エロゲ概論③

③題名:WHITE ALBUM 2

ジャンル:三角関係・悲恋
制作会社:リーフ
脚本:丸戸史明
制作年:2009‐2011年
エロゲ批評空間(中央値/平均値):95/89
エロゲ批評空間ベスト:第1位

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おかしいなぁ…
どうしてこう、なっちゃうんだろう……
(引用;OP直前)

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エロゲには系譜がある。

過去より連綿と続く“流れ”がある。それはたとえば、

KEYが生みだした泣き・感動・奇跡による救済のそれであったり、
TO HEARTLEAF)を祖とする複数ヒロインの仲良し空間を主徴とする学園ハーレムものであったり、
ランス・シリーズに見る俺様最強超ハーレム、
痕(キズアト)→雫→腐り姫月姫(→ひぐらしの鳴く頃に)なる親子関係に認める田舎=閉鎖空間で花咲く禁忌であったり、
YU-NO→FOREST、3EYES、NEVER7EVER17、3DAYS→CROSS†CHANNEL→…→『MUV-LUV』→…その他様々に収束・拡散を繰り返す「ループ」もの

……そして、『君が望む永遠』『WHITE ALBUM』『SCHOOL DAYS』を3大タイトルとするクズ主人公系列、あるいは悲恋。

今回はそういう話である。


ところで、現実世界で戦い疲れた我々は、妄想世界=エロゲに降臨し、独特の佐藤菓子的世界観に耽溺することで癒しを得る。盲目的に複数ヒロインから好意を向けられ時には行為を致し、変わらぬ永遠の愛を誓う主人公に、我々(萌え豚)は自己を投影する。

それは現実には獲得できなかった青春の焼き直しだ。

我々(萌え豚)は無惨に終わった思春期をリプレイし、およそ自分が考え得る限り最上の物語でこれを上書きする。その労苦と時間を代償に虚しさと圧倒的な快感を獲得する。そしてまた輝く蜜のような次の物語を探し始める。

時には物語に反撃を受けることもある。傷口に沁み入る苦みが混入されていることもある。その場限りとは言え愛した女との別れが最たる例だろう。しかしその痛みですらちょっとしたスパイスに過ぎない。じくじくと痛む傷口を眺め、また新たな女を抱き、得られる感情の全てを快感の呼び水となす。

救いようがない。

しかしそもそも我々(萌え豚)は救いを求めてなどいない。ただ没入し耽溺する“今”があるのみだ。没入の中で得られる悲劇も悲哀も哀切も全て快感でしかない。数多くの悲劇的物語を経験し、数多くのその場限りの女(=物語)の上を通り過ぎてきた我々(萌え豚)は、もはや『君が望む永遠』の発売時、「なんでエロゲの中でまで辛い目に遭わなきゃならねーんだ!!!」と絶叫し憤死したあの頃のナイーヴを持ち合わせてはいない。

もっと強い悲劇を、もっと濃厚な感情を、もっと至高の快感を!
耐えず満たされない飢餓感と一瞬の麻薬的法悦を求め、出会い、これを貪食する。我々(萌え豚)は餓鬼だ。餓鬼は人の魂を食らう。高純度な魂は美味である。魂の純度を高めるためにはどうすればいいか?簡単だ、より強い感情が刻まれればいい。より強い感情とはなにか。様々なパターンはあろうが、端的には圧倒的な悲劇だ。圧倒的な悲劇を齎したのは、数あるエロゲの系譜の中でも限られてくる。

それこそが『WHITE ALBUM2』を産み落とした、かの悲恋系列である。いや、悲恋と言い切ってしまうのは語弊がある。誤謬がある。いっそ誤りでしかないかもしれない。しかし、我々(萌え豚)はあそこのお家の娘さんたちには、もう、何度も心砕かれてきた。

これは事実だ。

手酷く扱われボロ雑巾にされた。それでもまだ我々(萌え豚)はあの娘たちが好きだ。愛している。それは何故か?単に我々(萌え豚)が精神的上級者であり

端的に言ってMである

、というだけではなかろう。あの娘達にはやはり、それだけの魅力があった。触れるもの皆切り刻む鋭い哀切の刃があった。蒼夜に閃く一刃だった。つまるところ、『WHITE ALBUM』『君が望む永遠』『WHITE ALBUM 2』だったのだ。

彼女たちは我々(萌え豚)にたくさんの事を教えてくれた。複数ヒロインから好意を向けられる嬉しさ。その中から誰か一人だけを選ぶことの困難。選べず間を揺れ動く苦しみ。背徳の蜜。優柔不断が導くよりサイアクの結末。苦い終焉。離別の果ての孤独……

そういった一連の感情シーケンスにより、我々(萌え豚)はひとつ大人になった。しかし大人になり切れず、もう一度、もう一度だけ、と悲劇を繰り返す。禁断の果実に手を伸ばす。




好きな食べ物は?――三角関係!
趣味は?――二股!
そんな僕らの合言葉は?

―――レッツ☆背徳!




…まぁ、つまり。
そういうことである。

精神上級者への階段は、ここにあります。
ようこそいらっしゃい。