『鞍上転々』

 春のクラシックで良績を残した4歳馬は、夏休みを経て菊花賞(Gl)を目指すのが普通である。ゴールドシチーもその例に漏れず、神戸新聞杯(Gll)から菊花賞へ向けて始動することになった。ちなみにこのときゴールドシチーの鞍上は、前述の事情で本田騎手から猿橋重利騎手に乗り替わっていた。

 新コンビの最初のレースは、勝ち馬と0秒6秒差の3着だった。並みの馬ならまあまあというところだったが、西の3歳王者にして皐月賞(Gl)2着、日本ダービー(Gl)4着の一流馬としては、やや物足りない成績である。

「まだまだ使い足りない」

 清水師は、菊花賞前にもう一度、ゴールドシチー京都新聞杯(Gll)で使うことにした。このローテーションには、関西馬でありながらまだ一度も京都競馬場で走ったことがなかったゴールドシチーに、本番前の京都競馬場を、一度経験させておくことを目的としていた。このことには、ダービー前にNHK杯(Gll)を使えず、ダービー当日が東京競馬場初体験になってしまったことへの反省も含まれていた。

 ところが、ゴールドシチーはせっかくの京都新聞杯で、今度は「テキの心、馬知らず」をやってしまった。ゲートを出る瞬間にいきなり外側に斜行したゴールドシチーは、隣の馬を転倒させてしまったのである。おかげでレースはスタート直後から大混乱に陥り、ゴールドシチーは当然のように失格となった。おまけに猿橋騎手は実効6日間の騎乗停止処分を食らい、菊花賞での騎乗も不可能になってしまった。

 またも空白になってしまった鞍上についてはいくつかの噂が流れたものの、結局、菊花賞では河内洋騎手が騎乗することになった。