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2018-03-02

不正競争防止法改正案について(データの保護)前編

| 00:22

平成30年2月27日に,「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」が閣議決定され,改正条文案などが公表された。

http://www.meti.go.jp/press/2017/02/20180227001/20180227001.html

不正競争防止法を改正して,データの不正取得行為等を「不正競争」に含めることで,ビッグデータを保護しようという動きがあり,この点については,当ブログでも取り上げたが,昨年7月から立ち上がった産業構造審議会 知的財産分科会 不正競争防止小委員会で検討されていた。今回の改正案は,今年の1月19日に公表された「検討中間報告」(以下「中間報告」という。)の内容を踏まえたものである。改正法の条文の解釈に当たってはこれを参照することは必須だろう。それにしても,異様なスピードでの改正である。


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ビッグデータは,営業秘密としては,通常は秘密管理性・非公知性を満たさず,創作性の要件から著作物性も満たさないため,現行法では十分な保護を受けられないといわれていた。データの流通・利活用*1を促進するために悪質性の高い行為に規律を設けることとなったというのが改正の方針である。


まず,改正条文案を見てみる。


不正競争は,不正競争防止法2条1項各号に列挙されている。これの現行10号と11号の間に,一気に6つの類型を挿入している*2

2条1項11号

窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により限定提供データを取得する行為(以下「限定提供データ不正取得行為」という。)又は限定提供データ不正取得行為により取得した限定提供データを使用し、若しくは開示する行為


営業秘密不正取得行為等を表す現行4号も若干の表現が修正されているが,それとパラレルな規定であって,基本的には4号の「営業秘密」の部分が「限定提供データ」に変わっている点のみが異なる。


客体「限定提供データ」

では,保護の客体である「限定提供データ」とは何か。


営業秘密の定義(2条6項)の隣に7項が挿入され,「限定提供データ」が定義されることになった。


2条7項

この法律において「限定提供データ」とは、業として特定の者に提供する情報として電磁的方法(略)により相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報(秘密として管理されているものを除く。)をいう。


要件としては,(A)「業として特定の者に提供する情報」であって,(B)「電磁的方法により相当量蓄積され」ていて,(C)「電磁的方法により管理され」ている,(D)「技術上又は営業上の情報」であるが,(E)「秘密として管理されているもの」は除かれる。


限定的な外部提供性

まず,(A)は,中間報告の「(ii)限定的な外部提供性」を具体化したものと思われる。中間報告によれば「データ提供者が,外部の者からの求めに応じて,特定の者に対し選択的に提供することを予定しているデータ」が対象だとされている。そうすると,完全に公開されているようなものは除かれ,条文で「提供する情報」(中間報告では「予定している」)とあるから,現にサービスとして提供していなくても,その予定があれば客体に含まれると考えられる。典型的には,有償で提供・販売しているデータなどが対象になろう。


相当量蓄積

今回の要件の中で一番問題になりそうなのは(B)「相当量蓄積され」ていることだと思われる。冒頭で述べた小委員会の資料を追っていくと,第1回(2017年7月開催)の資料7「行為規制の前提となるデータの要件に係る検討」*3の論点5「データ量に係る論点」では,

一定の技術的な管理を破ってデータを取得という行為を規制する観点から、取得したデータ量・割合の多寡に関わらず、規制すべきと考えられる。

と,データ量は要件に含めないとされ,その後の中間報告でもデータ量については特に言及されていなかったが,法文案で「相当量蓄積」という要件で限定されている。相当量っていう文言からは何らの基準も見出せず,何万件,何ギガバイトあるいはカバー率どれくらいなのか,というのは事案によるとしかいいようがなく,範囲を限定したのかもしれないが,予測可能性はかえって悪化してしまったような印象を受ける。


技術的管理性

検討段階では,電磁的アクセス制限手段(ID・パスワード管理,データの暗号化等)により管理されているものを対象にするということになっていたが,法文上では(C)のとおり,電磁的方法により管理されているという表現しかなく,アクセス制限手段を要しないような定め方になっている。ただし,改正法の概要の説明資料2頁には下記のように「ID・パスワード等の管理を施した上で提供されるデータ」とはっきり書いているが。


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技術上又は営業上の情報

(D)の「技術上又は営業上の情報」は,現行不競法の営業秘密の定義の中でも出てくるものであるから,特に改正によって解釈が変わることはないだろう。この要件が実務上問題になることはあまりないと思われる。


営業秘密を除く

(E)の秘密として管理されているものは除く,という要件は,営業秘密の保護と重畳的に適用されることを避けるためだと思われる。秘密として管理されているものは,2条6項の営業秘密に該当するからそちらでどうぞ,ということか。


規制対象となる行為

ここは,営業秘密侵害行為との比較をしようかと思ったが(基本的にパラレルになっているが,細かい違いがある。),力尽きたのでまた。


なお,損害の推定規定(現行法5条)の対象には限定提供データに関する行為も含まれるようであるが,営業秘密と異なって,刑事罰はないようである。

*1:個人的にはこの「利活用」という言葉は使いたくない・・

*2:不正競争は,2条1項10号の2のように枝番をつける形式ではないから,毎度類型が増えるたびに番号がずれていく。現行14号,15号あたりは割とよく使うのだけれど,判例検索のときなど,使い勝手が悪い。

*3http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/chitekizaisan/fuseikyousou/pdf/001_07_00.pdf

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