Hatena::ブログ(Diary)

風雲童話城ブログ

2018-04-03

[][][][]『オオカミのお札』#くもん出版 著/おおぎやなぎちか・絵/中川学

f:id:rieko-k:20180403132938j:image:left 第42回日本児童文芸家協会賞受賞のシリーズです!

江戸時代から、昭和の戦時、そして、現代までつながるひたむきな庶民の物語。

物語の芯となっている狼を祀った神社は、近畿の山脈にもあって、何度が取材したことがあります。西洋の狼と違って、日本狼は、大神として神社に祀られています。世にいう「送り狼」とは、もとは山人を見送ってくれるような日本狼の習性から生まれた言葉で、決して今、怖い男性に使われているような言葉ではなかったようです。いわば、日本という国独特の文化であり信仰であった大神さまを中心に、時代の動乱、変遷を描いたことで、この国の幸も不幸も立ち上がってきて、忘れ葬られようとしているこの国の誤った歴史の記憶を蘇らせてくれる物語でした。ぜひ、ご一読を

正次が見た影 (オオカミのお札)

正次が見た影 (オオカミのお札)

美咲が感じた光 (オオカミのお札)

美咲が感じた光 (オオカミのお札)

2016-11-10

[][]『仙台真田氏物語 幸村の遺志を守った娘、阿梅』著/堀米薫

真田幸村に秘策あり。娘の阿梅は、大坂城落城が迫るなかで死を覚悟した父・幸村が口にした言葉に、耳を疑った。子どもたちを敵の武将のもとにのがす…「阿梅よ、そなたに、弟妹たちの命をたくすのだ。そして、わが家系をふたたび世に出すことをたくすのだ。ちかってくれ。かならずや、みなで生きのびると!」―大坂城落城が迫るなか、真田幸村が娘の阿梅に伝えたのは、子どもたちを敵の武将のもとにのがすという秘策だった。そのときから、阿梅の戦いが始まった。(BOOKデータより)

人が歴史と出逢う瞬間の、不思議と、必然を思う心温まる一冊。

『チョコレートと青い空』『林業少年』など、ノンフィクションの名著が多い福島出身の作家、堀米薫さんの書かれた歴史ノンフィクション。大阪夏の陣で壮絶な最期を遂げた真田幸村の娘、阿梅の物語。登場する戦国武将の綺羅々々しい事と言ったら! 真田幸村を筆頭に、独眼竜、伊達政宗、その家臣、鬼の小十郎の異名をとった片倉小十郎重綱……これら、戦国に生きた武将の魂、義と真に心打たれます。

物語は、普段現代ノンフィクションの書き手の堀米さんだけあって、時代小説を読みなれない人にもサラサラ読めます。なんといっても、常に時代小説ネタを探している時代小説作家ではない堀米さんが、この阿梅に出会ったのは、ある種必然だったのかもしれない。

みちのくという雪深い地に、脈々と語り継がれてきた戦国の愛の物語は、きっと、その地に寄り添う愛ある作家に出逢う日を待っていたのではないか……そんな気がしました。

2016-10-02

[][]『ゆず先生は忘れない』著/白矢三恵 絵/山本久美子

ゆず先生は忘れない

ゆず先生は忘れない

いつもは明るいゆず先生が、地震防災訓練でふざけた教え子に話しはじめたのは、二十年前にこの町で発生した大地震の体験談だった。大地震の数日後、ゆずるが被災地で学んだ大切なこと。そして二十年後、ゆず先生が教え子に語る大切なこと…(BOOKデータより)

読み始めて、あの時、阪神大震災の地震が蘇りました。

あの日、京都も揺れて、私の住んでいた団地では、ドーンと突き上げられ、刹那、ドンッと落ちたような縦揺れでした。

この物語の中でも、テレビが落ちた話がありましたが、私の家でも、昔の重いテレビが、ドンと落ちました。寝ている足の上でなくて良かったけれど、もし足の上なら骨が折れていたかもしれません。

棚から色んな物が落ちたけれど、団地の建物はヒビが入ったぐらいで無事でした。

でも、翌朝、テレビを見てびっくりしました。

大阪や神戸がとんでもないことになっていたからです。

あの日の恐ろしさが蘇って、ゆず先生の気持ちがよくわかりました。数日後、震災後の大阪へも入って、被害の凄まじさを目にした時のあの気持ち……あれは、大人であっても子どもであっても呆然とするしかなかった。

あの日、あの時、私達に何ができたのか……被災した街に何が起こっていたのか、今でも私は、きちんと整理して考える事ができません。ずっと、うろたえ続けていたのだと思います。

今また、あの地震が繰り返されたら、やっぱりうろたえるだけなのかもしれない……と思う私のような人間に、この物語は、心を静かにして何を見つめるべきかを教えてくれたような気がしました。

そうなんですね。大変な混乱の時だからこそ、何が一番大切なのかを見失わないこと、それこそが、どんなに悲惨な場所へも、愛と希望を運んできてくれるのだと感じた一冊でした。

2015-10-11

[][][]輝く空と風、熱い少年の日々…『自転車少年 チャリンコボーイ』著/横山充男 絵/黒須高嶺

高知県の大河沿いの町で、八・五キロのコースを、小学生三人組みのチームで二周する自転車のタイム・トライアルレースが開催された。旗がふりおろされると同時に飛び出した、ちょっとめずらしい取り合わせの中小の三人。「ヒャッホー」とさけぶムードメーカーの吉平、自転車は坂道に強いマウンテンバイク。「ゴーッ」とあわせたキャプテンの颯太、自転車はスポーツ車のクロスバイク。「ラジャー」とこたえた情報係の晴美、自転車はがっしり型のランドナー。断トツ優勝候補は、南小のチーム。本気で、あいつらに勝ちてーっ! ゴールが見えてきたぞ、距離にして一キロ。よっしゃ。勝負はここからだぜ! カシャカシャカシャ、シャリシャリシャリ、シャーシャーシャー……聞こえてくるのは、三台のちゃりんこの音だけだ。はじけろ、小学校高学年男子! (BOOKデータより)

横山充男さんの四万十シリーズ六部作のラストの一冊です。

青い空、蒼い海、照りつける太陽と、澄んだ空気、きらめく風……四万十シリーズすべてを象徴する空と海と川と少年の物語、熱〜い一冊が、またまた届きました。

今回は自転車レースに挑む少年たち。といっても、今どきのスポーツタイプの自転車は高価で、よほど裕福な家庭の子どもしか手に入れることはできません。

裕福で恵まれたエリート少年チームに挑む、ごく普通の小学生の主人公と、その仲間たちが個性的で魅力的です。彼らがどうやって結ばれ、自転車に夢中になっていくのか、その過程がとても楽しいです。結果だけではなく、その過程こそが宝物だと思える物語こそ、むしろ、現代の子どもたちの力になるのではないのか…と思えた一冊でした。

さてこのシリーズは、1999年発行の『光っちょるぜよ、ぼくら』(文研出版/日本児童文芸家協会賞)に始まり、『少年たちの夏』(ポプラ社/課題図書)『おれたちゃ映画少年団』(文研出版)『夏っ飛び!』(文研出版)『ラストスパート!』(あかね書房)と続いた四万十川シリーズです。

どの作品も、横山さんのデビュー二作目となった『少年の海』(文研出版/児童文芸新人賞/課題図書)にも繋がるシリーズとも言えます。

鬱々と縮こまっていくテーマではなく、まさに夏の太陽に向かってゆく少年たちの吹き出す汗と友情のシリーズです。

こういう物語を描かせれば、児童文学界ひろしと言えども、この横山充男さんの右に出る人はいないでしょうか?

からっと明るく、まぶしい青空のようなこのシリーズを、ぜひ読んでみて下さい。

空の青さや、吹き抜ける風に心が洗われるような気がして、晴れ晴れと気持ち良くなること請け合いです。

少年の海 (文研じゅべにーる)

少年の海 (文研じゅべにーる)

少年たちの夏 (for Boys and Girls)

少年たちの夏 (for Boys and Girls)

2014-03-25

[][][]東日本大震災を語り継ぐ物語『思い出をレスキューせよ!』著/堀米薫

写真、本、手紙、長い時間を生きのびてきた紙には、人々の記憶まで残されています。それを救うことで、被災者の大きな力になるのです。写真、本、手紙や書き物、賞状…、長い時間を生きのびてきた紙には、人々の記憶まで残されている。東日本大震災の被災地や、全国のボランティア団体などで進められた、被災した写真を救う「写真洗浄」(「BOOK」データベースより)

この物語は、宮城の作家として、素晴らしい物語を次々刊行されている堀米薫さんの新刊ドキュメントの物語です。

主人公の金野聡子さんはイギリス留学などを通じ、「紙本・書籍保存修復士」「製本家」となられた方です。

故郷を襲った東日本大震災によって、津波に流され、瓦礫やごみにまみれてしまった多くの方々の家に保存されていた家族の写真、本、古書、賞状…それらを自ら洗浄し修復しようと思い立った金野さんのご苦労やご活躍を丁寧に描き切ったドキュメントです。

この物語を語るより、金野さんが問いかけられたこの言葉をご紹介したいと思います。

「思い出を救うことは、被災した方が、これからを生きていくための大きな力になる。そうは、思われませんか?」

この言葉につまっている大きな愛、深い愛こそが、この物語の骨格となっています。

一読に値する一冊であり、語り継いでいってもらいたい記録でもあります。