土曜日はペンシルバニア州中央部にあるFranklin & Marshall Collegeで開かれた"Women and Work"という会議に出席した。


私は日本の労働事情について話した。まずは労働参加率、管理職に占める女性比率や子供を持つ共働き夫婦の家事時間などデータを紹介。男性管理職の長時間労働は、彼らが部下の教育やメンターリングに時間を割いているためだと説明した。これは部下の立場からは大変ありがたいが、彼らの妻から見ると家事育児の負担が重くなり問題である。私はワークライフバランスを推進する記事を書いているが、上司にあれこれ相談することで彼らの時間を"搾取"しているわけで、矛盾した気分であると話した。


聴衆は大学の教職員や女性学に関心を持つ学生たち。女子学生だけでなく男子学生の姿もあり、質問も活発に出ていた。


私が聴いた中で一番面白かったセッションは"Women in Non-Traditional Fields"。米軍とノルウェー軍からは女性大佐が1人ずつ、米軍から男性の中佐1人が来て、パネリストを務めていた(写真)。


女性の社会経済的地位が上がるにつれて、こうした分野で働く女性が増えるのも当然---。理屈では分かっていたが、実際に話を聞いてみると目からウロコが落ちることばかりだった。


体力面から「女性は戦えない」と思われがちだが、パネリストの1人はいくつかの研究を紹介してそれを否定。イラクで敵の襲撃から2度にわたって要人を守り、この分野で女性で初の勲章をもらった兵士らの写真を紹介した。


興味深かったのは、軍隊において女性を増やす理由に関する話。ノルウェーの女性大佐曰く「イラクアフガニスタンで、われわれは民主主義のお手本にならなくてはいけない。男性だけが駐留していては、それはできない」。イスラム教徒に男女平等を示すには、女性兵士も必要というわけだ。実際、この女性大佐はアフガニスタンでの情報収集で成果を上げた。現地女性が外国人男性には話さないことも、女性兵士には話す。女性兵士は個人宅にも入りやすい。


この辺りの発想は、市場の人口構成を反映するためにダイバーシティを推進する企業と全く同じだ。米国の男性中佐も「優秀な人を男女問わず採用しなくてはいけない」と企業の人事担当者と同じことを言っていた。彼が紹介した世論調査の結果によると、すでに米国人の7割以上が「女性も場所を問わず、戦地に赴いて良い」と回答している。30年前には、このように答える人は半分以下だったという。好むと好まざるとに関わらず、女性の進出はあらゆる分野で起きるのだ。


軍隊は女性の進出における最後の砦だろう。日本ではまだ、保守的な人もリベラルな人も「女性は戦えない/戦わない」と思っている。「戦えない」というのは、特定の時期に特定の地域で女が軍隊にいないという事実をもって、過度に一般化したにすぎない。また「女性は戦争をしない」とリベラルな人はよく言うが、それは甘い。女性が自由に職業選択できるようになったら「国を守るために戦いたい」と思う人だって当然出てくるはずだ。


私を会議に招待してくれた女性センター長のジュディ・ピアソンさんは「アメリカでも30年前に女性解放運動が起きた時は『女性は軍隊になど入りたがらない』と言われていた」と話してくれた。日本の状況はちょうど、その頃のアメリカと同じような感じなのだろう。