観光列車『あそ1962』

0番ホームに行くと入線済みの『あそ1962』を多くの人が写真撮影中。さすがにラストラン1日前ということもあり、熱気があります。車体は黒というかダークブラウンの車体に金色でラインと文字表記がされている渋い列車で、おらも何枚か写真を撮り、満足したところで10時15分の定刻に発車。
車両の連結部分よりの1/3を改造して、折りたたみ自転車の持ち込みと車内販売や展望用のカウンターが設置されており、2両編成なのに3両編成の列車に乗ってるような感覚にとらわれます。洗面所の入り口に暖簾が掛かってたり、ちょっとした個性があちこちに見られます。女性の客室乗務員が改札や車内販売、観光案内のアナウンスなどを行い、観光列車特有の雰囲気ですが、乗ってるお客はどう見ても阿蘇の観光客よりは鉄分豊かな乗り鉄客のほうが多い感じ。無理もないことですがね。熊本から立野駅までの間は市街地なので窓の外よりも車内見物にいそしんでいましたが、立野駅からはいよいよ観光列車の本領発揮となります。
立野駅では車両撮影や地元のお饅頭屋『ニコニコ屋』の“にこにこ饅頭”のホーム販売などが行われ、しばらく停車。この駅は阿蘇カルデラの熊本側の入り口となり、日本有数のスイッチバックの施設がある駅でもあります。スイッチバックとは、ものすごい簡単に言うと傾斜の激しいところを進行方向を変えながらジグザグに走ることで通過する施設ということになりますが、鉄分の豊かな人たちはもちろん、一般人にとっては珍しい体験なので、一つの観光資源といえます。準備ができて、熊本方向に進みながら元来た線路より北側の分岐に入り少し進んで停車。運転手さんが従来の先頭車両に戻って大分方向へ出発すると、先ほどの線路が南側の下のほうへと見えます。ちょっとした鉄道イベントですが、旅行でしか味わえないちょっとしたスパイスですね。
列車は阿蘇の山並みを車窓に映しながら進んでいきますが、山肌が茶色くなった禿山がやたらと多い感じ。写真で見た阿蘇の風景とはだいぶ違うのうと思いながら、よく見ていると牧草地帯の草が枯れているだけでした(笑)あと、阿蘇には風力発電の風車がたくさんあるのも特有の景色を描き出していました。
阿蘇駅に近づくにつれて天候が崩れ始め、終点の宮地駅に着く頃には粉雪が舞い散る有様で、駅員いわく気温は−4℃とのこと。寒さに震えながら点検のため車庫に入る『あそ1962』を見送り、駅舎の中で大分に向かう特急を待ちます。ぼんやり線路を見ていると最近どこかでみた設備が。紅葉を見に秩父鉄道に行ったときにみた蒸気機関車用の転車台が奥のほうに錆を浮かせながら設置されており、使われなくなった今もその姿を残していました。蒸気機関車が使われなくなると共に転車台は回ることもなくなり、新幹線の導入によりこの駅を往復していた車両が引退する。さほど鉄分が多くないおらでも時代の流れを感じさせる場所でした。