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はてな読み

2010-06-19

英語の先生はTOEICを受験する必要があるのか




このネタを発端にしてTwitterで英語教育うんぬんって話題になってたんですがー。




平成18年度小学校英語活動実施状況調査及び英語教育改善実施状況調査(中学校・高等学校)について 「英語教育改善実施状況調査(平成18年度)」主な結果概要(高等学校)−文部科学省

3 教員の英語力について (新項目)


調査に協力した英語教員17,627人のうち、英検準1級以上、またはTOEFL(トーフル)のPBT550点以上、CBT213点以上、TOEIC(トーイック)730点以上のスコアを取得している者は、8,539人(48.4パーセント)。


 なお、外部試験の受験経験のある者のうちでは、74.2パーセントが英検準1級以上(TOEFL(トーフル)等を含む)を取得している。




えーと、すべての教師数を分母にして計算すると「8,539人(48.4パーセント)」になって、受験経験のある教師数を分母にすると「74.2パーセント」になるってことなんですかね。ちょっと計算しなおしますと・・




項目総数パーセンテージ(分母はすべての教師数)
すべての教師数17642人-
受験経験者数11508人65.2%
ターゲットスコアをクリアした教師数8539人48.4%(受験経験者数を分母にすれば74.2%)
未受験者数6134人34.8%



・・・とこんな感じになります。


で、「5割以上の教師がある一定ラインを超えてない」=「ダメ教師」的なノリで叩かれてたわけですが、未受験の割合が34.8%もいるわけですから、まず、そこはどうなんだろうね、と。


それでも、何がなんでも叩きたいんだったら、こっちの数字じゃないんですかね。




項目総数パーセンテージ(分母はすべての教師数)
すべての教師数17642人-
受験経験者数11508人65.2%
ターゲットスコアをクリアした教師数8539人48.4%(受験経験者数を分母にすれば74.2%)
受験したけどもターゲットスコアをクリアできなかった教師数2969人16.8%(受験経験者数を分母にすれば25.8%)
未受験者数6134人34.8%



「受験した教師のうち、20%以上の教師が望ましいレベルにいない! ダメ教師だ! ワーワー!」とか言う人もいるんでしょうね。ただしー、文科省のサイトには・・




3 教員の英語力について (新項目)




と書かれていて、「お手軽に試験の点数で測っちゃえ」的な匂いも感じますねー。それに、TOEICってビジネス英語のための試験ですよね。どうして英語の先生たちが全員受けなきゃいけないのですかね。


以前にも書きましたけど、TOEICって絶対評価じゃなくて相対評価なわけで、あのスコアはTOEICを受験した人たちのなかでどこらへんに分布しているか、ということ。(参照 → TOEICのスコア計算の仕組みがややこしすぎるのでグラフを作ってみた - はてな読み


いきなり文科省やら教育委員会から言われて、ろくに準備しないまま受験させられた先生もいるんじゃないですかね。それでも「英語の教師はプロなのだから、準備なしでも730点以上を取ってしかるべきだ!」とか言うんでしょうか。


わたしは受験したことありませんがー、TOEICってけっこう「語彙を知ってるか、どうか」が大事のようですからー、英語の先生が知ってる語彙とTOEICで求めてる語彙がズレてたりすれば、誤答してしまうんじゃないでしょうか。


例えば、ターゲットスコアの730点に出ると思われる英単語は以下のようなもの。




deregulation (規制緩和、規制撤廃

enact (法律の実施、立法化)

subsidy (助成金、奨励金)

dodge (身をかわす、はぐらかす)

scarce (乏しい、不十分な)


『TOEIC TEST 3000語 完全マスター』Target Score 730のパートより




すべての英語の先生はこれを知ってないとダメなんですかね。990レベルになるとさらに難解な語彙になっていきます。




comptroller (会計検査官)

auspicious (さい先のよい、めでたい)

galvanize (電気を通す、電気で刺激する)

stratify (層に配列する、層にする)

proprietor (持ち主、所有者、経営者、家主)


『TOEIC TEST 3000語 完全マスター』Target Score 990のパートより




galvanizeとか出てくるみたいです。




galvanize in English - Google Dictionary

The aid appeal has galvanised the German business community.




「景気を刺激する」といったニュアンスで使われますが、これをすべての英語の先生が覚えなければいけないのでしょうかねー。




項目総数パーセンテージ(分母はすべての教師数)
すべての教師数17642人-
受験経験者数11508人65.2%
ターゲットスコアをクリアした教師数8539人48.4%(受験経験者数を分母にすれば74.2%)
受験したけどもターゲットスコアをクリアできなかった教師数2969人16.8%(受験経験者数を分母にすれば25.8%)
未受験者数6134人34.8%



きちんと準備期間を取って、TOEIC向きの語彙を覚えて試験慣れすればターゲットスコアの730点はほとんどの先生が取れるんじゃないんでしょうか。ま、中にはそれでも取れない人はいるんでしょうけど。(でも、そんなのはどこの会社や組織でも同じでしょ?)


で。


そもそもTOEICやその他の試験で「英語教師の能力を測ることが出来るのか」っていう問題がありますよね。また、すべての先生が各種試験で高得点を取ったとして、それによって劇的に効果が上がるのでしょうか。教え方のプロであるべきかもしれませんが、各種試験のプロである必要はないですよね。


「英語のプロなんだから」的な物言いを見かけましたけど、それって近所の内科に行って「医者なんだから内科だけでなく外科、脳外科、耳鼻科、眼科、皮膚科などのすべての分野に精通してるべきだ」と何でもかんでも治せと要求するのと何が違うんでしょうか。まぁ、その患者が小学生ならば仕方ないと思いますけど。


また、「試験で高得点を取った人」=「優秀」って考え方は、それこそ「学校英語はクソだ」という人たちが忌み嫌う大学受験の価値観と何が違うんでしょうかね。


教育の問題についてはプロの人たちがいるわけですから、そういった人たちにお任せしつつ、事態が好転していくことを願うほうがいいのではないでしょうか。


んで、それぞれの学習者は「卒業後」にどうやって自覚的に勉強していくか、と考えるべきではないのですかね。どっちみち6年間でマスターできるようなモノじゃないのですし。


あと、先生のレベルばっかり揶揄されてますけど、わたしたち学習者のレベルだって問われてるんじゃないんでしょうか。もし、たった6年間であらゆるスキルの基礎部分をマスターさせる素晴らしいカリキュラムが出来たとして、学習者(=生徒)のほうはそれに付いていけるんですかね。


無理だと思いますけどねー。


少なくとも、わたし自身は付いていけずに落伍してしまうでしょう。そんなに優秀じゃないので。だからこそ、地道に辞書を引いて本を読むしかないわけです。試験から解放された自主的な勉強って、けっこう楽しいものですよ。わざわざ試験を受けなくても英語は勉強できます。




おわーりー

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