2003-09-01から1ヶ月間の記事一覧

伊藤探偵事務所の憂鬱 23

目を覚ましても宴会は続いていた。 薬のせいか、妙に頭がすっきりしている。 後頭部がずきずきするのは お酒のせいではなく膨らんだこぶのせいだった・・・ 「いってー」「おっ酒で 消毒」 KAWAさんに頭から焼酎をかけられた だめだ、出来上がっている。…

伊藤探偵事務所の憂鬱 22

かなりアルコールが入ってきて 顔が赤くなるのは感じたが 周りの視線が怖くてなかなか酔わない。 ふすまが開いて親分が若頭と一緒に入ってきた。 「お気遣い 染み入りました 有難うございます」 親分自ら土下座をして挨拶された。 四隅に陣取っていた子分が…

伊藤探偵事務所の憂鬱 21

話の内容はともかく お替りのケーキのワゴンがやってきたこと 警備担当者がやってきたこと そして何よりも ケーキのワゴンの到着で始まった KAWAさんとぬりかべさんの狂乱がまねく観客に話の内容を聞かせるわけにはいかない副社長の退場で 一旦 幕が下り…

伊藤探偵事務所の憂鬱20

「どういうつもりだ!!」 総務部長が怒鳴り込んできた。 女性二人は パティシエもとい ケーキに夢中になっていて話を聞いていない。 勿論、ぬりかべさんも 西下さんはいない。 当然、僕のところにやってきた 女性に関わって 無為な時間を過ごす愚かさに気が…

伊藤探偵事務所の憂鬱19

「arieさん」 西下さんが呼び止めた。 何か少し話した後 arieさんが二人の間に割り入った。 「ご依頼を キャンセルする件 改めてお受けします」 にこっと 会釈をして頭を少し下げた。急なことに驚きながら うれしそうな顔で総務部長が言った 「いや…

伊藤探偵事務所の憂鬱18

予想はしていたことだが先頭は僕だった。 何の用意も出来て無くて、その上気持ちの準備も出来てなく。 何よりも震えのとまらない体が言うことを利かない。それでも みんなが見てる手前 男として頑張らない訳にはいかない。 幸いにして、出かける準備、受付で…

伊藤探偵事務所の憂鬱 17

「早く起きた子には CHUしちゃうよ!!」 KAWAさんの台詞に反応したわけではなく KAWAさんの声に正直反応した。 生きているって実感がある、明るく元気な声に体が飛び起きた。「えー、やらしいんだ」 いや、そんなつもりじゃなくて・・・・ どう…

伊藤探偵事務所の憂鬱16

チンピラやくざに体を押されて 事務所に連れ込まれた。 いくらいつもは避けている人たちも遠巻きに集まっているようだが、人目を避けるように奥に連れ込まれた。いきなり罵声とともに殴りかかってきた 男を制止した声がした。 「やめねえか!!」 奥からどす…

伊藤探偵事務所の憂鬱 15

担当者がいなくなったところで KAWAさんが口を開いた 「お金が目的なの?」「いや この話は何かおかしい」 西下さんが答えた 「解決するだけなら 子猫には鈴がついているから簡単でしょ?」 KAWAさんの問い 「うちの 副所長は親猫より早く見つけちゃ…

伊藤探偵事務所の憂鬱 14

いやでも朝が来る。 朝が来れば 活動しなければいけない 昨日の晩には全てが解決したはずなのに 朝になると気が重い。 「準備が出来たら 行くぞ」 目が覚めたことに気がついたのか 機械の奥から声が聞こえた 「どこに?」 思いもがけない質問に戸惑いながら…

伊藤探偵事務所の憂鬱 13

夜になると 事務所はさびしくなる 明日のことを考えると 目がさえて眠れなくなる きっと、謝っても許してくれないことは判っている・・・・ KAWAさんの事がじゃなく 誤解されたままって言うのがなんか 引っかかって うまく言えないけど 眠くならない。 …

伊藤探偵事務所の憂鬱12

笑いがようやく収まったころに 機械の森の主が中から出てきて声をかけてくれた。 「アラブの歴史とヨーロッパの関係は詳しいか?」 自慢じゃないが、成績は何時も中の下 それも、必修科目中心で それ以外はまったく駄目。これというのも中学時代の先生が 年…

伊藤探偵事務所の憂鬱11

修羅場と言われる喫茶店をでて・・・・・ 表に出たところでさっき中に入ってきたけれども表に出て行った男性が表にしゃがみこんでいる。 「あなたのワンちゃんが ちょっとおいたしたから “めっ”てしたらいじけちゃって・・・」 Arieさんが とにかく見た…

番外編 伊藤探偵所長の苦労

体を突き刺す冷たい風が唯一生きていることを感じさせる それすらも、長くとどまっていると体に忘れさせようとする。 このままでは凍えてしまう。 そういえばヒマラヤに挑戦して凍死した豹の話を昔読んだ いやキリマンジェロだったか どうでもいいことが気に…

伊藤探偵事務所の憂鬱 10

パフェを食べ終わったら あったかいほうじ茶がでてきた。 何でパフェを食べてほうじ茶なのかはわからないが ほっとする。 彼女を見ていて気が付いたのだが お茶を飲んでほっとする時って何故か目をつぶっているものだ。 胃の中にあったかいお茶が広がって、…

伊藤探偵事務所の憂鬱9

「兄ちゃん いつものりんごパフェか?」 どうも、僕が 特定の性別の人間から好かれないのは環境が悪いのだと自覚した 「ねえちゃんは なにする?」 もっともデートに向かない店につれて来たのが悪いのかもしれないと 自信がなくなってきた。 この店は「なに…

伊藤探偵事務所の憂鬱8

「彼女には どうやって接触すれば」 命がけの仕事と言われて 緊張する。 「へっ、あなたナンパの経験も無いの?」 arieさんの耳を疑うような台詞 「命がけで 接触し 協力体制を作って一緒に戦うんでしょ!」 本気とも冗談ともつかない態度に腹を立てて言…

伊藤探偵事務所の憂鬱7

シグマリ王国は、アラブにある砂漠の中の国である。 砂漠の中にある岩山に囲まれた オアシスの町である。 人口数万人サイズの国連に認められるほどの国ではないが 豊かな水源のおかげで自給自足を行える数少ない国の一つである。 弱小国の弱みで 幾度も大国…

伊藤探偵事務所の憂鬱6

立ち上がろうと足掻いているうちに眠ってしまったようで 気が付くと回りは明るくなっていた。 トイレにもいけなかったので 立ち上がってトイレに行った。 良く考えたら 昨日は立てなかったのに 人間とは強く出来てるんだなー とひとしきり感動して 昨日のこ…

伊藤探偵事務所の憂鬱5

安楽いすの居心地が悪いのは未だなれていないだけではない。 ただ、わずかな救いは震えているのが判らないことである。 口の中が乾いて いくら水を飲んでも癒されない。逃げ出したいのは山々だけど 一人になったら前のように運良く逃げきれるとは思えない。 …

伊藤探偵事務所の憂鬱4

座り込んだまま、目の前にぬりかべさんの顔を見たところまでしか根性が続かなかった。「あの子は所長にそっくりなところがあるわね」 どこかでarieさんの声が聞こえて・・・・そうだ ここは !! 体中が身構えた状態で起き上がった。 いつもの事務所のソ…

伊藤探偵事務所の憂鬱3

あわただしそうに人が動く会場 勿論中で働いている人たちは宝石がなくなった事など知らされていない。警備の下見と適当なことを言って中に入った。 なんとなく 本当に探偵になった気分でうれしかった。 「ぷるる」 電話が鳴った。事務所からの電話 「はい、…

「伊藤探偵事務所の憂鬱2」

「とりあえず、先にご飯を食べたら?」 珍しくやさしい口調と聞こえてくる鼻歌の不気味さが 食事のペースを遅くさせる。 機械の森の主は、珍しく忙しげに動いている。ぬりかべさんはご飯の最中に出かけてしまった。「で、さっきの電話なのですが」 僕はご飯…

伊藤探偵事務所の憂鬱

大体、探偵事務所に依頼してくる依頼人の多くは 泣いているか目が泳いでいるかだ。 目が泳いでいるのは珍しいことではない ですが 素人目に見てもそういう泳ぎ方で無いことが というよりも 目の泳ぐ気持ちがわかるだけに相手が気の毒になる。 浮気調査なんて…