ミクニヤナイハラプロジェクト / 船を待つ

2024年3月24日14:00 吉祥寺シアター現代版ゴドー待つ人々は冒頭からゴドーいる展開で新鮮。笠木泉&渡辺梓のイマっぽく軽妙な会話とダンスな動き面白く、遅れて登場の鈴木将一朗がアクセント。成功収めた移民女性の設定よく照明カッコよく笑いも多め。

村上春樹 / 街とその不確かな壁

2023年4月10日初版 新潮社1980年発表作を大幅改変した第一部に加え二部三部を加えた大作を堪能。会津の民間図書館に職を得る展開に興奮。前館主の子易さんやコーヒー店の女主人、イエローサブマリン少年が登場で充実。壁の街再訪も感動。

赤堀雅秋プロデュース / ボイラーマン

2024年3月14日14:00 本多劇場田中哲司と安達祐実を軸に冬の夜の古マンション脇の階段舞台に不条理な展開。個性的な役者が持ち味発揮のキャラを見せて贅沢。赤堀警官いいが村岡希美や樋口日奈らマンション住人面白く、終盤のゴミ分別シーン圧巻。

ホエイ / クチナシと翁

2024年3月10日14:00 こまばアゴラ劇場5年ぶり新作は持ち味の津軽弁全開の現代劇。高齢化でも青年層に職ない地方都市の現実浮き彫り。微妙な人間関係のヒリヒリ感鋭い。バサマと孫の2役こなした三上晴佳が終焉後のお茶会でもホスピタリティ全開で脱帽。

九段理江 / 東京都同情塔

2024年1月15日初版 新潮社芥川賞受賞作はザハ設計の国立競技場立つ近未来舞台に女性建築家が新宿御苑脇に建てる収容施設巡る物語で異色世界観に驚く。生成AIの批判的引用巧み。千駄ヶ谷周辺描写面白く、男性店員や海外記者に視点変え秀逸。

MONO / 御菓子司 亀屋権太楼

2024年3月6日14:00 ザ・スズナリ老舗和菓子屋の苦闘10年描き新境地。生真面目な新社長で再出発も先代不祥事祟り経営混乱。兄との経営権争いに職人巻き込まれる展開が見事。古株役者安定、カフェ責任者で高橋明日香輝く。被差別問題挿入も鮮やか。

九井諒子 / ダンジョン飯

2015年1月~23年12月初版 KADOKAWA(BEAM/HARTA)全14巻で完結の異色グルメ漫画は冒険するマルシル、センシら4人のキャラ立ちよく大成功。ダンジョンの階層ごとに現れる魔物の変化、終盤投入の猫娘も機能し、料理場面念入りでRPGな世界観に絵心も冴えて感嘆。

お別れホスピタル

TV

2024年2月2日~2月24日22:00 NHK総合沖田×華の漫画ドラマ化は海辺の終末期病棟が舞台で死亡場面連発で重めも主演の岸井ゆきの輝き、内田慈も先輩看護師熱演。木野花、きたろう、筒井真理子、梅舟椎永、黒田大輔、奥田洋平ら小劇場役者多数登場嬉しい。

ばぶれるりぐる / 川にはとうぜんはしがある

2024年2月24日13:00 こまばアゴラ劇場地方の土間舞台に姉の帰郷後の1年描き会心。土佐清水言葉全開で自身も姉役演じた竹田モモコが存在感。絵心ある姪役の鄭梨花も魅力爆発。パン屋とイラスト仕事両立も進路巡り母と伯母の対立からの残酷な結論に驚愕。

天才バカボンのパパなのだ(作:別役実、演出:玉田真也)

2024年2月23日19:00 本多劇場吉本興業と小劇場役者が組んだ不条理喜劇は玉田演出冴え爆笑連続の見事な仕上がり。浅野千鶴ママと市川しんぺーパパがかき回し楽しさ抜群。公衆便所前、電信柱横の仮設署で浦井のりひろ所長と佐々木崇博巡査も健闘。

山本さほ / てつおとよしえ

2023年4月26日初版 新潮社自身の父と母を描く「小説新潮」連載マンガはラジコンなど趣味多く機械オタクな父と心配性で機械オンチの母のキャラ立ちよく、幼少期やデビュー前後の思い出話もよく見事なノスタルジー。持ち味発揮で嬉しい一冊。

侵入者の晩餐

TV

2024年1月3日21:00 日本テレビバカリズム脚本作は菊池凛子&吉田羊&平岩紙による女社長宅潜入のサスペンスコメディ。3人の駄弁が切れ味抜群で、家事代行サービスという仕事の設定が絶妙。白石麻衣、角田晃広、池松亮ら脇役陣も充実の仕事ぶり。

山田詠美 / 私のことだま漂流記

2022年11月21日初版 講談社毎日新聞日曜版連載の自伝小説は磐田の幼少期、鹿沼の文学少女時代、漫画家や新宿・六本木時代、作家デビューから文壇状況まで軽妙に綴り文句なしの面白さ。各種攻撃による痛みが鮮明、先輩作家との交流も興味深い。

劇場版 SPY×FAMILY CODE: White

2023年12月23日 109シネマズ二子玉川TVアニメ放送中でもオリジナルストーリーで実現の映画版は軍絡むスケールでかめな展開が奏功。飛行艇でのアクションはベタでも見せ場たっぷり。アーニャの我慢シーンも爆笑。特典の小冊子がこだわり満点で嬉しい。

城山羊の会 / 萎れた花の弁明

2023年12月13日19:00 三鷹市芸術文化センター星のホール三鷹の劇場舞台の新作は岡部たかし&ひろき親子を親子設定でメタ構造が痛快。元妻が混線、父と子に愛される女性を村上穂乃佳が好演。謎のエロオヤジ役の岩谷健司が若者慰める展開面白く、大詰めの親子…

津村記久子 / 水車小屋のネネ

2023年3月5日初版 毎日新聞出版谷崎賞受賞の新聞小説が会心。10歳違いの理佐と律の姉妹が毒親から離れ生活始める展開見事。職場の蕎麦屋にいるヨウム=ネネとの交流を10年単位で見つめ、時代背景の挿入、コミュニティの強まりも巧みに描いた。

KAAT×東京デスロック×第12言語演劇スタジオ / 外地の三人姉妹

2023年12月8日14:00 KAAT神奈川芸術劇場<大スタジオ>ソン・ギウンと多田淳之介が組んだコロナ禍初演作再演は30年代の朝鮮北方の羅南舞台に伊東沙保、李そじん、原田つむぎの3姉妹が機能。チェーホフ原作に戦中日本の姿重なり、当時風俗巧みに挿入し絶妙の…

松本大洋 / 東京ヒゴロ

2021年9月-23年11月初版 小学館ビッグコミックスペシャル全3巻完結は大手出版社辞めた漫画編集者の真摯な生き様描き会心。ノスタルジックな風景描写、芸術性高い各絵に興奮。漫画家の人間模様も絶妙で、長作が別居中の娘と藤沢から作家の個展に出かける回な…

スペースノットブランク / 松井周と私たち

2023年11月26日13:30 こまばアゴラ劇場小野彩加と中澤陽が松井周を迎え3人で話す舞台が新鮮。インタビュー形式で展開も途中からワークショップ的動き加わり面白い。サンプル立ち上げ時の思い出話も面白いが、独自メソッドのダンスなど3人で披露し会心。

バストリオ / 一匹のモンタージュ(リクリエーション)

2023年10月17日14:30 こまばアゴラ劇場水や土まき散らしポップに昇華で流石のバストリオ世界。時事性も潜ませ成功。演奏だけでなく独白シーンでも本藤美咲が存在感発揮。序盤大人しめだった橋本和加子も中盤から躍動で魅力炸裂。スカンクもしっかり演技。

排気口 / 時に想像しあった人たち

2023年10月3日19:30 三鷹市芸術文化センター星のホール若手劇団新作はフレッシュな役者揃えた商店街集会所舞台の群像劇で脱力感全開。暴走しスベりまくる中年男優陣に唖然も、龍村仁美、東雲しの、倉里晴らボランティアサークルの女子大生演じた女優陣の躍動…

ぱぷりか / 柔らかく揺れる

2023年10月3日14:00 こまばアゴラ劇場岸田作再演は広島に暮らす一族の日常の様々描きながら現代映す縮図見せて感嘆。初演から役者総入れ替えでも男性不妊やギャンブル依存、LGBT、シングルマザーなど重厚テーマを一つ一つ丁寧に描き見事な仕上がり。

児玉雨子 / ♯♯NAME♯♯

2023年7月30日初版 河出書房新社ハロプロ作詞家の芥川賞候補作はジュニアアイドルだった過去と大学生の現在往来し強烈で過去バレの苦痛リアル。オーディション続いた小学生時代の美砂乃との交流が臨場感。るろうに剣心な二次創作オフも意外な効果。

ヨーロッパ企画 / 切り裂かないけど攫いはするジャック

2023年9月30日18:00 本多劇場1年ぶり新作は19世紀末のロンドン舞台に推理しまくりミステリーコメディで攫うジャック巡る前半見事で藤松祥子演じた花売り娘の明転など巧みも終盤暴走感。進行役で永野宗典が笑い引き出し成功。藤谷理子も成長。

阿部和重 / ULTIMATE EDITION

2022年10月30日初版 河出書房新社有名曲のタイトルと同名作中心に16作品集めた短編集は持ち味十分。追い込まれた極限状況を巧みに表現して迫力。前半は旧共産圏中心にグロい作品並ぶ。後半は東京西部や神奈川のプチ犯罪、事件の一コマ描き切れ味。

あひるなんちゃら / 真夜中にコライダー団地で

2023年9月28日19:30 駅前劇場地下にコライダーあるロケット団地舞台に複数組の会話が交互に展開し持ち味。額にシール貼る者の存在、部屋、廊下、公園、屋上と次々舞台変え団地の情景に厚み。もはや老舗劇団で役者平均年齢上昇、若手起用必要か。

ヤマザキマリ、とり・みき / プリニウス

2014年7月‐23年7月初版 新潮社(バンチコミックス)2000年前のローマ舞台に「博物誌」著したプリニウスやネロなどの生き様描く意欲作が全12巻で完結。「新潮45」から「新潮」へ掲載誌移しつつ圧倒的な描写力維持。地中海沿岸諸国進む一行のキャラも立ち成功。

高瀬隼子 / いい子のあくび

2023年7月10日初版 集英社 芥川受賞第一作集は鋭さ抜群。歩きスマホへ怒り貯める優等生女子の暴走描く20年発表の表題作は婚約相手勤務先の学校でのSNS覗き見面白く展開見事。創業者像にお供えすると願い叶う社内都市伝説描く小篇も流石。

ろりえ / 下北沢の駅前でやる祭り2023夏(「かわいい妹」「ネタ書いてる方芸人とラストイヤーイマジネイションズ」他)

2023年8月27日14:00 駅前劇場祭りというだけあり盛りだくさん大増量オムニバス公演。不気味な花火の一夜描く福名理穂の新作いいが、崖っぷち芸人たち描く奥山雄太新作が素晴らしく荒井玲良の魅力爆発。歌手でも登場の安藤理樹の多才ぶりに感服。

川上未映子 / 黄色い家

2023年2月25日初版 中央公論新社孤独な少女の稼ぐことへの執着と闘い描き圧倒的スピード感。黄美子さんと出会い、三茶でスナック始める展開見事で、同世代3人での共同生活も臨場感。90年代後半の時代性も映すノンストップなノワール小説に興奮。