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2016-12-14

棋士の一分

| 23:26

ハッシーこと橋本崇載八段による暴露本(?)。


発売日の12月10日に新幹線に乗る前に買い,その日のうちに読めてしまう内容。


不正対局問題が公表された10月12日の時点ですでにこの本はおおむね出来上がっていたようで,事件を受けて多少の加筆修正がされたとある。内容自体は,だいたい想像がつくものであり,それほどインパクトのあるものではなかった。故米長会長に関する記述では,やや指し過ぎ*1ではないかと思われるが,将棋界に対する警鐘というか苦言,意見については概ね私も同意できるものだった。


例えば,「運営にプロを入れるべき」「プロ棋士が多すぎる」「(スポンサー離れの状況下で)棋士たちに危機意識が足りない/物言わない」というところは,そのとおりだなと思う。ただコンピュータ将棋との向かい方については,多少の違和感もある(ここは人によって感覚が違うところであり,その点は「不屈の棋士」を読むとよくわかる。。


本書に書かれている話ではないが,最近,若手棋士を中心に,普及イベントがよく行われている。それは,ファン拡大の必要性など,危機意識が原動力になっていると思われるので,橋本八段の批判は必ずしも当たらないのかもしれない。でも,サークル活動のような手作り感満載のイベントに数十人のファンを集めても,コアなファンが数十人レベルで増える程度で,何回やっても棋士が食べていけるようになるものではなさそうだ。このあたりにも「運営のプロ」不在を感じる(真剣にやっている若手棋士を腐すようなことは言いたくないのだけれど・・)。


こうしてみると(少なくとも一部の)若手はファンに真摯に向き合っている一方で,連盟自身はまったくファンを向いていないというちぐはぐな状況も残念だなと,本書を読みつつ思ったところ。


不正対局問題が起きても,コンピュータに人間が勝てなくなっても,将棋というゲーム自体がなくなることは考えにくいが,組織がしっかりしていないと,プロ棋士の世界がなくなることは容易にわかる。本書は,文章としてこなれていない部分もあったり,構成も「一丁あがり」感が漂ってくるが,橋本八段のこうした問題意識,危機意識が伝わってくる渾身の勝負手といえるだろう。この本が出ることによって,業界の何かが変わるというものではないだろうけれど,少なくとも今後の橋本八段の連盟における立ち位置は微妙なものになるのではないかという心配があるが。。

*1:将棋用語で,勇み足というか,やり過ぎの意。

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