『忍剣花百姫伝』とほほ外伝・夢さん旅日記1

rieko-k2010-08-22


◆「夢さん旅日記1この世の花」 

夢候(ゆめそうろう)  「なあ、天ちゃん、今夜は、この宿場で泊まろうぜ。酒はうまいし、ほら、この世の花が手招きしてるじゃねえか」





天兵(てんぺい)    「夢さんは、どうぞ、泊まってください。わたしは、もう少し先まで行きますから。(せっせ、せっせ)」
     (まったく、足を止めない天兵)



宿場女A   「まあ、なんていい男なの! そこの若旦那、泊まっていきなよ。サービスするからさ。」
宿場女B    「ちょっとちょっと、そこの急いでいる兄さんも凛々しくていい感じ。ねえ、かたいこといわずに、お泊まりな」
夢     「ほらほら、あんなに誘ってるじゃねえか。天ちゃん、なんで、そんなに急ぐんだよ。せっかくこの世の花が……」
     (その時、背後から「てんぺー」と、かすかな呼び声。と、天兵は速歩の術で、あっという間にその場から消えた)
夢     「お、おい。天ちゃーん!」
宿場女A   「いいじゃないか、若旦那。カタブツはほっといて、お泊まりよ。」
夢     「そうかい、そうだな、可愛いおめえにいわれたんじゃ、断れねえな」
     (とその時、背後から、ギラリと白い抜き身が、でれでれ顔の夢候を襲った)
夢     「なんだなんだ、宿場のやくざか。ふざけんじゃねえっ!」
     (素手で相手をはね飛ばした夢候、相手を見て、ぎくっとする)

火海姫(ひあまひめ)   「無礼者っ!」
(美しい眉じりをつり上げていたのは、だれあろう、天下に名高い男装の麗人、火海姫であった)




夢     「あれえ、ひーちゃんじゃねえか。どうしたんだ?」
火海姫  「だれが、ひーちゃんだ! 無礼な奴め。おまえ、天兵をどこへやった!?」
夢     「え、天ちゃん? 天ちゃんなら、とっくに……」
火     「逃がしたなーっ」
夢     「あ、そうか。天ちゃんは、怖くて逃げたのか。ちぇっ、八忍剣一ノ者の腕が泣くぜ。」
火     「夢候、今、なんといった。だれが怖くて、天兵が逃げただと?」
夢     「あ、いや。天ちゃんは、あんたっていう絶世の花に惚れてるから、宿場の女が怖くて逃げたんだよ。」
火     「それは、本当か?」(照れる火海姫)
夢     「本当、本当。まあ、おれは宿場の女は怖くないから、ここで泊まっていくわ。さいなら〜」
     (さっさと、宿場の女としけこもうとする夢候)
火     「……きさま、このわたしを、ひとりにするのか」
夢     「え?」
火     「わたしをひとりにするのか、といっている」
夢     「……」

     (その夜、街道には、夢候の呼び声がこだました)

夢     「天ちゃーん。どこだよ〜。ひーちゃんが泣くぞぉ〜! 出てきてくれ〜。おーい、天ちゃーん!」
     (しかし、泣きそうなのは、夢候の声であった)
夢     「ああ、宿場の花が…うまい酒が……」
火     「なんだ」
夢     「いや、なんでも(…ふう)」

※この話は本編に関係ありません。キャラ絵は『忍剣花百姫伝』シリーズ(絵/陸原一樹さん)よりお借りしました。
それにしても、ああ、眠たい…
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