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reponの日記 ないわ〜 404 NotFound(暫定) このページをアンテナに追加 RSSフィード

2008-01-25

ベーシック・インカムを導入したらどうなるか試算してみる

先のエントリでid:fromdusktildawnさんからコメントをいただいたのですが、概算でもベーシック・インカムの導入に当たってどうなるかを計算してみないと影響が見えないことがわかりました。

そこで、簡単ですが計算してみたいと思います。


以下、「福祉社会と社会保障改革」(小沢修司著)での試算を現在の最新のデータで追ってみることにします。

もちろん、以下の試算は全て私の責任によるものです。



BI(ベーシック・インカム)を導入するためにはどのくらいの予算が必要でしょうか?


この計算は簡単です。

日本の人口に、BIで補償する額を掛ければ良いだけです。この額は、8万円としましょう。一人年間96万円です。国民年金が78万900円なので、それより18万ほども高い金額です。生活保護費の一人当たり月額が6万843円*1なので、妥当な額ではないかと思います。


年間の必要予算は、

127,785千人*2×96万円=122兆6,736億円

となります。


これを社会保障給付費の一部廃止と一律の所得税でまかなっていきます。


社会保障給付費は、総額で88兆円強*3です。しかし、社会保障給付費は現物給付と現金給付に分かれます。

社会保障給付費のうち、労働災害*4、保健医療*5、住宅*6はセイフティーネット的な役割が強いので除外し、他の部分の現金給付部分をすべてBIに代えると計算すると、49兆4,948億円となります。


差し引くと、

122兆6,736億円−49兆4,948億円=73兆1,788億円


残りは所得税でまかなうことになります。

所得税は、様々な控除は廃止して、また累進制も無くし、一律の税率にします。

所得税の対象となる給与総額は、様々な控除がされた後の金額に税率が掛けられているので、それらの控除を無くし、基本的に全ての給与に税率を掛けます。

給与総額は213兆700億円*7です。

従って、税率35%とすると、税収は74兆7,950億円となり、これで達成できます。


仮に、所得税のみでBIをまかなうとしても、税率60%で税収は128兆2,200億円となり、社会保障給付費に一切手をつけなくても達成可能です。


これらの税率に変更した場合、現在と導入後ではどのように所得が変わるでしょうか?

社会保障給付費をBIに回すとBI税率は35%ですが、ここでは社会保障給付費をBIに入れず、BI税率60%として計算してみましょう*8


ケース1:家族4人で、夫婦(片働きで専業主婦)と子ども2人の場合

<現在の収入額>

年収(万円)社会保険料税金控除後所得
100121,0000879,000
300306,00058,0002,636,000
500501,000200,0004,299,000
700695,000529,0005,776,000
1000907,0001,105,0007,988,000
15001,094,0002,551,00011,355,000

<BI導入後の収入>

年収(万円)社会保険料税金BI収入控除後所得差額
10048,000570,0003,840,0004,222,0003,343,000
300122,0001,726,0003,840,0004,992,0002,356,000
500200,0002,879,0003,840,0005,761,0001,462,000
700278,0004,032,0003,840,0006,530,000754,000
1000362,0005,782,0003,840,0007,696,000-292,000
1500437,0008,737,0003,840,0009,666,000-1,689,000

税率60%でも、年収700万くらいまでの世帯では増収となります。


ケース2:家族2人で、シングルファーザー(またはマザー)と子ども1人の場合

<現在の収入額>

年収(万円)社会保険料税金控除後所得
100121,0000879,000
300306,00096,0002,598,000
500501,000320,0004,179,000
700695,000681,0005,624,000
1000907,0001,280,0007,813,000
15001,094,0002,802,00011,104,000

<BI導入後の収入>

年収(万円)社会保険料税金BI収入控除後所得差額
10048,000570,0001,920,0002,302,0001,423,000
300122,0001,726,0001,920,0003,072,000474,000
500200,0002,879,0001,920,0003,841,000-338,000
700278,0004,032,0001,920,0004,610,000-1,014,000
1000362,0005,782,0001,920,0005,776,000-2,037,000
1500437,0008,737,0001,920,0007,746,000-3,358,000

年収500万くらいを境にして、所得の低かった層にかなりの補助がなされています。


ケース3:共働き子ども2人の場合

<現在の収入額>

年収(万円)社会保険料税金控除後所得
200242,00001,758,000
600612,000229,0005,159,000
10001,002,000716,0008,282,000
14001,390,0001,438,00011,172,000

<BI導入後の収入>

年収(万円)社会保険料税金BI収入控除後所得差額
20096,0001,140,0002,880,0003,644,0001,886,000
600244,0003,452,0002,880,0005,184,00025,000
1000400,0005,758,0002,880,0006,722,000-1,560,000
1400556,0008,064,0002,880,0008,260,000-2,912,000

傾向は変わりません。


ケース4:シングル

<現在の収入額>

年収(万円)社会保険料税金控除後所得
100121,0000879,000
300306,000133,0002,561,000
500501,000396,0004,103,000
700695,000757,0005,548,000
1000907,0001,367,0007,726,000
15001,094,0002,927,00010,979,000

<BI導入後の収入>

年収(万円)社会保険料税金BI収入控除後所得差額
10048,000570,000960,0001,342,000463,000
300122,0001,726,000960,0002,112,000-449,000
500200,0002,879,000960,0002,881,000-1,222,000
700278,0004,032,000960,0003,650,000-1,898,000
1000362,0005,782,000960,0004,816,000-2,910,000
1500437,0008,737,000960,0006,786,000-4,193,000

シングルの場合、所得が増えるにつれて収入がかなり減っています。

これはうまくありません。


この場合でも、子どものBI額を減額したり、先ほどは計算に使わなかった社会保障給付費をBIの財源に充てたり、企業が今後家族手当を支払わなくなった場合にそれに変わる税をBIの財源として徴収するなどの方策が考えられます。


BIによって何が変わるか

以上の考察から、BIの導入が、それほど困難ではないこと、社会保障給付費に一切手をつけなくても可能なことなどが実証されたと思います。「所得税率60%」という数字が一律して高いものではないことも表されたのではないでしょうか。


BIを導入することで、貧困に対する強力なカウンターになることが上記の数字でもわかると思います。


現行の生活保護では、「失業と貧困の罠」という問題があります。生活保護は「足りないものを補う」という考え方ですので、収入があればその分の生活保護費は削減されます。

失業している人間が就業すれば、そのことで生活保護費が削られることから、就業への意欲の妨げになります。これが「失業の罠」です。

賃金が増えることで、生活保護費が減額されるため、手取りの収入は変わらず、努力が金銭的に報われないことから、貧困から脱していく意欲の妨げになります。これが「貧困の罠」です。


BIは、一律に給付されますから、就業しても返還義務はありませんし、賃金が増えれば、その分は全て上乗せの収入となり、金銭的な意欲をもたらします。


また、BIによって最低限の保障が無差別に行われるので、BIを基礎にして、自身を再教育し、さらに熟練した労働に付こうと志向する人は増えるでしょう。生活が保障されているため、すぐには金銭に結びつかないような、しかし社会的には必要な労働につく人も増えるでしょう。特に個人に配分されることで、性別分業に縛られていた女性などが労働に参加することになります。ここでワークシェアリングも増えることでしょう。


いわばBIは、それ以上の生活への踏み切り台(スプリングボード)となるのです。


参考

福祉社会と社会保障改革―ベーシック・インカム構想の新地平

福祉社会と社会保障改革―ベーシック・インカム構想の新地平

VOL 2 (大型本)

VOL 2 (大型本)

BIの計算など

長文におつきあいいただき、ありがとうございました。


次回のエントリでは、BIに対する疑問としてつきものの、「誰でも保障なんかしたら働く人間がいなくなるのではないか?」「遊んでいる連中(フリーライダーただ乗り)にまで金を渡すのか」などについて、考察してみたいと思います。

*1平成17年度の生活保護費と教育扶助費の合計。国立社会保障・人口問題研究所資料 http://www.ipss.go.jp/s-info/j/seiho/seiho.aspエクセル表p23より

*2:平成19年8月現在。総務省統計http://www.stat.go.jp/data/jinsui/tsuki/index.htm より

*3:87兆9150億円。平成17年度。国立社会保障・人口問題研究所「平成17年度社会保障給付費」 http://www.ipss.go.jp/ss-cost/j/kyuhuhi-h17/h17.pdf p20より

*4:9704億4000万円

*5:27兆5067億4300万円

*6:3304億7200万円

*7財務省平成17年租税及び印紙収入予算の説明」 http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/008a17a.pdf p6より

*8:ただし、BI後の社会保険料額は、除外する上記の保険料額が全体の40%であるので、現在の40%とします

reponrepon 2008/01/26 08:16 fromdusktildawnさん、早速のコメントありがとうございます。
具体的には国民全体の課税給与総額が下がる、と言う形で現れると言うことでしょうかね。
とりあえず今エントリでは、BIの導入にはそれほど大きな負担はかからないよ、と言うことを実証的に示してみようと思いました。
所得税率は84年時点ですと、最高税率が70%で、BIとして示した額より遙かに高い税率でした。それでも支払っていたんですね。まだ企業が海外に逃げる前でした。
どのくらいの個人が、本来自己所得として申告する金額を会社の利益として申告するかはわからないのですが、とりあえず、BIを導入しても現在と税負担はそれほど変わらないと思いました。
おっしゃるような方法を国民全体が採り始めると、現在の税法体系でも国家予算が成り立たなくなってしまいますね。頭の痛い問題です。

これから出かけてしまうもので、もう少し詳しくは、後ほど書きたいのですが、火曜日の夜までネットのない環境の場所に行かなければならないので、しばらく間が空いてしまいます。申し訳ありません。

reponrepon 2008/01/26 08:31 それと、確かに自営業者などは自身の所得ではなく会社利益にして、経費で落とすと言うことをよくします。僕の親類も、友人も、自営業者は軒並み所得が低いのですが、実際に税対象になる所得と目に見えない部分の所得に差があることは何となくわかります。
ところで、会社から給料を受け取っている一般のサラリーマンも、fromdusktildawnさんが言われるような個人会社を経由することで自己の課税所得を少なくする技術が存在するのでしょうか?サラリーマンだと(というか賃労働者だと)源泉徴収されてしまうので、迂回する方法がよくわかりません。
教えていただければ幸いです。

fromdusktildawnfromdusktildawn 2008/01/27 06:58 ちょっと訂正。
配当所得は総合課税なので、所得税60%だと、そこも60%になりますね。
とすると、年の半分は大連で過ごす選択肢になりますかね。それか、そもそもできるだけ日本には居住しない。日本の会社に勤めるとしても、できるだけ国外からオンラインで仕事をするようにするのが正解か。

hihi01hihi01 2008/01/27 07:35 ご指摘の生活保護の問題はフリードマンが「選択の自由」というテレビ番組で言っていたいまだ未解決の問題だと思います。

それと重箱ですが「74憶」は「74兆」のタイポではないでしょうか?

reponrepon 2008/01/27 14:07 fromdusktildawnさん
ご回答ありがとうございます。僕は源泉徴収されてしまうので、給与所得はすべて税対象になりますね……
正社員ではなく、個人事業主扱いになるんですね。なるほど。そこまで技術を買ってもらえる人は、一握りでしょうね。

reponrepon 2008/01/27 14:11 hihi01さん、コメントありがとうございます。

ご指摘の点、早速訂正しました。ありがとございました。

なるほど、フリードマンが触れているんですね。この矛盾は現行の生活保護制度だとどうしても付きまといますね。

pimagawapimagawa 2008/01/27 19:38 > 生活保護費の一人当たり月額が6万843円
> *1:平成17年度の生活保護費と教育扶助費の合計。国立社会保障・人口問題研究所資料 http://www.ipss.go.jp/s-info/j/seiho/seiho.asp のエクセル表p23より

とありますが、その表ですと一人当たりの生活保護費は月額148,444円です。60,843円は生活保護費のうちの生活「扶助」費と教育扶助費を足したものです。

生活保護費のうち住宅扶助や医療扶助を他の施策で支給するのかもしれません。その場合、現行の生活保護と同様に資産調査等を行った上で支給するのであれば1兆円程度で済みますが、住宅扶助や医療扶助相当分を無条件で支給するとなれば、さらに100兆円程度の予算が必要になります。(BIを8万円でなく15万円で計算した場合。)

現在15万円程度かかっているものを8万円にというのは、かなり無理があると思います。

ululunululun 2008/01/28 08:30 こんにちは。この試算って極端な例として日本国民の税引き前の収入が100万とかでも成立しますか?

reponrepon 2008/01/28 10:20 pimagawaさん、コメントありがとうございます。

おっしゃるように、60.843円という数字には、住宅扶助費が入っておりません。
なぜかといいますと、ここで言う住宅扶養費は、BIの社会保障費で現物・現金をともに残す対象の「住宅」と一致しているからです。
国立社会保障・人口問題研究所「平成17年度社会保障給付費」 http://www.ipss.go.jp/ss-cost/j/kyuhuhi-h17/h17.pdfの、p33を見ていただくとそれぞれの項目の具体的な内容があるのですが、「住宅」に関しては「生活保護制度:住宅扶助費」と明記されています。
ですので、シンプルにいうと、私が計算したBI導入後も、生活保護の住宅保護費は支給されるということになります。

reponrepon 2008/01/28 10:22 ululunさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
はい、各表の「年収(万円)」は、税引き前の収入です。ですので、おっしゃる「税引き前の収入が100万」というケースは本文の表に載っております。

経済学板より経済学板より 2008/02/13 16:37 ここのコメント欄に、ベーシック・インカム論の様なものが語られていますが、どう思われますか?
http://www.nagaitosiya.com/a/future_capitalism.html

これが参考ページだとか。
http://tail.s68.xrea.com/html/movie/lab/wave/wave02.html

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