイラブルな情報だけでなく,各個人が(頭の中に)有する判例・学説等の脳内データベースにアクセスすることが許されているし,これを活用することが必須である。そして,構成したストーリーを採点者に対して伝えるために,わかりやすく文字に落とすということが必要だ。


このようなプロセスに注目すると,論文力は,


 論文力 = 知識量 × 分析力 × 表現力

という3つの要素の積に因数分解できるんじゃないかと思う。つまり,いくら分析力や表現力に優れた人でも,判例や過去の議論の知識がほとんどゼロでは,素人の答案になってしまうだろう。いくら優れたストーリーを組み立てられる人でも,何が書いてあるんだかわからないような日本語になっているようでは,よい評価は出ない。掛け算だから,いずれかの要素のうち,ひとつでもゼロに近いようでは致命的だ。


もちろん、上記3要素はそれぞれ独立しているとは限らない。すなわち、うまく表現できない人というのは、表現力だけの問題ではなく、分析ができていないといえるから、別個の要素として捉えることは適切かという疑問は残る。確かにそうだと思うが、これはあくまで自分を分析するためのフレームワークに過ぎず、単純化して考えているので、正確さを求めているわけではない。さしあたり、3要素が絡んでいるというレベルでは大きくはずしていることはないだろう。


以上の検討より,上記3つの要素の「積」で決まるのだから,各要素について,まんべんなく向上させる必要がある。特に,自分の弱点となっているはどこで,その部分に適切な手当をすることが重要だろう。


(つづく)

*1:この断定的な書き方に疑問符を持つ方がいるかもしれない。確かに私も短答で圧倒的優位を築けば合格は固いと考えるが,時間配分的にも精神的重圧的にも論文はヤマ場であると思う。

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