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2015-12-03

「それでも町は廻っている」と「銀河鉄道の夜」



まずは関連するエピソードを時系列順に整理したほうが早いので、それを。


第2巻第13話それでも町は廻っている(前編)高2春
第2巻第14話それでも町は廻っている(後編)高2春
第5巻第37話蘇る脳細胞高2春
第9巻第71話歩く鳥高2春
第7巻第52話秋まつり高2秋

紺先輩と歩鳥の関係が「銀河鉄道の夜」を下敷きにしているとハッキリ示されるのは第71話「歩く鳥」。以下のエントリーで丁寧な解説が読めます。




それでも町は廻っている第71話「歩く鳥」と銀河鉄道の夜 - 鶴見日記




さそり、イルカ、りんご、水晶、カササギ、孔雀、サザンクロスで降りる青年と幼い姉弟。「銀河鉄道の夜」に出てくるモチーフがさりげなく描かれています。そして、ジョバンニが紺先輩で、カムパネルラは歩鳥。ただし、「銀河鉄道の夜」とまったく同じというわけではなくて、これは新しい「銀河鉄道の夜」なのではないかと思うんです。




それでも町は廻っている 2 (ヤングキングコミックス)
それでも町は廻っている 2 (ヤングキングコミックス)




第13・14話「それでも町は廻っている」の前編・後編で、歩鳥は死んで天国に行ってしまいましたが、その後、「脳の状態が奇跡的に回復した」わけですよね。仕組みはわかりませんが、とにかく、奇跡ということなんでしょう。




それでも町は廻っている 5 (ヤングキングコミックス)
それでも町は廻っている 5 (ヤングキングコミックス)




第37話「蘇る脳細胞」は交通事故のあとの話。ここでは歩鳥が少しずつ回復していく様子が描かれています。ただ、交通事故の前は耳にした音楽をズバピタで当てる才能を持っていなかったような気もしますね。まぁ、もともと持っていた能力が描かれていなかっただけなのかもしれませんが、でも、ここはちょっと気になります。なぜ、ここで引っ掛かりを覚えるのかと言えば、どう考えてもおかしなことがひとつだけあるからです。それは第2巻、第17話「出張メイドサービス」。風邪を引いた紺先輩のお見舞いに行く場面が描かれていますが、歩鳥はここで例の貫一・お宮の像についてこう言ってるんですね。


「もうっ。なんでこんな鈍器にしかならないような置き物があるんだっ。殺されかけたわ。」


これ、おかしいと思うんですよね。だって、この貫一・お宮の像は第12話「乙女の誘いは奈落の罠!?」で歩鳥が温泉旅行で買って、それを紺先輩におみやげとしてプレゼントしたものと考えられるので。


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んで、温泉旅行のときに一緒にいたはずのタッツンは「おみやげかなんかでしょ」と言ってます。もし、タッツンが貫一・お宮の像のことを覚えていたら、「それ、あんたがおみやげで買ったやつでしょ」と言うはずなので、タッツンはまるっと忘れているんでしょう。となると、謎になってくるのは「なぜ、歩鳥は自分で買った貫一・お宮の像のことを忘れているのか」ということ。ここで時系列の順番を確認してみると・・・


第11話猫少年1年目1月
第12話乙女の誘いは奈落の罠!?1年目2月
第13・14話それでも町は廻っている(前編)(後編)1年目3月
第17話出張メイドサービス2年目5月

温泉旅行と紺先輩のお見舞いのあいだに、あの交通事故があるんですよね。つまり、歩鳥は以前の記憶をすべて取り戻したわけじゃなくて、その一部に欠損がが生まれているか、もしくは、ある意味で、新しい歩鳥に「生まれ変った」のではないかというのがわたしの考えです。そして、これを「銀河鉄道の夜」に即して言えば、カムパネルラ(=歩鳥)はいったん死んで、そして、新しく「生まれ変った」ということ。そして、「銀河鉄道の夜」もまた同じように新しい物語へと生まれ変わるのではないか、と。




それでも町は廻っている 9 (ヤングキングコミックス)
それでも町は廻っている 9 (ヤングキングコミックス)



(銀河鉄道の夜)


「カムパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう。」


「銀河鉄道の夜」では、このセリフのあと、カムパネルラは石炭袋で降りていき、現実の世界ではザネリを救うために川に入って死んでしまいます。でも、「それ町」の「新・銀河鉄道の夜」ではそうならないんですね。


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だからこそ、第71話「歩く鳥」で「大丈夫ですよ。私はサザンクロスでも石炭袋でも降りませんから。」と歩鳥はわざわざ口に出して言うのだと思うんです。つまり、「途中でひとりで降りたりしない。ずっと友だちでいるよ。」ということでしょう。


また、「歩鳥」という名前も「銀河鉄道の夜」から来ていて、ここにも、新しく生まれ変わった「銀河鉄道の夜」というメッセージが隠されているのではないかと想像しています。


(銀河鉄道の夜)


ところが、つかまえられる鳥よりは、つかまえられないで無事に天の川の砂の上に降りるものの方が多かったのです。それは見ていると、足が砂へつくや否や、まるで雪の融けるように、縮まって扁ったくなって、間もなく熔鉱炉から出た銅の汁のように、砂や砂利の上にひろがり、しばらくは鳥の形が、砂についているのでしたが、それも二三度明るくなったり暗くなったりしているうちに、もうすっかりまわりと同じいろになってしまうのでした。


これは「鳥を捕る人」にある描写。あのお菓子みたいな味のする鳥たちは地面についた瞬間に動かなくなってしまいます。この鳥たちは地面を歩いたりすることはありません。でも、「それ町」の場合は「歩く鳥」。つまり、ここにも「銀河鉄道の夜」とまったく同じ物語ではなく、「新・銀河鉄道」なのだという意味がこめられているように感じられます。


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この最後のコマは泣けるんですよね・・・。




それでも町は廻っている 7 (ヤングキングコミックス)
それでも町は廻っている 7 (ヤングキングコミックス)


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また、第52話「秋まつり」は、ジョバンニとカムパネルラが一緒に行けなかったケンタウル祭を描いているのではないでしょうか。つまり、「銀河鉄道の夜」でジョバンニとカムパネルラが出来なかったことを、紺先輩と歩鳥にさせているのではないか、と。歩鳥が小学生のときの友だちにあって、そのあいだ、紺先輩がぽつんと待ちぼうけを食らうところも、「銀河鉄道の夜」を再現したものでしょう。


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そして、「死人羽織」(左前。死人合わせとも言う。)のところは「銀河鉄道の夜」において、カムパネルラが死んだのがケンタウル祭の日に亡くなったことの暗示。ですが、もちろん、歩鳥がここで死ぬようなことはありません。




それでも町は廻っている (13) (ヤングキングコミックス)
それでも町は廻っている (13) (ヤングキングコミックス)




そして、もうひとりの登場人物が座成。こちらもモデルは「銀河鉄道の夜」で、ジョバンニに意地悪ばかりしていたザネリですね。この座成と紺先輩のエピソードはまだすべてが描かれてないと思うので、推測するしかないのですが、わたしは紺先輩を突き落としたのは座成ではないと考えています。根拠は以下の通り。


1.紺先輩の呼び名が違う


第104話「暗黒卓球少女」で座成は紺先輩のことを「ふー」と呼んでいるけども、第71話「歩く鳥」の回想シーンで紺先輩を突き落とした黒い影の人物は「紺」と呼んでいる。


2.踊り場の会話だけでは座成が突き落としたとは言い切れない


(A)「なにやってんだよ、座成〜」
(B)「もっと上から落とさねーとケガしねーじゃん。」

これだけだと座成が突き落としたみたいになるんですが、それは・・・


(A)「なにやってんだよ、座成〜」もっとちゃんと突き落とせよ
(B)「もっと上から落とさねーとケガしねーじゃん。」もっと上から落とせよ

・・・と、どちらも突き落とす行為について言及していると考えるから。でも、この二つのセリフはほんとにそういう意味なんでしょうか。わたしは違う考えを持っています。


(A)「なにやってんだよ、座成〜」突き落とされた紺先輩を助けようとする座成に「なにやってんだよ、(おまえのために突き落としてやったんだから、助けたりするなよ)座成〜」。
(B)「もっと上から落とさねーとケガしねーじゃん。」こちらは実際に突き落とした「紺」と呼んでいた黒塗りの人物に対しての発言。

こう考えれば、座成が突き落としたことにはなりません。「それ町」には悪人は出てこないと思いますし、「新・銀河鉄道の夜」のなかでザネリもまた違うキャラクターとして生まれ変わっているんじゃないでしょうか。


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あとは、第104話「暗黒卓球少女」の次のページにある座成のこのポーズなんですが、これも紺先輩を笑いながら突き落としているのではなく、何か別のポーズなのではないか・・・と思いたいところですね。でも、これについてはまだなにも描かれてないので、何とも言えませんが。




(b*^0)d (ノ*^▽)ノ (b*^0)d (ノ*^▽)ノ (b*^0)d (ノ*^▽)ノ




で、今後の展開予想というか、まぁ、わたしの妄想に近いんですが、とりあえず、それも書いておきます。


1.座成と紺先輩の過去がさらに描かれる。


針原さんの視点からはすでに描かれてるので、次に描かれるとすれば、タッツンからの視点か、紺先輩が自らの口で語るか、もしくは、その両方じゃないかな、と。


2.川で溺れている座成を歩鳥が助ける


「銀河鉄道の夜」ではカムパネルラが川で溺れているザネリを助けて、その身代わりとなって死んでしまうのだけど、それと同じシチュエーションが描かれるのではないか、と。ただし、そこで問題となるのはこれ。


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歩鳥、泳げないんじゃないかと思うんですよ。浮き輪を持っているし。泳いでいるところも描かれたことがないし。「んじゃ、川で溺れている人間を助けられないじゃん」となるんですが、たぶん、そこはまた「奇跡」が起きるのではないか、と。もちろん、「銀河鉄道の夜」のように、歩鳥が川で命を落とすようなことはないでしょう。もう、すでに一回死んで、そして、生まれ変わったカムパネルラなので。




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ということで、「それ町」でやっている「銀河鉄道の夜」はまったく同じものではなくて、「新・銀河鉄道の夜」になっているのではないかというお話でした。「それ町」は本当に面白いです。


(おしまい)