明日の桑沢デザイン研究所「建築・都市概論」第13回は「映画における建築・空間」というテーマ。授業で紹介する映画のいくつかは学校の図書室でDVDを借りる。そのついでに以下の作品もDVDを借りて観た。

阿賀に生きる』は新潟水俣病の被害に遭った地域に制作スタッフ7人が3年にわたって住み込んで作ったドキュメンタリー。裁判の様子なども撮られているのだけど、メインはあくまでその土地の消えゆく伝統や文化、それを体現する人々の日々の営みで、たいへん充実している。適度な距離感をもって対象に接近する主体性とともに、それとは別個の映画的教養が作品の土壌になっているように見えた。鮭採りのシーンなどは古典のサイレント映画を見るようだった。

一方、写真家の牛腸茂雄を題材にした『SELF AND OTHERS』は、牛腸の写真もいいし田村正毅の撮り下ろしの映像もよいのだけど、関係者へのインタヴューなどはあえて入れずに詩的に全体が構成されていて、どこまでを牛腸本人の領分と受け取ってよいのか、今一捉えにくい。この印象は『グレン・グールドをめぐる32章』と共通する。
桑沢の図書室は毎週の授業の後だいたい立ち寄っていて、ずいぶん利用させてもらっている。最新刊も含めて、建築以外の分野の本にも気軽に触れられるのがよい。最近は、金村修・タカザワケンジ『挑発する写真史』(平凡社、2017年)、畠山直哉大竹昭子『出来事と写真』(赤々舎、2016年)、『デジタル一眼 撮影テクニック大事典 最新版』(学研プラス、2015年)などを借りて読んだ。