ローマはなぜ滅んだか 弓削 達

ローマはなぜ

ローマはなぜ滅んだか (講談社現代新書)

ローマはなぜ滅んだか (講談社現代新書)

ローマの滅んだ理由と現代の日本の姿を透して見る、とありますが第7章が面白かったですね。「性解放・女性解放・知性と教養文化」「女性の解放と彼女らの性の自由化は伝統的な社会規範の崩壊であった。そのような女性は巨大財産に守られたローマの支配層から現れ、経済大国ローマの生み出した繁栄のあだ花であった」と言っています。クラウディウス帝の妻メッサーリーナは夫が眠っている間、市井にでかけ娼家で春を売った。このように性道徳の頽廃があり、不健康な奢侈・美食に流れ非生産的に無益に浪費されることにより、支配者集団の社会そのものに病的で絶望的な変形を与えた。とも言っています。当時の風刺作家らの話を多用しています。

この本はローマ滅亡論を歴史的な観点から解き明かしてはいなくて、現代に生きる人への不安(現代の崩壊?)への処方箋を書いたと言っています。「食べるために吐き、吐くために食べた」と言う話を聞いたことがありますが、ローマではそれが実現していて、それが過食の贅沢のみでなく、そのような奢侈と浪費に対する文明批評でもありました。