京葉線海浜幕張駅北口(幕張テクノガーデン)

幕張テクノガーデン

もう鴨川には、用はないので、来た道を引き返す。
安房鴨川駅に着くと、ちょうど特急が停まっていたので飛び乗った。
鴨川滞在時間、わずか30分間。
列車が発車するとき、何の気なしに、ふと窓から駅のホームを見た。
すると、若い男女が手を振り合って別れを惜しんでいる姿が目に入ってきた。夫婦か恋人同士かわからない。
この光景を眺めていたら、突然、さっきの、網走番外地の歌を思い出したのだ。
紅い真紅な ハマナス
海を見てます 泣いてます
列車は、ふいに静かに動き出し、そのまま、容赦なくスピードを上げていく。
もう鴨川からはどんどん遠ざかっていく。
景色が後ろへと後ろへと流れていく。
そんな中で、惜別の思いは、大きく大きくなっていく。
なるほど、つげ義春の旅情とは、こういうものなのだろうか。
つまり、旅に出て改めて実感する情、ということだ。
気を取り直すと、再び、退屈な風景が速いスピードで車窓を過ぎ去っていく。
よし、帰りは、ゆっくり海の景色を見てやろうかと思っていたのだが、やはり退屈な景色なので、いつしかすっかり寝入ってしまった。
目が覚めると、見慣れた京葉線の風景。
海浜幕張駅で降りる。
北口に出て、少し西側に歩くと幕張テクノガーデン B棟、D棟がある。
バブルの頃の竣工だ。
鴨川のバブルの遺産の次には幕張のバブルの遺産か。
ということは、鴨川に網走番外地がないので、過去の遺産にそれを求める、ということなのかな。
(2007年10月記)