輝く空と風、熱い少年の日々…『自転車少年 チャリンコボーイ』著/横山充男 絵/黒須高嶺

自転車少年(チャリンコボーイ)

自転車少年(チャリンコボーイ)

高知県の大河沿いの町で、八・五キロのコースを、小学生三人組みのチームで二周する自転車のタイム・トライアルレースが開催された。旗がふりおろされると同時に飛び出した、ちょっとめずらしい取り合わせの中小の三人。「ヒャッホー」とさけぶムードメーカーの吉平、自転車は坂道に強いマウンテンバイク。「ゴーッ」とあわせたキャプテンの颯太、自転車はスポーツ車クロスバイク。「ラジャー」とこたえた情報係の晴美、自転車はがっしり型のランドナー。断トツ優勝候補は、南小のチーム。本気で、あいつらに勝ちてーっ! ゴールが見えてきたぞ、距離にして一キロ。よっしゃ。勝負はここからだぜ! カシャカシャカシャ、シャリシャリシャリ、シャーシャーシャー……聞こえてくるのは、三台のちゃりんこの音だけだ。はじけろ、小学校高学年男子! (BOOKデータより)
横山充男さんの四万十シリーズ六部作のラストの一冊です。
青い空、蒼い海、照りつける太陽と、澄んだ空気、きらめく風……四万十シリーズすべてを象徴する空と海と川と少年の物語、熱〜い一冊が、またまた届きました。
今回は自転車レースに挑む少年たち。といっても、今どきのスポーツタイプの自転車は高価で、よほど裕福な家庭の子どもしか手に入れることはできません。
裕福で恵まれたエリート少年チームに挑む、ごく普通の小学生の主人公と、その仲間たちが個性的で魅力的です。彼らがどうやって結ばれ、自転車に夢中になっていくのか、その過程がとても楽しいです。結果だけではなく、その過程こそが宝物だと思える物語こそ、むしろ、現代の子どもたちの力になるのではないのか…と思えた一冊でした。

さてこのシリーズは、1999年発行の『光っちょるぜよ、ぼくら』(文研出版/日本児童文芸家協会賞)に始まり、『少年たちの夏』(ポプラ社/課題図書)『おれたちゃ映画少年団』(文研出版)『夏っ飛び!』(文研出版)『ラストスパート!』(あかね書房)と続いた四万十川シリーズです。
どの作品も、横山さんのデビュー二作目となった『少年の海』(文研出版/児童文芸新人賞/課題図書)にも繋がるシリーズとも言えます。
鬱々と縮こまっていくテーマではなく、まさに夏の太陽に向かってゆく少年たちの吹き出す汗と友情のシリーズです。
こういう物語を描かせれば、児童文学界ひろしと言えども、この横山充男さんの右に出る人はいないでしょうか?
からっと明るく、まぶしい青空のようなこのシリーズを、ぜひ読んでみて下さい。
空の青さや、吹き抜ける風に心が洗われるような気がして、晴れ晴れと気持ち良くなること請け合いです。

少年の海 (文研じゅべにーる)

少年の海 (文研じゅべにーる)

光っちょるぜよ!ぼくら―四万十川物語 (文研じゅべにーる)

光っちょるぜよ!ぼくら―四万十川物語 (文研じゅべにーる)

おれたちゃ映画少年団 (文研じゅべにーる)

おれたちゃ映画少年団 (文研じゅべにーる)

夏っ飛び! (文研じゅべにーる)

夏っ飛び! (文研じゅべにーる)

ラスト・スパート! (スプラッシュ・ストーリーズ)

ラスト・スパート! (スプラッシュ・ストーリーズ)

少年たちの夏 (for Boys and Girls)

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