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風雲童話城ブログ

2016-05-30

[][]『二日月』著/いとうみく・絵/丸山ゆき

いとうみくさんの『二日月』が2016年 第62回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書になりました。

今年夏までは超多忙で、読みたい本をなかなか読めずにいたのですが、課題図書になったこの機会を逃してはならぬっと決意、昨夜読みました〜(まだまだ読みたい本は山になっているのですが、6月〆のアンソロジー1本、7月〆単行本の原稿2本など、えらいことになっており、作家の皆さま、どうぞ気長に待って下さいまし〜m(_ _)m

さて、それはともかく、『二日月』です。

二日月 (ホップステップキッズ!)

二日月 (ホップステップキッズ!)

あたしの妹、1歳の芽生。まだ歩けないし、立てないし、ハイハイも、おすわりもできないし。そういうことができるようになるかもわからない。だけど、芽生はあたしのそばにいる。あたしはいつも、芽生のそばにいる(BOOKデータより)

障害のある妹が生まれたことで、悲しみに沈む家族が、少しずつ前を向いて笑顔を取り戻す過程が、実に丁寧に描かれていて、大人が読んでも感動するに違いないと思う。

けれど、これが優れた児童文学だという証明は、まず子供の視点や日々の暮らし、それを受け止める子どもの思いに作り事や嘘を感じられないことだ。

この家族のお母さんが素晴らしいが、それもまた、子どもの視点で描いていることで、ただの理想の姿ではなく、悩み苦しんだからこそ至ったお母さんの姿だと、子ども読者にもわかるだろう。

苦痛は不幸だけを呼び寄せるのではなく、豊かな大きさをも形成させるのだと、物語を通じて読者は知る事ができるのではないだろうか?

きめ細かい取材をこなし、さらに繊細で豊かな包容力を持った作家でないと書けない物語だ。この重いテーマを本にしようと決定した版元の心意気にも、これを書こう決めた作家の思いにも、拍手を贈りたい。

2015-06-03

[][][]『空母せたたま小学校、発進!』著/芝田勝茂・絵/倉馬奈未×ハイロン

わたしたちのせたたま小学校は豪華客船!今日、タマ川の桟橋に「やってくる」はずだった。なのに、なのに、やってきたのは、軍艦!それも、航空母艦…(BOOKデータより)

破天荒です!

タマ川のほとりにあったせたたま小学校校舎が洪水で流され、その代替校舎として、急きょ用意され、川を遡ってやってきたのは、なんと航空母艦だった…というとんでもないオープニングに、唖然としつつ引き込まれて、一気に読み切った爽快ファンタジー。

このとんでもない設定を考えた作者もすごいが、これを発行したそうえん社さんもすごい!と思った。

子どもが大好きな電子ゲーム「艦隊バトル」の世界が現実に…いや、現実以上の地球規模の戦いとなるあたりも、子ども心をつかむに違いない。

とはいえ、その戦いの敵は、黒いエアボールだという。

黒いエアボールは、人類が作り出し地球上に廃棄した汚染物質、放射能を中心にするダイオキシンや排気ガス、化学物質、農薬、毒物などの邪悪のかたまりなのだ。このエアボールから、雨が降り注げば、その下の土地も海も、死の国となり死の海となる。

そんなものとどうやって戦うのか、戦ったところで勝てるのか……?

その続きは、ぜひ、読んで頂きたいと思います。

太平洋戦争時の日本の航空母艦やゼロ戦なども登場するが、作者のそれらを語る言葉は大きく偏ることがない。

パイロットを守る事より、速く飛ぶことだけに特化したゼロ戦の非人間性を語る一方で、当時の敵国アメリカのいかにも自国よりの見解にもやんわり釘を刺すあたり、さすがでした。

原発は是か非か、世界は何で動いているのか……隠し秘められた悪の本質がこの物語には語られています。子どもであれ、真実を知ってくれという作者の声が聞こえそうです。

アニメになれば、さぞかし、壮大な物語になるだろうな……と妄想してしまいました。

2015-01-23

[][][][]『金色のキャベツ』著/堀米 薫 絵/佐藤真紀子

あたし、わすれない!このキャベツ畑を、ぜったいにわすれないから!夏休み、あたしは両親にないしょで、大好きな仁ちゃんのはたらくキャベツ畑へ行った。そして、テストもピアノの発表会もない高原の畑で、「キャベツで生きてる」人たちに出会った― (BOOKデータより)

人生をいかに豊かなものにするか、感じるか……ということを教えてもらったような気がします。都会でギスギスと暮らす主人公の少女、風香だけでなく、読者の渇いた心も瑞々しく満たし、豊かにしてくれるような作品でした。

堀米薫さんは、全国同人誌連絡会「季節風」の同人でもあり、毎年秋に開催される「季節風大会」でも、レギュラーの作家さんでもあります。

季節風大会は、プロアマにかかわらず生原稿を引っ提げて集まり、二日かけて合評会をする熱い作家の研修の場で、この作品は、この季節風大会の「愛の物語分科会」へも提出されたことのある物語です。その作品が見事に結実して、この一冊の本になりました。

物語を読んでいると、見事な玉のようになったキャベツの畑の壮大な風景が目に浮かびます。キャベツ作りにかかわる人々のキラキラ輝く瞳も、汗も見えます。それだけでなく、キャベツサクッとを切った瞬間の音や香り立つ甘い匂い、その味まで、想像するだけで強く印象に残るのです。このレシピのコールスローを食べてみたいと、読者は皆思う事でしょう。

この物語は、少女、風香の喜びを読者も共に体験できる稀有な一冊でした。

風香が心惹かれる拓也も魅力的で、人が生きることの厳しさと喜びを、その背中で体現しているような少年で、生きることは甘くない、けれど、喜びに溢れていると感じさせてくれました。

ありがとう、仁ちゃん、風香、拓也って、お礼をいいたくなる物語です。

ぜひ、読んでみて下さい。